経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

1ミクロンの気泡に込めた次世代生活の新習慣–サイエンス

2020注目企業38

 日本がけん引する微細気泡「ファインバブル」の技術。産業化のフェーズに入り、世界中のさまざまな分野で実用化が急速に進む中、同社製品は一般家庭の生活をアップデートするインパクトを持つ。(『経済界』2020年4月号より転載) 

青山恭明氏

サイエンス取締役会長 青山恭明(あおやま・やすあき)

 

生活に感動をもたらすファインバブルの可能性

 私たちの生活のインフラに欠かせない「水」。その生活の水にこだわってきたサイエンスの青山恭明取締役会長は、家庭用セントラル型浄活水装置「サイエンスウォーターシステム」、浴槽用ファインバブル発生装置「マイクロバブルトルネード」、シャワーヘッド「ミラブル」などを開発している。

 ファインバブルは100マイクロメートル未満の微細気泡を指す。超微細な1マイクロメートル未満の気泡はウルトラファインバブル、1~100マイクロメートル未満の気泡はマイクロバブルと呼ぶ。

 同社製品の特長は洗浄力だ。超微細な気泡が身体の毛穴にまで入り込み、こすり洗いなしで汚れや皮脂を取り除く。肌に書いた油性マジックもシャワーで消し去るテレビCMはその威力を物語る。

 「ミラブル」は、1cc(1立方センチメートル)当たり1400万個のウルトラファインバブルを発生させる。通常、水中で発生する気泡は水面に浮上するが、ウルトラファインバブルの泡は浮かび上がらずに水中で振動するような動きを続けている。ミストシャワーとして顔に浴びせることで、肌に負担をかけることなく毛穴の汚れや角質を除去し、肌水分量を8~25%ほど上昇させるため、使用者は肌の質感やカラートーンの違いを実感できるという。現在、年間25万本を販売し、製造が追い付かなくなる人気だ。

 「ミラブル」は浴槽にマイクロバブルを発生させる「マイクロバブルトルネード」を利用したお客の強い要望で誕生した。「マイクロバブルトルネード」は、ゆっくりと浮上するマイクロバブルの特性を生かし、浴槽に浸かるだけで全身の毛穴まで洗浄して汚れや皮脂を浮かせる。こすり洗いなしでツルツルの肌を実感でき、気泡の刺激で体を温める効果も実証されており、お風呂をエステルームに変えてしまう。また臭いの元となる物質を吸着して取り除き、加齢臭の悩みにも応える。体をゴシゴシとこすって洗うという常識を覆したファインバブルは、日常生活に新しい習慣を生んでいる。

 ファインバブルの研究開発は日本が先行しており、国際標準化機構に設置された専門委員会TC281でファインバブル技術の国際標準規格化を進めている。ファインバブル技術を活用した正規製品はファインバブル産業会によって認証されており、工業や医療、インフラなどに先駆けて、「マイクロバブルトルネード」は認証登録制度第1号に選定された。

 もっとも、その道のりは平坦ではなかった。家庭向けのファインバブル発生装置の小型化は困難を極めた。しかし「全家庭に導入できなければ意味がない。日常生活で使われることが大事」という青山氏の信念の下、ビルトイン型と据え置き型のマイクロバブルトルネードを開発。

 この技術力は業界内外から期待を持って受け止められており、マンションや住宅メーカー、介護施設やホテルの客室にも導入が進んでいる。

関わる全ての人に喜んでもらうために

 同社は07年の創業以来増収を続け、今期は40億円を超える見込みだ。「売り上げを上げることは簡単ですよ。どうすれば人が感動するかをいつも考えています」と青山氏。

 同社の企業理念は「関与する全ての人々に感動と喜びを与え続ける」。お客に喜んでもらうための商品開発はもちろん、取引先の喜びについても考え抜く。取引先が契約更新に前のめりなのは、同社の喜びの追求への共感があるからだ。

 この考えの根本には青山氏の家族の存在がある。青山氏には重度のアトピー性皮膚炎に悩む三女がおり、治療方法を探して全国を奔走。水道水に含まれる塩素がアレルゲンであることを突き止めると、塩素除去効果のあるシャワーヘッドを開発。三女の肌荒れは数カ月で治まったという。家族が一番のユーザーであり、喜ばせ続けたい存在なのだ。

 また「社員も家族なのです」と語る青山氏。社員への信頼は厚く、一方で叱るときは徹底的に叱るため、震え上がる社員もいるほどだ。「うちは愛あるブラック企業。社員がかわいくて仕方ないから本気で叱ります」と青山氏。社員は辞めるどころか、自分のことを大切に考えてくれている青山氏の熱い思いを知り、仕事に励む。

「ミラブル」

敏感肌の人のために開発した「ミラブル」。その洗浄力も特長だ

 年末には全社員とその家族で宿泊旅行を行う。1年間尽力してくれた社員の家族に対し、青山氏がお詫びと感謝を伝えるイベントだ。創業第1期の年末に「いつか家族を連れて社員旅行ができるように頑張ろう」という創業メンバー3人の約束が実現したものだ。

 人々に感動と喜びを与え続ける同社はさらなる飛躍が期待される。

————————————-
会社概要
設立 2007年8月
資本金 3,000万円
売上高 20億5,300万円
所在地 大阪市淀川区
従業員数 60人
事業内容 ファインバブル製品の製造・販売およびメンテナンス、
セントラル型浄水装置の製造・販売およびメンテナンス
https://i-feel-science.com/
————————————-