経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

6次産業化、ブームの兆し。農業を高収益産業に転換 (千葉県=ジャパンホートビジネス、茨城県=ELF)

地域再生の現場を行く

6次産業化絡みの事業計画で地域活性化への新たな刺激剤へ

6次産業化を目指して茨城県の農家が開設した直売所「えるふ農園」

6次産業化を目指して茨城県の農家が開設した直売所「えるふ農園」

 農漁業者が農水産物の生産から加工、販売までを手掛ける6次産業化への動きが熱を帯び、ブームの兆しを見せている。6次産業化絡みの事業計画は既に続々と登場、2013年末時点で農水省が認証したものだけで1690件に上る勢いだ。異業種との合弁会社設立、研究機関と連携した新品種開発、直売所の新設による販路の開拓、農家レストランを軸にした外食産業への進出など、多様な動きが浮上しており、地域活性化への新たな刺激剤になりそうだ。

 常磐自動車道と圏央道が交差する茨城県のつくばJCT近くに13年3月、オープンしたイオンモールつくば店。20万平方㍍の敷地に3階建てのビル4棟が並び、スーパーや専門店、外食産業、シネマコンプレックスなどが集結する巨大SC(ショッピングセンター)である。この敷地内に同時に店開きしたのが、農産物直売所「えるふ農国」とレストラン「夢想花」だ。

 経営するのは茨城県内の農業法人や外食企業など8社が共同出資して設立した株式会社ELF(長谷川久夫社長、資本金4500万円)。農業法人は高品質の農産物を提供することで農業の産業化を果たそうと活動している団体「茨城県最高品質農産物研究会」の会員だ。

 長谷川社長によると、直売所は農産品の品質を競い合う舞台、茨城農業の顔づくりの場という位置付けである。

 両施設とも屋根は瓦と緑色のトタン葺き、古民家風の雰囲気が訪れた市民を惹き付ける。床面積約450平方㍍の直売所には自慢の野菜やコメ、果実、畜産物などが展示販売され、顧客が品定めしては購入していた。

 出荷するのは出資者を含む県内の契約農家60軒。鮮度や残留農薬、ミネラル分などを独自に分析・測定し、一定の基準に合うものだけを品揃えしている。①商品は高品質・高鮮度の農産物や加工品に限る②価格は農家が自分で値付けする③1品目につき複数の農家が出荷する︱︱などが、運営上の原則だ。

 隣に並ぶ面積425平方㍍のレストランでは直売所で扱う新鮮・完熟な野菜類を使い、県内産の畜産物や魚介類に絞った料理メニューを提供している。

茨城県=ELF長谷川社長「黒字経営には4年かかる」 

 直売所の野菜類はスーパーより高めの商品が多い。しかし、鮮度と品質を詳しく説明すると、納得してくれるという。レストランもランチ時間で1500円以上と高めだが、「この味なら」と受け入れる客が多いそうだ。

 とはいえ、来店客は月平均で5千人前後と目標のレベルに達していない。長谷川社長は「客単価がまだ低く、目標の6、7割の水準。黒字経営には4年はかかる」と予測する。

 ELFでは近くの遊休地60㌃を賃借し、農場も開設した。就農希望者を育成したり来店客が楽しめる体験農場にしたりするのが目的だ。近い将来は「えるふ農国」のような直売所を50店ほど多店舗展開し、株式を上場する構想も抱いている。

 6次産業化の実践を始めたばかりのELFだが、農家の能力を存分に発揮できる体制を築き、経営の厚みを増す取り組みで農業の産業化を勝ち取る考えだ。

 こちらは千葉県の北部、人口5万人の富里市。北総台地が広がる同市で盆栽や植木を生産する北総園芸が13年9月、ホートビジネスグループ(富里市)などとの合弁で「ジャパンホートビジネス」(富里市、寒郡茂樹社長)を設立した。日本の盆栽、植木類を海外に販売する輸出業務を支援する新会社である。

 14年の早い時期に東京の臨港部に活動拠点を築き、ホートビジネスが持つ輸出ノウハウや販路を活用して、まずアジア市場などを開拓する。輸出商品は当面、北総園芸が手掛けるツゲやマキ、キャラ、ソテツなどが中心となるが、香川や埼玉、福岡県などにも仕入れルートを広げ、日本の盆栽、植木を海外に幅広く輸出して行く計画だ。

「6次産業化法」を施行してからの認証状況とは

 花卉園芸や樹木の世界市場は非常に大きい。寒郡社長は「市場規模は欧州で14兆円、米国で7兆円もある」と話し、園芸業界の関心を世界へ仕向けるのが新会社の役割と指摘する。

 世界市場のうち、欧州が当面の狙い目だ。①欧州では盆栽人気が高い②土壌や病虫害への検疫検査が厳しいが、欧州の基準に合った検疫システムを確立できる︱︱などが主な理由だ。

 欧州市場開拓のため、新会社はドイツの有力企業ローベルグ社と提携、同社のバーデンバーデンの圃場内に日本から輸出する盆栽センターを築くことにした。このセンターが輸入検疫や商品展示、物流業務を行うので、儲かる輸出を実現しやすいという。

 将来は世界最大の園芸消費国・米国や南米市場の開拓も視野に入れている。寒郡社長が描く10年後の輸出額は「欧州で20億円、北米とアジア、南米市場でそれぞれ10億円、合わせて50億円」。その段階で株式上場も検討したいと意気込む。

 新会社には千葉銀行など地場11金融機関が組成した地域ファンド「ちば農林漁業6次産業化投資事業有限責任組合」を通じて、政府系官民ファンド「農林漁業成長産業化支援機構」も5千万円出資した。輸出販路を切り開く盆栽業者の挑戦を資金、経営面で支援するためだ。

 国が11年に「6次産業化法」を施行して以来、現在までに認証された件数は1690件。地域別では九州の299件を筆頭に、近畿の289件、関東の275件と続く。この中には農商工連携で数十億円単位の大型投資を行い、地域の雇用拡大や地域ブランドの普及、後継者育成に役立つものも少なくない。

 川下の肥沃の市場に挑む農漁業者の6次化競争が見ものだ。

 
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