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「メディア露出とSNSと掛け合わせる最新のPR手法とは」―笹木郁乃(LITA代表取締役)

笹木郁乃・LITA代表取締役

メディアに刺さるプレスリリースの作り方や、SNSを活用したPR手法で、確かな実績を持つ株式会社LITA代表取締役の笹木郁乃さん。そのエッセンスをぎっしり詰め込んだ『お金をかけずに誰でもできる! SNS×メディアPR 100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)が、7月29日に発売される。執筆の目的とPRの重要性について語ってもらった。 

笹木郁乃・LITA代表取締役プロフィール

笹木郁乃・LITA代表取締役
(ささき・いくの)1983年生まれ。山形大学工学部卒業後、アイシン精機で研究開発職に従事。その後寝具メーカーのエアウィーヴ第1号社員として転職し、PRに注力して売上高1億円から115億円に伸ばす急成長に貢献。鍋メーカーの愛知ドビーを経て、2017年ikunoPRを設立、19年LITAに社名変更。企業のPR支援のほか、経営者や個人事業主、広報担当者などにPRスキルを伝える「PR塾」も主催する。

最新のPRテクニックを公開

新型コロナウイルスの流行で、飲食店をはじめとするさまざまな業界が打撃を受ける中、お金をかけずに企業ブランディングや売上増加を実現するためのPRの重要性がますます高まっています。僭越ですが、「この本で日本経済を救う」という気持ちで、今回は執筆しました。

昨年上梓した『0円PR』がPRについて学ぶ基礎編だとすれば、今回はさらに具体的な手法を盛り込んだ応用編になります。弊社では、PRを学びたい企業広報のご担当者や個人の方向けに定期的に「PR塾」を開催していますが、本書はそのテキストを書籍向けにアレンジした形になっています。

教科書代わりに常に持ち歩いて、困ったときには項目を探して実践することで、結果を出せる内容だと自負しています。

最新のPR手法を披露する『お金をかけずに誰でもできる! SNS×メディアPR 100の法則』
最新のPR手法を披露する『お金をかけずに誰でもできる! SNS×メディアPR 100の法則』

なぜ今、PRを学ぶべきなのか

この時代にPRを学ぶ重要性は増しています。その理由の1つが、従来は認知度や売り上げの拡大に有効だった広告がなかなか効かなくなってきたことです。人の脳の処理スピードが変わらない一方、接する情報量は日々増えています。マスメディアの広告やウェブ広告が溢れかえり、見られてもすぐに忘れられたり飽きられたりするため、効果が薄くなっているのです。

そこで、メディアPRやSNSの使い方が重要になってきます。溢れる情報の中で、本当に信頼できるものは何かという方向に人々の関心は移っています。

お金をかけて即効性を狙う広告と違って、PRやSNS活用は効果が出るまでに時間がかかります。しかし、信頼できるブランドづくりのためには、非常に有効な手段なのです。

メディアPRだけでは不十分な時代に

10年前と比べると、SNSを活用する人は明らかに増えました。博報堂の調査によると、2006年はテレビ、ラジオ、新聞、雑誌などのマスメディアを人々が視聴する時間は極端には減っていなかったのですが、その一方でPC、タブレット、スマホから情報を取る人が増えていきました。現在はマスメディアを活用する人がさらに全体的に減って、情報を取る手段として、マスメディアとインターネットの比率が5:5ぐらいにまでなっています。

これはつまり、以前は非常に有効だったメディアPRですが、それだけに頼るとリーチする層が減るということを意味しています。マスメディアへの登場は依然として信頼度が高く有効なPR手段ですが、メディアで紹介されるだけでは価値が高まりにくいことを見込んで動く必要があります。

これは広告だけでなく、プレスリリースなどを通じてメディアに取り上げられた場合も同様です。メディアに出たというだけでは不十分で、そのことをネット情報として紹介して、拡散されることで価値が上がるのです。メディアに出たことをSNSのフォロワーなどに紹介することによって、顧客の呼び戻しにも繋がっていきます。

最新のSNS活用ノウハウも公開

ただ、やみくもにSNSを使っても成果は出ません。各ツールをどのように使いこなすか、やってはいけないことは何か、といった詳細をぜひ学んでいただきたいと考えています。 

SNSを使ったPR手法は日々アップデートされています。

たとえばインスタグラムだと、1年ほど前まではハッシュタグは6~7個に厳選したほうがフォロワー数が伸びやすいと言われていました。ハッシュタグが多すぎると、AIが混乱して検索からこぼれ落ちてしまうというのがその理由でした。

ただ、実際に試してみた結果、今はハッシュタグを30個付けても結果はさほど変わらないことが判明しました。数多くののタグをつけても、同じ分野に関係するものであれば、アプローチしたい層がハッキリするのでしっかりとリーチできるのです。

タグ付けの例を挙げると、ビッグタグ、ミドルタグ、スモールタグを定義します。ビッグタグはたとえば「ママ」「ファッション」など、分野全体をカバーする100万件以上の投稿があるタグです。ミドルタグはもう少し細分化されたもの、スモールタグはさらにピンポイントの文言にします。

GoogleのSEO対策のようなもので、1つの投稿に対してビッグタグは5個まで、ミドルタグは15個まで、スモールタグが10個までといった形にすることで、バランスよく確実に狙った層にアプローチすることが可能です。

本書では、フェイスブックやツイッターなど、他のSNSに関しても、こうした事例を分かりやすく解説しています。

オンライン時代に合わせたPRとは

昨今の新型コロナの影響で、PRの世界にも大きな変化が訪れました。オンラインをいかに活用するかが成功の大きなカギとなっています。

メディアPRでは、記者さんにアプローチしようにも在宅勤務で電話してもいないことが増えたり、距離感が遠くなったりと、やりづらくなった点もあります。でもその一方で、オンラインだと直接会うよりも構えずに済むので、比較的短時間なら話を聞いてもらいやすいというメリットもあります。

記者発表にしてもそうです。オンラインで事前にZOOMのURL送ったり、資料を郵送するために連絡したり、取材後もサンプル送ったと、記者さんとの接触回数が増えるので自然な形で印象に残りやすくなります。対面の場合、接触しすぎるとしつこく思われてしまう恐れがありますが、オンラインだと小まめなフォローでコミュニケーションを取りやすいというメリットがあります。

また、コロナだからこそのテーマに自社商品を絡めやすい、という面もあります。たとえば健康商品のPRであれば、在宅勤務による体調不良の増加に絡めてプレスリリースを打つことも可能でしょう。コロナ前には反応がなかった企画に対しても、切り口次第でメディアの関心を呼び寄せることができます。

最後に、わたしたちの会社の宣伝をさせていただくと、昨年から始めた「OJT式PR塾」というオンラインでPRを学ぶ専門学校が好評で、現在300名の社会人が全国から受講されています。

これからも時代に合わせた最新メソッドを取り入れながら、PRの世界で羽ばたく人々を応援していきたいと考えています。