経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

人材戦略を経営の核に成長する駐車場ビジネスのプロ集団―清家政彦(セイワパーク社長)

清家政彦(セイワパーク社長)

駐車場の設計・施工・管理・運営・メンテナンスまでトータルで手掛けるセイワパーク。好調な業績を支えるのは、経営の中心に据える人材戦略が機能していることが大きい。

清家政彦・セイワパーク社長プロフィール

清家政彦

(せいけ・まさひこ)1971年生まれ。太宰府市出身。立正大学経済学部卒行後、山善勤務を経て99年に前身のセイワシステム入社。2009年に社長就任。趣味は、マラソン。

学生から選ばれる会社に

「福岡の枠を超えて、これまで以上に人材戦略で勝てる会社を目指していきます」

セイワパーク社長の清家政彦氏がこう宣言するように、同社の多くの施策は優秀な人材を獲得するという目的につながっている。

人材の重要性を清家氏に実感させたのが、長年にわたって採用を任された経験だ。創業社長の息子である清家氏は、大阪の商社に7年間勤務した後に途中入社。当時はまだ従業員も20人程度しかおらず、地元福岡でも学生に対する知名度がほとんどなかったため、新卒の学生を採用するのに相当苦労したという。

「学生から選ばれる会社にならなければいけないと強く思いました。もっと人に来てほしいという思いが、今の経営のコンセプトに繋がっています」

現在は社員数70人を超え、新卒3人の募集に対し、200人ほどがエントリーするようになった。駐車場の設計・施工、管理・運営、メンテナンスまでトータルで手掛ける企業として業績を伸ばし、知名度も向上。成長を続けている要因は「採用を15年ほど手掛けて、今では社員の2/3以上が自ら採用した人材になっていることが大きい」という。

最近ではテレビCMも流しているが、

「駐車場関連の仕事を受注するというより、ブランドイメージを高めて良い人材を獲得するのが主な目的です」

と、清家氏は説明する。

清家政彦社長

人材戦略を経営の柱に据える

地元の人材を雇用して地域貢献

これまで清家氏は「福岡ナンバーワンの人材レベルと、福岡ナンバーワンの待遇の会社になる」ことを掲げてきた。待遇面では30代社員が中心ながら年間平均給与が560万円と上場企業並みの水準を実現し、数年以内に700万円を目指す。経営計画に関しても、目標とする平均給与額を達成するために、必要な売上高と利益を算出するという手法を取る。

「われわれのような地元の会社が高い給与と魅力的な仕事を提供することで、地域の人が地域で働いて地域に貢献するという形につながっていきます。そうして3世帯が地元に住むようになれば子育てにも良いし、日本全体の課題解決にもつながると思っています。そういうメッセージは学生にも響くのではないでしょうか」

2年前に南九州支店を開設し、今年9月には東京支店を開設したが、各拠点においても地元の人材を雇用する方針でやっていくという。

新卒採用の実績を積み上げた今、通年採用の強化も進めていく。

「大手企業も実力主義の中途採用の増加に舵を切る中、人が集まる会社と集まらない会社が両極端になっていきます。中途でも入りたいと思われる会社と早く辞めたいと思われる会社では、人材レベルに大きな差が出ることになるでしょう」

と、清家氏は話す。

また、セミフレックス制度の導入、服装の自由化、日報の廃止や会議の削減など、さまざまな施策を次々に実行し、社員が自分で考えて行動するための体制を整える方針だ。

清家政彦

自立した社員が会社の大きな戦力になる

求めるのは高いレベルで自立した人材

立体駐車場の企画から設計・施工を行う建築事業、コインパーキングの管理運営のコンサルティングを行う管理運営事業、機械式駐車場などのメンテナンス事業と、駐車場に関する領域を広くカバーするセイワパークの場合、大半の仕事をチームで遂行することになる。権限を大幅に社員に与えているため、一人一人が自立したプロフェッショナル集団でなければならない。人材採用のポイントも、高いレベルで自立しているという点を重視している。

「先代はプロフェッショナルだったので何でも一人でできましたが、自分は設計も工事もメンテナンスもプロではないので社員に権限を委譲せざるを得ません。仕事は責任を取ることぐらいです」と、清家氏は言う。

人材を重視する背景には、駐車場ビジネスの先行きに対する危機感もある。清家氏の予想では、これから駐車場業界は大きな変革期を迎えるという。スマホ決済の導入やそれに伴う個人向けマーケティングの拡大。さらに専門業者間によるアライアンスが進み、限られたパイの争奪戦が進んでいくと読む。その中で健全な成長を続けるためには、人材の健全な成長が土台となる。

「人が成長しているのに会社が成長していなければ人が辞めていくし、人が成長しなくて会社が成長するパターンもすぐにだめになります。だから一発当てて会社を大きくするといった考えはありません」

プロスポーツ、地元アイドルの支援でも地域貢献

地域貢献という面では、プロ野球のソフトバンクホークス、サッカーJリーグのアビスパ福岡、プロバスケットボールのライジングゼファーフクオカ、さらには福岡を拠点に活躍するアイドルグループLinQのオフィシャルスポンサーになるなど、スポーツや文化の振興にも力を注ぐ。その理由について清家氏はこう語る。

「たとえば、地域のスポーツチームに地元の人材が憧れて入るケースが増えれば地域循環社会の実現に貢献できますし、地域アイドルがテレビやイベントに出れば地元にお金が落ちていきます。地域愛はもちろんですが、そうした活動をすることでさらにいい人材が集まり、会社が勝つことにつながっていくと考えています」

あらゆる業界で人材不足が深刻化する中、特に地方企業が直面する状況は厳しい。人材戦略を経営の最重要テーマに置くセイワパークの方針は、着実に成果を上げている。

清家政彦社長

経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界ウェブトップへ戻る