経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

社員と成長する100年企業へ高付加価値の提案で世界に挑む―東洋ビューティ

東洋ビューティ社長 岩瀬史明(いわせ・ふみあき)

化粧品・医薬部外品の受託メーカーとして付加価値の高いODM/OEM提案を行う東洋ビューティ。歴史と経験に裏打ちされた高い品質への信頼に加え、商品のコンセプトづくりから製造までを一貫して手掛ける強みを生かし、世界を見据えた事業を展開している。

東洋ビューティ社長 岩瀬史明(いわせ・ふみあき)
東洋ビューティ社長 岩瀬史明(いわせ・ふみあき)

アジアの脅威に対し高付加価値提案で挑む

 化粧水をはじめとするスキンケアからヘアケア、ボディケアまで、理美容に関わる製品は時代とともに進化を遂げている。アンチエイジングやナノ化、浸透性といった機能性の向上だけでなく、近年はSDGsや環境意識の高まりなどの社会的課題に対応する技術革新が進んでいる。

 1941年、自社ブランドである「ハイネオ化粧品」「プリンス化粧品」のメーカーとして出発した東洋ビューティは、戦後の混乱を経て国内3拠点に4工場を構えるまでに成長。徹底した品質管理と研究開発力が「メードイン東洋ビューティ」と呼ばれるまでにブランド力を高め、国内外の大手化粧品メーカーや美容室、美容サロンなどの商品製造を担う。

 また、製造にとどまらず素材提案や商品コンセプトづくり、パッケージデザインといった企画から携わるODM(オリジナル・デザイン・マニュファクチャリング)も得意とする。2005年の改正薬事法施行における規制緩和を機に、業界外からも化粧品製造販売への参入が可能になったことで、化粧品の製造ノウハウや設備を持たない食品メーカーなど各社との展開が広がっている。

 創業80期の節目となる20年は、岩瀬史明氏が新社長に就任。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が経営を直撃し、国内需要に大きな打撃はなかったものの、近年拡大し続けてきたインバウンド消費は失速した。

 一方で顕著になったのがインターネット販売の加速で、SNSや動画などを通じて商品が紹介され、購買につながるというオンラインチャネルの浸透が強まった。これにより、当初は落ち込んだ消費も徐々に回復傾向にあるという。また、ウェブ会議の普及で男性向け化粧品の需要が伸びるなど、ウィズコロナで生まれた新たなニーズにも注目している。

 「化粧品業界の発展のために、自分たちは何をすべきかを常に考えています」と岩瀬氏。今回のコロナ禍は、あらためて自社の価値を考えるタイミングとなった。

 近年はアジア各国のメーカーによる攻勢も大きな脅威となっている。特に中国の技術進化は目覚ましく、最先端の生産設備で容易に大量生産を可能にする体勢が整っている。

 これに対して岩瀬氏は「世界中から求められているのは、品質の安心感と安全性です。生産能力だけではなく、確固たる信頼を築いてきた東洋ビューティクオリティーをより追求していきたい」と意気込む。

 そんな同社が強みを持つODM提案は、マーケティング手法を取り入れながら独自のノウハウやナレッジを生かし、顧客の期待を越えた感動を提供する。受託製造だけでない付加価値の提供によって、アジアのOEMメーカーに対してアドバンテージを持っていると言えそうだ。

佐賀工場はミュージアムも備えた「見せる工場」
佐賀工場はミュージアムも備えた「見せる工場」

目指すは「100年企業」 人事制度改革で前進する

 外部環境が大きく変化する中、「100年企業」を目指すべく新たな創業期として岩瀬氏が力を入れる施策の一つが人事制度改革だ。中でも、社員との価値観の共有を重要視している。企業理念を再構築し、社員全員が常に携帯するクレドブックには「一人一人が企業活動とともに無限に成長できるように」との理念が記されているという。もちろん、新しいイノベーション、感動を生む商品企画、高品質な価値の提供は、社員の存在あってのことだ。

 「組織は人で成り立っています。社員が人間力を磨く場として、誇りを持てるような会社にしたい」

 さらに、国内市場だけでなく欧米、中国、アジア市場に向けたグローバル展開も加速する。19年4月に新設した佐賀工場には最先端の設備を導入。最大5万トンという同社最大規模の生産量で世界に通用するクオリティーを提供するだけでなく、工場見学も可能な「見せる工場」として、化粧品製造をテーマにするミュージアムも併設している。

 「伝統は変革の連続である」というスピリットを伝承しながら前進していく中で、DX(デジタルトランスフォーメーション)がキーになると見ている。例えば、スマホなどのデジタルデバイスによって肌の状態を分析し、その結果に対応した化粧水を自動調合するなど、技術力のあるブランドメーカーとの連携によりイノベーションの可能性は広がる。 一方で、DXの発展は常に異業種参入の脅威とともにある。「世界最良のODMメーカー」として新たなスタートを切った同社は、そうした脅威を飛躍的成長のチャンスとしてとらえ、さらなる挑戦を続けていく。

会社概要
設立 1941年7月
資本金 4,500万円
売上高 256億円
所在地 大阪市中央区
従業員数 860人
事業内容 化粧品・医薬部外品の受託製造、新製品の企画・研究開発業務の受託、化粧品・医薬部外品の輸出入業務
https://www.toyobeauty.co.jp/

【AD】