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「北海道ナンバーワンのIT企業」を目指し独自の取り組みを強化―スリーエス

スリーエス社長 諏訪原大作(すわはら・だいさく)

スリーエスは高い技術開発力で、アイ・エス・ビーグループの中でも重要な地位を確立している。以前から強みのある官公庁向けシステム開発に加え、今後は北海道に拠点を置く企業ならではの、新たな取り組みも加速させる考えだ。

スリーエス社長 諏訪原大作(すわはら・だいさく)
スリーエス社長 諏訪原大作(すわはら・だいさく)

官公庁向け開発を強みとしM&Aを機に事業を拡大

 「将来は北海道ナンバーワンのIT企業に成長したい。売上規模だけではなく、北海道のIT企業なら弊社に頼もうと思われる会社にしたいということです」

 こう語るのはスリーエス社長の諏訪原大作氏。札幌を拠点に地方自治体や中央官庁向けのシステム開発をはじめ、民需向けのソフトウェア開発などを手掛けている。

 同社の前身は1979年に設立された札幌システムサイエンス。2014年に東証一部上場企業であるアイ・エス・ビーのグループ会社となり、19年にはインフィックス社を統合して現在の社名になった。

 地元北海道の企業からだけではなく、親会社アイ・エス・ビーのニアショア拠点としても東京など道外の仕事を受注できる点がスリーエスの強みだ。オフィス内にはプロジェクトごとに開発のためのクリーンルームを複数設け、外部の拠点とオンラインによる共同作業が可能になっている。

 以前は官公庁向け中心に仕事を手掛けていたが、アイ・エス・ビーグループに入ってからは事業範囲を拡大し、売り上げも倍増した。

 現在は官公庁向けと金融機関向けが全体の約50%を占める一方、携帯端末系や車載用組み込みソフトウェア、さらにはデジタル化に向けた取り組み、5G対応、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAI(人工知能)といった最先端分野の開発も行っている。

 諏訪原氏はアイ・エス・ビーでエンジニア畑を歩み、同社の執行役員とスリーエスの社長をしばらく兼任してきたが、親会社から完全に転籍して20年4月からはスリーエスの社長業に集中する形となった。鹿児島県出身の同氏が札幌に骨を埋める覚悟を決めたのは「北海道をもっと盛り上げたい」という強い気持ちがあるからだという。

 「アイ・エス・ビーと連携を強化しながら、これからは親会社にもできないこともぜひやっていきたい。ニアショア開発も手掛けつつ、自社製品の開発にも注力していきたいと考えています」と力を込める。

グループでの存在感と自社の競争力も高める

 もともとアイ・エス・ビーで官公庁向けシステム開発を事業として確立した実績を持つ諏訪原氏。

 もっとも、同分野の事業はかつては安定的な収益をもたらしていたが、数年前から国や自治体が予算を使い切らないケースが増え、仕事の量や質の波が大きくなってきた。アイ・エス・ビー経由でのニアショア案件や同分野での案件だけでは成長に限界があるため、スリーエスでは自社による案件獲得をより増やしていく方針だ。

 親会社に頼らない独自の取り組みとして、まず強みのある官公庁向け開発では、プライム(元請け)での新規案件獲得を目指す。また既に進めている北海道の産学連携プロジェクトや大手鉄鋼メーカーとの案件など、高付加価値事業への展開も強化していく。

 23年を最終年とした中期経営計画では売上高、営業利益ともに現在の1・5倍程度を目標に掲げている。これに向け、大きな課題と捉えているのがエンジニアを中心とした優秀な人材の確保だ。そのためにも、スリーエスとしてのブランド力強化と実力をアピールしていく必要性を感じている。

 エンジニアに求めるのは、技術力もさることながら社内・社外での折衝などを円滑に進められるコミュニケーション能力だと諏訪原氏は語る。特に昨今のテレワークが増加する状況においては、チーム内での意思疎通のスムーズさが、プロジェクトの成否に関わるケースも徐々に増えてきている。

 この採用の間口を広げるため、新卒採用に関してはこれまで大学卒以上を対象としてきたが、今後は高専卒業生などもターゲットにしていく考えだ。

 また、社内では次のリーダー候補の育成もスタートさせる。以前は、新たなことへの挑戦を躊躇する社員も多かったが、最近ではそうした雰囲気も前向きに変わってきたということだ。

 「自分はあまり細かい指示はしないタイプ。部長クラスの人材には『失敗しても良いから1度はやりたいようにやれ』と伝えて、予算も自ら作らせて競わせる形にしました。そこから抜け出してくる人材を、次世代のリーダー候補として育成したいと思います」と諏訪原氏は話す。

 新たな船出の矢先に新型コロナ禍が日本中を襲い、事業環境自体は不透明だ。20年上半期はそれほど大きな影響はなかったものの、10月以降は企業のIT投資抑制や自治体、中央官庁が予算を絞る傾向が出てきているという。

 それでも「確かに戸惑いはしましたが、守るところは守り、攻めるところは攻めてしっかり目標を達成したい」と前向きに語る。「北海道ナンバーワンになる」という将来像を実現するための旅は、今始まったばかりだ。

会社概要
設立 1979年4月
資本金 2,000万円
売上高 17億5,000万円(2019年)
所在地 北海道札幌市東区
従業員数 110人
事業内容 ITシステム、ソフトウェア開発
https://www.sss-i.co.jp/

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