経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

心の時代の手づくり市場 パートナーシップとサービス拡充で新展開を―藤久

藤久社長・中松健一


手芸専門店「クラフトハートトーカイ」を中心に、現在384店舗を全国展開する藤久は手づくり市場の老舗。2021年3月に創立60周年を迎え、同年7月に就任した中松健一新社長の下、新時代への取り組みを加速させている。

藤久社長・中松健一
藤久社長 中松健一(なかまつ・けんいち)



 藤久はチェーン展開を開始した1968年から店舗を増やし、成長を遂げてきた。だが近年の人口動態変化、手芸用品の取扱店や通販の拡大など市場の変化の影響は大きく、19年に構造改革を決行。マスクの手づくり需要も追い風になり、収益回復の中で迎えた60周年。「2つの業務提携で新たな魅力づくりを打ち立てました」と中松健一社長は語る。

 一つは、玩具メーカー・エポック社との提携。動物たちとドールハウスの世界観が人気の「シルバニアファミリー」と手づくりの要素を融合させたサービスを開発。2店舗の試行で若年層の来店と売上増を検証済みで、今後取り扱い店舗を拡大する。

 もう一つが、教育や出版に強い日本ヴォーグ社との提携による教室事業の強化だ。従来の事業にヴォーグ社の情報力と教育力を投入し、多科目のウェブ教室を展開。店舗とのハイブリッドで体験機会を広げる。併せて130万人の会員に向けたサービスの拡充を図る。3月に新アプリをリリース後、15歳以下の子育て世帯応援サービス「子育てエールパス」を開始し、6月末までに約16万人が登録。「入園・入学のタイミングで約3割が店頭へ訪れる子育て層の継続利用を促進するもので、家族から保育士・教職員にも対象を拡大。シルバニアファミリー関連の商品力で誕生日やクリスマスの需要も伸ばせる」。

 また、ミシン等の道具やスペースのレンタル、作り図等のサブスクリプションなど新たな会員特典も用意し、会員数150万人を目指す。

 店舗とECの統合によるオムニチャネル環境の整備とシステムの刷新も進めており、通販から店舗への流れも促す。中心戦略のリーダーには女性を登用するほか、女性目線で作るモデル店舗4つがスタートするなど、女性の活用にも活路を見いだす。

 この60年、モノが市場に溢れても手づくり文化は失われることはなく、「モノからコト、そしてココロへ」と価値観は変化している。一方で少子化など課題も多い。「規模の小さな手づくり市場を未来へつなぐには、理念を共有する仲間と手を携えていくことが重要」と中松社長。その言葉通り、藤久は2022年1月に持ち株会社体制へ移行し、「仲間づくり」を加速する。

会社概要
設立 1961年3月
資本金 31億2,584万250円
売上高 206億9,400万円(2021年6月期)
所在地 愛知県名古屋市名東区
従業員数 社員194人、嘱託106人、パートタイマー等臨時雇員2,213人(2021年6月末現在)
事業内容 手芸専門店・生活雑貨専門店のチェーン展開、手芸用品・衣料品・服飾品・その他関連雑貨等の企画・販売、不動産賃貸
https://www.fujikyu-corp.co.jp/