経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

SDGsから事業承継まで顧客の多様なニーズに応える幅広いサービスを提供―北洋銀行

北洋銀行頭取・安田光春氏

新型コロナウイルスの感染拡大に伴うインバウンド需要の消失や度重なる緊急事態宣言の発令で厳しい状況にある北海道経済。法人から個人まで、資金繰りの需要に万全のサポート体制で応える北洋銀行の取り組みを安田光春頭取に聞いた。

北洋銀行頭取・安田光春氏プロフィール

北洋銀行頭取・安田光春氏
(やすだ・みつはる)──1959年北海道生まれ。83年慶應義塾大学商学部卒業。北洋相互銀行(現・北洋銀行)入行。宮の沢支店長、人事部調査役(石屋製菓出向)、執行役員融資第一部長、取締役経営企画部長、常務取締役などを経て、2018年より現職。

持てるすべての機能を地域貢献に結びつける

── コロナ禍の長期化を踏まえた北海道経済の現状は。

安田 北海道経済は、道内景気を牽引してきた観光関連産業や食関連産業が大きく落ち込んでいます。足元ではワクチン接種が広がり感染拡大は落ち着いてきていますが、原油、鋼材、木材、水産物などの価格上昇により道内経済の先行きは不透明感が強まっています。こうした厳しい環境に対処するべく、当行は引き続き融資による資金繰り支援をはじめ、お客さまに寄り添ったビジネスマッチングや販路拡大など本業支援を徹底してまいります。

── コロナ禍における貴行の顧客サポートについては。

安田 法人向けの取り組みでは、2020年度はコロナ関連融資支援に全店を挙げて取り組み、預金のみのお客さまを含め1万5千先と面談し、4600億円を超える融資を実行しました。また、コロナ禍で一時的に経営環境に影響を受けた法人のお客さまが、本来の収益力を回復するまで財務基盤の強化を図っていただくことを目的とし、資本性ローンの取り扱いを当行単独で開始しました。

 一方で、20年4月に3年間を期間とする中期経営計画「『共創の進化』~お客さま・地域から最も信頼されるパートナーを目指して~」をスタートし、貸出だけでなく事業性理解(評価)を起点としたビジネスマッチングなどの本業支援や事業再生支援にも注力しています。例えば、新たな販路拡大として飲食店のフードデリバリー事業への参入支援やECサイトの制作、出店のサポート、生産性向上のためのテレワーク環境整備等をサポートしております。

 特に注力しているビジネスマッチングでは、ココペリが提供する定額会員制の経営支援デジタルプラットフォーム「ほくようBig Advance」を販路拡大の支援ツールとしてお客さまに積極的に提案しています。このサービスは全国の会員企業と商談可能な機能を備えており、これまで販路拡大が難しかった商圏にもアプローチが可能になります。

コロナ禍に対応する新たなサービスを提供

── 新たな分野での事業展開は。

安田 21年5月、お取引先企業のSDGsへの取り組み支援を目的に、当行とお取引のある法人のお客さま向けに「SDGs宣言サポート」を開始しました。これはお客さまのSDGsに対する取り組み状況を診断し、その結果から独自に「SDGs宣言書」策定のお手伝いと、課題に対する今後の取り組みに向けたサポートを行う有償のサービスです。9月末までに100社超の申し込みをいただいており、50社を超えるサポートを実施しました。コロナ禍において健康、貧困、教育などの社会課題が顕在化していることから、お取引先と共にSDGsの達成に向け取り組みを強化してまいります。

 また、10月には当行を含む「TSUBASAアライアンス(※注)」参加行は、共同出資会社「TSUBASAアライアンス株式会社」内に事業戦略部を設置。参加行から順次派遣された担当者が各行の企画部門と緊密に連携しながら、「DX関連施策の推進」「人材育成・ダイバーシティ」「ESG・SDGs」「新事業への取り組み」など、共通する重要課題に関する共同化や集約化などを推進してまいります。

 さらに、11月には日本M&Aセンターとの共催により、経営者の高齢化や後継者不在などの課題解決に向けて、広く北海道内の経営者や次世代を担う企業家等を対象に「事業承継・M&Aカンファレンス2021」を開催しました。事業承継に課題を抱える事業者だけでなく、M&Aに興味や関心がある事業者、後継者ご本人、さらに上場を考えている事業者など、幅広い皆さまにご参加いただきました。

── 中期経営計画「共創の深化」の進捗状況と課題は。

安田 中計1年目の20年度は、コロナ禍に見舞われた厳しいスタートとなりましたが、全行を挙げて資金繰り支援に傾注したことから貸出金が計画を上回ったほか、経費削減努力の継続により当期純利益など収益性の目標をなんとか達成し、健全性を示す自己資本比率も目標水準を維持することができました。

 また、このコロナ禍により対面取引が制約される中、お客さまとのウェブ面談態勢を全店で構築したことをはじめ、ニーズの高まっている医療保険など非対面で完結可能な商品を拡充したほか、スマートフォンによる通帳機能や口座開設、住所変更、キャッシュレスサービス、一部店舗における来店予約サービスの試行など、環境変化に応じたデジタルサービスの提供を進めました。

 23年1月のTSUBASA基幹系システムへの移行を控え、足元で踏み込んだシステム投資は難しい環境ですが、中計2年目の今年度は、こうした各種サービスを一元化したポータルアプリの導入を予定しており、TSUBASAアライアンスや異業種との連携も活用しつつ、今後もより利便性や付加価値の高いサービスの拡充に努めてまいります。

(※注)TSUBASAアライアンス:千葉銀行、第四北越銀行、中国銀行、伊予銀行、東邦銀行、武蔵野銀行、     滋賀銀行、琉球銀行、群馬銀行および北洋銀行の10行が参加する地銀広域連携の枠組み

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