経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

日本一富裕層に詳しい税理士が説く「資産の残し方」(第6回)

芦田敏之・ネイチャー代表

事業承継、相続税対策は誰に相談すべきか

事業に成功して富裕層となった企業経営者たちにとって、資産運用と防衛は大きな関心事だ。本シリーズでは、景気変動や税制改正などに直面しても、着実に資産を増やして繁栄を継続させるためのノウハウを、「日本一富裕層に詳しい税理士」と呼ばれる芦田敏之氏(税理士法人ネイチャー)が伝授していく。【AD】

芦田敏之氏プロフィール

芦田敏之・税理士法人ネイチャー代表
(あしだ としゆき)1978年生まれ。神奈川県出身。2005年、税理士試験合格。2006年、税理士登録。2012年、税理士法人ネイチャー国際資産税(現:税理士法人ネイチャー)を設立。現在は代表税理士を務める傍ら、MBA取得のため英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中。また、Mastercard® 最上位クラスで、富裕層を多く抱えるクレジットカードLUXURY CARDの「ラグジュアリーカード・オフィシャルアンバサダー」に就任。資産規模100億円を超えるクライアントの案件を数多く抱えてきた異彩を放つ経歴から、「日本一富裕層に詳しい税理士」として多数メディアに取りあげられ活躍する。

相続対策を顧問税理士に任せられない理由

本連載も最終回となりました。今回はこれまでの総括とともに、最後なので私たちの紹介も少しさせていただこうかと思います。

現在、定期的に開催している経済界さんとの共催オンラインセミナーには毎回多くの企業経営者の方々にご参加いただいています。その理由はわれわれのように個人事業主・企業オーナーといった個人の事業承継や相続税対策に特化して、それなりの規模で活動している組織が少ないからです。

事業承継や相続税対策で悩んだとき、経営者が相談するのは顧問税理士、あるいは銀行などだと思います。しかし、基本的に顧問税理士は日々の法人向け業務に忙しく、経営者個人の資産をいかに残していくかという観点からのアドバイスは期待できない場合もあります。

一方、銀行は事業承継の際に相続税によって顧客企業の内部留保が大きく減ってしまうのは困るので、対策をアドバイスしてくれることもあります。賢明な経営者であればしっかり実行したいと考えることですが、顧問税理士に任せてもそこまで手が回らない場合が多いのです。

そこで、われわれのような専門領域に特化したパートナーが必要とされるのかもしれません。大規模な税理士事務所は法人向け業務がメインですし、小規模事務所だと表向きは事業承継対策を謳っていても自社での集客が難しいため案件を見つけられず、ノウハウが溜まっていないところがほとんどだからです。われわれの場合、集客部門が自分たちでしっかりと事業承継に悩む経営者を集めることができるので、多数の案件に日々向き合っています。そうして、最新の情報を常に得られるのが強みとなっています。

中小企業の大半は、目的に応じて複数の専門税理士と契約したりはしていません。ですが日本の場合、税制が複雑であるうえに相続税のインパクトが非常に大きいのは本連載でこれまで述べてきた通りです。ですから、われわれのような存在が重宝されるのかもしれません。

誤解していただきたくないのは、われわれは企業の顧問税理士さんたちと競合関係ではないという点です。逆に顧問税理士さんたちがいなければ、法人向け業務を手掛ける人が居なくなってしまいます。ただ、成果報酬制のため毎月コストが掛かるわけではないですし、提案書作成で料金を取ることもありません。傍らからいろいろな提案をして、効果があると思っていただければ、実行サポートしますので非常にお得です。

経営者にとっての「かかりつけ医」に

企業の後継者不足が日本では社会問題化して久しいですが、相続税負担をはじめとする諸問題が原因の一旦となっているのは間違いありません。ですが、現役のうちに何も対策していない経営者が非常に多いのが実状です。

富裕層である経営者さんたちとわれわれの関係は、患者とかかりつけ医の関係に似ています。年齢を重ねて健康に不安を覚えるようになっても、日々健康チェックをして悪いところを早期に治療するシニア層は、日本にはそれほどいません。顧問税理士さんとは別に、経営者の皆さんと伴走するのがわれわれのスタンスです。

 本連載で繰り返し述べてきたように、「経済合理性がある実物資産への投資」が相続税対策の基本です。ただし、税制改正が頻繁に行われるため、現在行っている対策よりもっと良いやり方があれば別のスキームに変更することが必要です。こうした点からも、マーケットを常にウォッチするかかりつけ医的な存在が必要となります。

情報取得で遅れを取ると、経営におけるリスクが増すことになります。相続税対策は、いつかは必ず訪れる「経営者の死」という事態に対するリスクヘッジなのです。

そこへの備えを早めにしておくかしないかで、企業と個人の資産を後代に残せるかが大きく変わってきます。本連載を終えるにあたり、その点を再度強調しておきたいと思います。