経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

食品虚偽表示はなぜ可能だったか

経済万華鏡

 飲食店、食品の虚偽表示に対する謝罪が続いている。今となっては、最初に報道されたホテルは、ついてない、不公平だと思っていることだろう。しかし、次々と発表される偽装を消費者はどう思っているのだろうか。

 少なくとも私の周囲、私、そして全体的な反応を見ていると、ほとんど誰も気にしていないようだ。超一流ホテルや老舗百貨店は、あそこまでが……というイメージダウンは避けられないが、ほとんどのホテルや飲食店に対しては、消費者は何とも思っていないのだ。

 この理由は、みんなもとから信じていない、あるいは芝エビだろうが、そうでないエビだろうが、誰も気にせず飲食していたということだ。業界内では、エビの大きさに応じて、便宜上3つのエビの名前で呼んでいたという説もあり、もともと信じていないか、気にしていない、という消費者の意識とも整合的である。

 つまり、一連の虚偽表示の要因は、虚偽表示が大した問題でないという潜在的な消費者の意識に安易に乗った供給側のスタンスにあったのだ。

 直接的な原因は、消費者側にある。芝エビとほかのエビとの味の区別がつかなければ、虚偽の表示をしても何の問題もない。だから供給側はコスト削減のために、安いエビを使おうとする。しかし、より本質的な問題は、供給側にある。そして、その問題とは、虚偽表示をする体質でもなく、信頼を失うことを軽視していたことでもなく、儲ける意識も能力も全くないことにあるのだ。

 今回の消費者の反応で明確になったことは、誰も芝エビだからそのメニューを頼んでいた人はほとんどいなかったということだ。つまり、芝エビという虚偽表示のギャンブルをしても、得たものは何もなかったということなのだ。芝エビのチリソースではなく、エビのチリソースと表示して十分だったのにもかかわらず、あえて芝エビと嘘をつくというリスクを犯してまで、売り上げが伸びるわけでもない戦略をとっていたことにある。

 消費者が何を求めているか、全く考えていない、分かっていない、そこに最大の問題があるのだ。

 偽装しても構わない、と言っているのではない。社会的に問題のあることをしてまで、儲からないことをしていたことが問題なのだ。消費者の本当のニーズをつかむ。その一番の本質を、飲食サービス業界は全くできなくなっていることを示したという意味で、今回の事件は私にとっては衝撃的だった。

 
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