経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

社員も顧客も幸せにする日本一幸せな会社を目指して―竹屋化学研究所

竹屋化学研究所 竹谷裕人(たけたに・ひろひと)

顔料を起点に、時代とともに発展し続けてきた竹屋化学研究所。さまざまな環境変化を乗り越えてきた100年企業だ。4代目社長の竹谷裕人氏と共に、ぶつかり合いながら成長し続ける社員たちが信頼で築く未来とは何かを聞いた。

竹屋化学研究所 竹谷裕人(たけたに・ひろひと)
竹屋化学研究所 竹谷裕人(たけたに・ひろひと)

4代目のミッションは社員を幸せにすること

 1908年に漆用顔料の販売を目的に創業された竹屋化学研究所は、60年頃から内装用左官材料などの開発によって建材部門に進出した。現在は住宅基礎のコーティング・保護剤である建築用ポリマーセメントの製造販売を中心に事業を展開している。

 同製品は、樹脂とセメントモルタルを配合することで防水、接着性、耐久性、防蟻といった機能性を大幅に拡張。従来のセメントモルタルよりも幅広い用途に対応し「これまで不可能だったことを可能にする材料」として、今では全国500社以上の住宅メーカーと取引を行っている。

 社会のニーズに適応しつつ、事業を柔軟に変化させてきた同社では、先代の良いところは引き継ぎながら起業家精神を常に持ち続ける「代々初代」という考え方が継承されている。

 現社長の竹谷裕人氏は2011年の社長就任時、会社経営の意義についてあらためて考え、「ここにいる社員が幸せになってほしい」というビジョンを明確にした。社会に役立ち、会社を存続させるためには社員の力が欠かせない。社員がこの会社に勤めて良かった、と誇れるような日本一幸せな会社にすべく事業に取り組んでいるという。

 かねてから施行している有給休暇の取得奨励や連続休暇取得時のお小遣い支給、住宅費補助といった制度の充実はもちろんのこと、社員を幸せにするためには待遇を良くするだけでは十分ではない。社内の良いことも悪いこともすべて社員に公開することで、一人一人が会社を良くしていこうという意識を持てる環境づくりを徹底している。

 「社長の仕事の重荷を一人で背負うのではなく、社員と共有して一緒に悩んでもらっています」

 例えば、現在推進しているSDGsへの取り組みに関する会議などは、喧嘩になるほどの白熱ぶりだという。社員一人一人が真剣に考えて、20代の若手社員でも竹谷社長に忌憚ない意見を飛ばし、議論を交わしながら自社の方向性や取り組みを固めていく。

 「世の中から竹屋化学がないと困る、と言われるほど良い意見が出ている自信があります」と竹谷氏。地球環境に対して、社員30人余りの中小企業は大企業ほどインパクトをもたらすことができなくても、必ず大きな価値を生み出す力が身に付いていると自負している。

共に悩み、乗り越える 全員で成長する会社に

 同社では、決算書をはじめ信用調査会社による評点や株主総会で開示する情報などは、全社員の総合通知表であるという方針の下、社員に公開している。また各部署の責任者会議は、会社の方向性を周知するために若手社員が議事録を取る。

 こうした仕組みにより、社員は会社から信用されているという安心感、経営に参画し、自分たちが会社をより良くしているという自己価値観を高めることになり、おのずと仕事への意欲が生まれ自己成長につながっているようだ。新型コロナウイルスによって、売上高は前年比で5~6%減少したが、経費を抑えることにより結果として利益を確保した。一方で、拠点を分散し出勤を間引いた緊急体制は社員からは不評であったという。「皆と毎日会いたい」というのがその理由だ。互いの絆が強過ぎるが故に、リモートを利用した生産性向上は今後の課題になりそうだ。

 そんな同社に「失敗を恐れる」という言葉はない。今すぐにはできなくても、何年先にどのような条件が揃えばできるようになるか、と考える中長期視点があるからだ。そして、この考え方は商品特性にも表れている。化学品は、どんなに良い商品が生まれてもすぐに売れるものではない。年数をかけて顧客に浸透し、ある時から一気に成果につなげていく。また、化学研究に失敗は付き物であるため、社員のミスを指摘するような文化も存在しないからだ。

 「社員を幸せにしている社長はもっと幸せ」と竹谷氏は言う。同社の社員採用には、数人の募集に対して全国から50人を超える応募者が集まってくる。職場は明るい雰囲気で、社長を交えて冗談が飛び交い常に笑いが生じている。

 「社員全員、会社に来るだけで楽しいのだと思います。私自身も、楽しくない会社にはいきたいと思いませんから」

 そんな遊びに来るような雰囲気が大事だとは言うが、仕事とのメリハリはしっかり付いている。これは社員が経営者的な視点を持ち、やるべきことを認識できているからだ。

 「社員には『お客さまからお金を払いたいと言われるサービスを提供しよう』と話しています。お客さまを幸せにするのは社員であり、そんな社員たちを幸せにするのが社長の役割なのです」

 今は社員一人一人に10年後の会社の姿を考えるよう課題を与えている。「人材はお金で買うことはできません」という言葉通り、互いに高め合う信頼関係の上に、未来を能動的に作る社員は育くまれていく。

会社概要
設立 1938年4月
資本金 3,000万円
売上高 11億4,700円
所在地 大阪府東大阪市
従業員数 31人
事業内容 住宅基礎保護用ポリマーセメント、タイル圧着用ポリマーセメント、特殊下地用ポリマーセメント、内装・外装用着色塗材、防水剤、その他左官用関連製品
https://www.takeyakagaku.com/

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