経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

戦う記者へ

オバマ大統領の英語

(写真:EPA=時事)

(写真:EPA=時事)

 ニクソンを辞任に追い込んだ『大統領の陰謀(All the President’s Men)』の共著者の1人、ボブ・ウッドワードはその後も歴代の大統領の身辺を嗅ぎ回って何冊もの著作をものにしている。

 オバマ大統領に関しても既に『大統領の戦争(Obama’s Wars)』を上梓してイラクとアフガニスタンにおける戦争の後始末を微に入り細を穿ち書き留めた。

 ウッドワードの取材方法は執拗なもので、取り上げる素材の周辺にいる人々を何百人もインタビューし、例えば同じ会議に出席した人々数人にインタビューし、誰がどんな表情で何を語ったかなどということを複数の視点から書き解いたり、時に彼らが会議中に走り書きしたメモを見せてもらいながらもう一度現場を思い出してもらって再録するなど徹底して真実に迫ろうとしている。今回もそうだ。

 最新作『政治の代償(The Price of Politics)』では2011年5月から7月にかけて繰り広げられたオバマと共和党下院指導者たちとの債務削減をめぐる密談、取引、怒りの爆発、駆け引きを、まるで読者がホワイトハウスで会議に出席しているような臨場感をもって再現している。中心課題は赤字国債問題である。米国では連邦法で連邦政府の債務、国債の発行総額に上限を設け、連邦議会にその設定を委ねている。オバマが勝手に引き上げることはできない。

 特に中間選挙で議会がねじれてしまったので、オバマの属する民主党を下院多数派となった共和党が露骨に足を引っ張るのだ。11年1月6日、ガイトナー財務長官(United States Secretary of the Treasury)はリード上院民主党院内総務(Senate Majority Leader of the 113th United States Congress)に書簡を送り、「連邦債務は早ければ、3月末に上限額に達する可能性がある」と警告した。

 国債利払いなどの資金が不足すれば、defaultデフォルト(債務不履行)となり、連邦政府の機能はマヒする。その上限額は引き上げる駆け引きで1冊が出来上がっている。戦争もなければスパイ活動もない。ただ、予算を通すだけの物語で分厚い本となっている。関係者に対する膨大なインタビューの集大成なのである。

 アメリカ合衆国憲法(Constitution of the United States)では報道の自由(Freedom of the press)が許されており、この権利をボブ・ウッドワードたちジャーナリストはぎりぎりまで追求している。だからウッドワードはホワイトハウスの職員から噛み付かれた。と、即座に噛み付かれたことを記事にして公にする。と、それに対する謝罪文が職員から届く。

“I apologize for raising my voice in our conversation today,”

〈本日は会話の中で声を荒らげて申し訳ありませんでした〉

“You’re focusing on a few specific trees that give a very wrong impression of the forest.”

〈あなたは、何本かの特定の樹木に焦点を合わせて報告されているために、まるで森全体がそのような状況にあるという非常に悪い印象を与えているのです〉

“I think you will regret staking out that claim.”

〈あなたは、このような非難をあげたことを後悔されることでしょう〉

 このホワイトハウスからのメールにボブ・ウッドワードはさらに逆上する。

“You’ll regret.’Come on,”

〈あなたは後悔するだろう、だって?やめてくれ!〉

“I think if Obama himself saw the way they’re dealing with some of this, he would say, ‘Whoa, we don’t tell any reporter you’re going to regret challenging us.’”

〈もしオバマ自身がこんな扱いをしていることを知ったら、きっとこんな風に言うでしょう。「うわあ、どんな記者に対してもわれわれは、ホワイトハウスに歯向かってくる者は後悔することだろう、などとは言ってはならない」とね〉

 

[今号の英語]see eye to eye
“But perhaps we will just not see eye to eye here.”
〈これはひょっとすると見解の相違だけなのかもしれません〉
see eye to eyeという表現は「見解が一致する」という意味である。
ホワイトハウスは、このように見解の相違ということで品良く切り上げようとしたが、ボブ・ウッドワードは戦闘的にかみついた。
“They have to be willing to live in the world where they’re challenged,
〈彼らは歯向かってくる人間に喜んで立ち向かう立場にあるべき人々じゃないか〉
I’ve tangled with lots of these people.”
〈私はこういう人々と何人もずっと戦ってきた〉
“But suppose there’s a young reporter who’s only had a couple of years — or 10 years’ — experience and the White House is sending him an email saying, ‘You’re going to regret this.’ You know, tremble, tremble.”
〈しかし、例えばまだ数年の経験しかない、あるいは10年選手くらいの若い記者が、ホワイトハウスから「あなたはこの件を後悔するだろう」なんて言われた日には、くわばら、くわばら〉
“I don’t think it’s the way to operate.”
〈ホワイトハウスはこんな扱い方をすべきじゃない〉

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界ウェブトップへ戻る