経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

創業時から受け継ぐ先見の明 「攻めの営業」で時代に対応―オカムラ

1907年創業の歴史ある企業が、まるでベンチャー企業のような心意気を持って挑戦と革新を続けている。新型コロナ禍にあってもその姿勢は揺らぐことなく、今期の収益はしっかりと黒字を叩き出している。専務取締役の岡村謙太朗氏の話からその強さのルーツに迫った。

オカムラ専務取締役 岡村謙太朗(おかむら・けんたろう)

歯ブラシ工場から口腔ケア製品総合商社へ

 歯ブラシの全国生産量第1位を誇る大阪府で、生産の中心地として知られる八尾市。かつては大阪・生野も「歯ブラシ村」と呼ばれるほど歯ブラシ製造が盛んであったが、現在はオカムラ1社を残すのみとなった。

 「昔は、当社があるこの一帯に歯ブラシ製造工場がいくつも建ち並び、成型・植毛・ブラシ加工など分業制で生産していました。その後、工場の多くは八尾に移転しましたが、生家のある土地にこだわった当社だけが移転を望まずにとどまりました。当時は植毛工程を担う一工場でしたが、創業者である高祖父、曾祖父、祖父、現代表の父へと事業が受け継がれる過程で、紆余曲折を経て現在の業態へと発展したのです」と専務取締役の岡村謙太朗氏は語る。

 同社の歴史をさらに紐解くと、創業時は折しも「富国強兵」がうたわれた時代。国力を充実させるため、国を挙げて産業の育成と軍備の強化が図られていた。創業者である岡村氏の高祖父は、歯ブラシ市場の拡大を狙う明治政府の要請に従い、オーラルケア先進国であるイギリスへ渡航して、製品開発や研究を行った。

 海外より持ち帰った知識や技術を生かして市場の拡大に貢献したものの、1980年代に入ると大企業の参入により、オカムラをはじめ中小企業のシェアはどんどん目減りしていった。まさに衰退の危機にあったが、供給先を日本だけに絞るのをやめ、台湾や香港など海外輸出へと舵を切り直すという決断が奏功する。

台湾、香港を足掛かりに東南アジアへ進出

 オカムラに再び大きな転機が訪れたのは、2000年を過ぎた頃。1990年代になると歯ブラシに限らず、さまざまな日本製品がアジアに輸出されるようになっていたが、主な供給先の中国では政治や文化の壁が立ちはだかり、さらなる市場拡大を阻んでいた。いち早くアジア進出を果たし、成功を収めていた同社にとっても次の手が望まれるというそんなタイミングで、今度はベトナム進出の話が舞い込んだ。

 2002年にはベトナム・ホーチミンに製造工場が完成。東南アジアで存在感を示すようになったオカムラに、メード・イン・ジャパンのクオリティを求める欧米メーカーから注文が殺到。オーラルケア先進国である欧米の市場規模は日本の10倍以上。生産はフル稼働となった。

 「当時の供給先は欧米が7割、アジア諸国が2割、日本国内が1割でした」と語る岡村専務。07年頃にはPBやOEM、商社との取引も増え、徐々に日本国内でのシェアが拡大。現在では欧米が6割、日本国内が3割、アジア諸国が1割で推移している。「日本から世界へ」という視点は当時も今も変わらないものの、12年を境に従来の海外路線に変化の兆しが見え始めた。岡村専務がそれまで勤務していた総合商社を退職し、入社した8年前に該当する。

 「ものづくり企業は職人気質にとらわれがちで、得てして提案営業が弱いものです。私は従来の固定概念や枠には一切とらわれず、柔軟な発想で『必要とされるものを必要なところへ』提案したいと考えました」

 それまで行っていた、顧客から寄せられた相談や依頼に応える形で製品を提案する「受け身の営業」を刷新し、自ら市場に飛び出してマーケティングを行い、ニーズを掘り起こして商品を企画・開発する「攻めの営業」スタイルに転換した。

 そんな「攻めの営業」が実を結び、同社が取り扱う品目はもはや一般の歯ブラシ、デンタルフロスといったオーラルケア製品にとどまらない。企業とタイアップしたノベルティやギフト、インテリア用品など、幅広い市場にマッチした自社製品を生み出している。

 オカムラの強みは、創業時から積み上げてきた高い技術力と品質、海外に学ぶ最新のデザイン、そして海外との強いパイプによってもたらされる情報収集力だ。その情報収集力は、世界で感染拡大中の新型コロナウイルスへの対応時にも役立った。

 「緊急事態宣言が出るよりもずっと早く海外から情報を得ていたため、20年1月の時点ですでに対応策を講じていました。おかげでコロナ禍でも慌てることなく、売り上げの落ち込みなどもほぼ皆無。もともと市場を限定せず多角営業を行ってきたこともあって、インバウンドの影響も最小限にとどまりました」

 今後の展望については、「日本はオーラルケアに関する文化レベルが低く、欧米は生産技術においても環境デザイン面でも1歩も2歩も先んじています。歯ブラシは単に歯を磨くためのツールではなく、毎日使うものだからこそもっとこだわるべき。オーラルケア文化の向上に寄与しながら、国際的な取り組るSDGsを意識した製品開発にも取り組んでいきたい」と締め括った。

会社概要
創業 1907年4月
資本金 1,000万円
所在地 大阪市生野区
従業員数 18人
事業内容 デンタル製品、オーラルケア製品の製造販売
https://www.okamuragroup2019.com/

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