経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

米国エネルギー革命は実際には課題山積

新生オバマのアメリカは今 津山恵子

全米200カ所でキーストーンXL計画反対デモ

NY市内に集まったパイプライン稼働反対の市民(撮影:津山恵子)

NY市内に集まったパイプライン稼働反対の市民(撮影:津山恵子)

 2月3日、ニューヨークでは、十数㌢の雪にもかかわらず、市内中心部の広場に100人以上の市民が集まった。カナダから米国に敷設される石油パイプライン「キーストーンXL」の稼働に反対する市民らだ。

 悪天候をついて集まったのは、米国務省が1月31日、同パイプラインに関する環境影響報告書をまとめ、オバマ大統領が半年以内に認可をする可能性が高まったと報道されたからだ。

 パイプラインは、カナダのトランスカナダ社が、アルバータ州のオイルサンドから、米国テキサス州まで敷設する認可を申請。オバマ大統領による認可を待っているが、環境団体や市民の反対は強い。

 反対の理由は、オイルサンドから採取される石油は非常に質が悪く、パイプから漏れ出した際、環境や飲料水、農業に深刻な影響が出る可能性があるからだ。また、米国内産石油に対し、さらに多くの温室効果ガスを出すと批判されている。

 実際、非営利の調査報道機関インサイド・クライメット・ニューズ(ICN)が2012年に報じた「ディルビットの惨事 知られざる最悪の石油漏洩の真実」によると、過去に起きたミシガン州における石油パイプライン漏洩事故では、付近住民1万5千人が、環境汚染のために住み慣れた自宅に一生戻ることができなくなった。

 ICNは、カナダのオイルサンドから運ばれ、汚染度が高いディルビットと呼ばれる石油の恐怖を初めて報道。13年に米国内の報道機関対象の賞としては最も権威があるピュリツァー賞まで受賞している。

 主催者らによると、2月3日、キーストーン稼働に反対するデモは全米200カ所で開かれた。ニューヨークのデモでは、環境団体350・orgの創立者ビル・マックギブン氏が参加。

 「私たちに今必要なのは、オイルサンドからの石油ではなく、子どもたちに受け渡すよい環境、きれいな地球だ」と訴えた。

 参加者には、大学生など若い世代も多く含まれていた。デモに集まりやすい学生運動やベトナム戦争反対の世代だけが関心を寄せているのではないことをうかがわせる。オバマ大統領は、国務省が提出した約7千ページの報告書を踏まえて、認可をするかしないか決断する。エネルギー改革やクリーン・エネルギー推進を目指すオバマ政権は、これまで決断を先延ばしにしてきたが、これ以上の延期は不可能とみられている。

シェールガス革命にも暗雲が立ち込める

 米国で、ここまでパイプラインの問題が注目を浴びるのは珍しい。背景には、環境問題に対する関心の高まりが大きく影響している。これまで業界がもてはやしてきたメキシコ湾の海底油田では、事故による海洋汚染が大問題になった。海底油田や、相場に左右される輸入原油への依存度を下げていくことが、新たなエネルギー改革を打ち出しているオバマ政権の「売り」でもある。

 ところが、海底油田よりも安全だとアピールしたかったパイプラインの環境問題がクローズアップされてしまい、市民の監視を受けないで認可することが難しくなったというわけだ。

 米国では、シェールガス革命といわれるエネルギー革命が起きる中、常に石油の供給源の多様化を模索している。

 米国エネルギー情報局(EIA)によると、米国における天然ガスの生産量は、40年には、11年の生産量から44%も増加し、33兆立方㌳に及ぶと予想されている。増加は、ひとえにシェールガスの増産が支えている。

 しかし、このシェールガスの増産ですら、容易ではない。シェールガス掘削の方法である水圧破砕法(ハイドロ・フラッキング)は、実は各州で住民らの強力な反対に遭っている。

 水圧破砕法で掘削する際、大量の水に健康への影響がいまだに不透明な薬品を投入するためで、これもパイプライン同様、飲料水や農業へのダメージが懸念される。

 水圧破砕法を実施できるかどうかは、ほとんどの場合、州政府の許認可によるが、住民の反対があっては、州知事としてはなかなか簡単に認可に踏み切れない状況だ。

 天然ガスの相場はこのところ低迷を続けており、シェールガス革命で、比較的安定した価格の天然ガスが輸出にまわり、日本などが恩恵を受けるという見方もある。

 しかし、持続可能性という面では、既に米国内で問題化し、解決策が不透明な状況だ。キーストーンXLや水圧破砕法に対する反対を押し切って、オバマ政権が認可した場合、ただでさえ低迷している大統領支持率に深刻な影響があることは避けられない。

 米国で急速なエネルギー革命が起きるには、まだ課題は山積みだ。

 

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