経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「お客さんの喜びを頂ければ売り上げは必ず付いてきます」―青山恭明(サイエンスホールディングス会長)

ゲストは、サイエンスHD会長の青山恭明さん。ウルトラファインバブル技術のミラブル製品で急成長中です。大阪・関西万博への協賛、全国に拡大する温泉プロジェクトも好調ですが、「5年後に経営から退く。それまでに会社の将来の礎を」と語ります。情熱ほとばしる対談をお楽しみください。聞き手&似顔絵=佐藤有美 構成=大澤義幸 photo=藤岡修平(『経済界』2022年3月号より加筆・転載)

青山恭明氏プロフィール

(あおやま・やすあき)1959年大阪市生まれ。2007年サイエンス設立。大阪商工会議所ライフサイエンス振興委員会委員、公益社団法人生命科学振興会理事、日本抗加齢協会理事、一般社団法人ファインバブル産業会理事。25年大阪・関西万博に協賛。

大阪・関西万博を世界戦略のスタート地点に

佐藤 コロナ禍で無観客開催となった東京五輪が終わり、2025年の大阪・関西万博を前に大阪が活気づいています。御社もパナソニックや小林製薬とともに、大阪府・市の協賛企業に名を連ねていますね。

青山 万博は大阪を超えて、日本を元気にする起爆剤になりますよ。大阪への誘致が決まった瞬間、何が起きても参画すると全社に宣言しました。会場では、われわれの進化した未来型テクノロジーを世界中の人たちに見てもらいます。またSDGsの目標のうち4つに貢献している会社であることを知ってもらう絶好の機会。来場予想は3300万人ですから、万博をサイエンスの世界戦略のスタートとしたい。

佐藤 情熱が伝わってきます(笑)。大阪での開催は55年ぶりですね。思い出はありますか?

青山 当時、小学生の僕はもう感動どころじゃなく、未来に行った気分になりました。各国のパビリオンを巡ってスタンプをもらい、並んで月の石を見たり、今では日常にあるケンタッキーやピザも、缶コーヒーも、動く歩道の体験もこの時が初めて。太陽の塔のグッズもたくさん持っています。すべてが夢のようで……。この話は1時間じゃ足りないよ。
佐藤 笑。今から開催が楽しみです。

温泉プロジェクトが新しいマーケットを創出

佐藤 2021年に、熊本県で温泉プロジェクトを始めていますね。

青山 ミラブル製品の科学的な評価を得るために熊本大学の先生にご協力いただき、産官学連携で始めました。温泉に入った後、ミラブル製品を使った時に肌の水分量の変化などによる結果を調べたりアンケートを実施して、たくさんの有効なデータが集まっています。

佐藤 温泉の付加価値を上げる地域活性化の取り組みですね。

青山 はい。今では温泉でのファインバブルの積極的な利用は、佐賀、石川、三重、和歌山などにも飛び火しています。各温泉地のイベントに絡めてテレビ取材が入ったりすると盛り上がって、旅館だけでなく、温泉組合などからも喜ばれる。インバウンドが消えた地方の温泉地で生まれた新しいマーケットです。ただ悲しいことに、全国の温泉を回って笑顔でPRしているのに、温泉に入る時間が全く取れないのは過酷です。

佐藤 笑。温泉にはミネラルや不純物も入っています。シャワーヘッドやホースは詰まらないのですか?

青山 一般のシャワーヘッドよりも穴が大きいので、詰まりを心配する必要はありません。特許を取った技術・構造で渦流を生み出し、ファインバブルミストを作っています。

佐藤 コロナ禍なんのそのですね。

青山 コロナだからと弱音を吐き、補助金がなければダメと言っているような会社は、コロナ後にいずれ消える運命です。どんな状況でも生き残る方法はある。経営はナマモノなので大胆に味付けを変え、戦略変更してそこに全力を注ぐだけです。

温泉プロジェクトミラブル・ミラバスを導入した熊本県山鹿温泉 清流荘。癒しの温泉×美容を打ち出したリピーターを増やした

5年後に経営を退くまでに将来の礎を

佐藤 青山さんは5年後に事業承継を考えられていて、成長企業ですが上場はしない方針だそうですね。

青山 僕の役目はあと5年、世界戦略の第一歩を踏み出すまでです。今は経営の最終責任者ですが、経営を退いたら一投資家として口を出さず、後任の相談にも一切乗りません。上場しない理由は、間違ったコンプライアンスに縛られないようにするためです。上場で資金調達や優秀な人材を採用しやすくなりますが、今も企業努力で売り上げは伸びていますし、来春は16人の優秀な新卒が入社するので必要ないからです。

佐藤 間違ったコンプラとは?

青山 われわれの使命は、グループに関与するすべての人々に感動と喜びを与え続けること。これを果たせなければ、会社の存在価値はなくなります。例えばお客さんの要望があれば、朝でも夜でも何時間でも付き合う。それで事がうまく運び、喜んでもらえるのがうれしいし、そこに売り上げは付いてきます。でも何でもかんでもコンプラに縛られて中途半端な仕事をすれば、お客さんから感謝も頂けません。社員みんなでお客さんに喜んでもらえる行動を取れば、売り上げを上げるのは簡単です。

佐藤 全社一丸となって、ですね。

青山 僕は世の中の要求に応え、喜んでもらうのが好き。50代の頃はおぼろげだった事業を続ける意味も、60歳を過ぎた今は分かります。われわれは公益資本主義を貫き、利益が出たら社会に還元していく。あとは、何か発言した時に世の中に影響を与える存在になる。3人で創業した会社が本質的な考え方はそのままに、今は100人体制となり、よりパワフルになっています。これが1千人、1万人になっても存続できる礎を、この5年でつくっておきます。

佐藤 休む暇がないですね。

青山 サラリーマンではないので、休まなくていいし、仕事が遊びですよ(笑)。みんなで働き、みんなで笑うから毎日楽しいんです。

「いつもパワフルな青山会長。大阪・関西万博でのサイエンスのコンテンツが楽しみです」(佐藤)