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職人技光る保冷剤の進化系 +3℃から−20℃の凍結を一般冷凍庫で実現―アトム技研

アトム技研代表取締役・水野博之


昨年、熱中症対策として生まれた保冷剤「アイスエナジー」。安心・安全・高品質な素材を使い、食品メーカーや医療機関が注目する機能性と、グッドデザイン賞を受賞したユニバーサルデザインが話題だ。省エネにも貢献し、低温革命で世界を快適にする。

アトム技研代表取締役・水野博之
アトム技研代表取締役 水野博之(みずの・ひろゆき)

 住宅パネルや住宅ドア、ダイヤモンド工具の製造・加工、人材派遣・紹介、ソーシャルプランニングなど多岐にわたる事業を展開するアトム技研。新たな事業として2020年3月より保冷剤事業を加えた。

 「数年前、フィリピンやベトナムなどで建築プロジェクトに携わった際に、現地で熱中症が社会問題になっており、保冷材に目を付けたのです。日本の保冷材は世界で最も進歩しており、衛生的で品質が高い。専門家を招き入れ、2年かけて作ったのがアイスエナジーです」

 アイスエナジーは、+3℃から-25℃まで7つの温度帯の商品を展開。通常の保冷材は、商品に対して-10℃の温度差が必要となり、-20℃の商品を凍結させるには-30℃~-40℃の冷凍設備や急速冷凍庫が必要となるが、アイスエナジーはこれを-21℃の環境下で凍結可能にした。

 これにより大規模な設備投資が不要となり、さまざまなメーカーや企業などで扱える機会が増えた。原料も食品添加物と水のみで安心・安全なため、食品メーカーなどでも重宝されている。

 新商品開発にも力を入れており、21年7月にはプチプチで知られる川上産業と共同開発したワクチン輸送用のアイスエナジープチボックスも販売開始。この保冷ボックスにアイスエナジーと氷を入れ、外気温33℃の環境下でテストした結果、10時間経っても解凍率0%を記録。昨今は医療用ワクチンなど低温輸送の問い合わせも増えている。

 21年夏には猛暑対策としてアイスエナジーウェアシリーズを販売。アイスエナジーを専用ウェアの背中に付けて体を冷やし、着る保冷剤として注目された。動きやすさとファッション性を兼ね備え、百貨店やゴルフ用品売り場、オンラインショップなどで品切れになったほど。

 「機能性はもちろん、デザイン、ファッション性にもこだわりました。ロゴは日本の家紋や氷の結晶をイメージしたデザインで、黒と白のパッケージで印象付けました」

 きっかけは東南アジアの熱中症対策から考案されたアイスエナジー。「保冷材の力で世界を快適にする」を掲げる、食品ロスやCO2削減など環境貢献も視野に入れた商品だ。

会社概要
設立 1990年9月
資本金 1,000万円
売上高 12億円
所在地 愛知県名古屋市中村区
従業員数 271人
事業内容 製造・加工業、製造業、人材派遣業、人材紹介業
https://www.atomgiken.co.jp/

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