経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

11階建て木造建築にオーシカの技術を注入。「街に森を」で商機拡大ーオーシカ

オーシカ 社長 堀口和秀(ほりぐち・かずひで)

戸建て建築の壁や梁に使われる「合板」「集成材」は、複数の木の板を貼り合わせて成形されている。オーシカは、それらの成形に特化した木質用・接着剤のシェアがなんと50%を超える。日本の戸建ての約半分がオーシカに支えられている。

オーシカ 社長 堀口和秀(ほりぐち・かずひで)
オーシカ 社長 堀口和秀(ほりぐち・かずひで)

2025年に創立120周年を迎えるオーシカ。木質用・接着剤の製造と、それらを用いた木製建材の製造・販売が事業の2本柱だ。

「私たちの商品は基本的に人目に触れません。見えないところだからこそ品質にこだわり、磨き抜く。これが私たちの合言葉です」と堀口和秀社長は胸を張る。

「コロナ禍以降はリモートワークが増えて、ご夫婦共働きでそれぞれ個室が必要になって需要増となったようです。そうした生活様式の変化を取り込み、業界全体が好調に推移しています」

一方で、コロナ禍での課題もある。オーシカの製品は、顧客とキャッチボールしながら一緒に作り上げる
「オーダーメード品」が多いが、コロナ禍で顧客とのコミュニケーションが密に取りづらくなった。

さらに、石油化学原料や木材原料の高騰など、原材料費の価格高騰が深刻だ。東南アジアの国では、環境問題の観点から木材輸出を減らす動きもある。世界の環境が変化している中、脱炭素社会を目指す日本政府の後押しもあって、国産木材を使う動きが出ているのだ。

「日本の人口が減っていけば自ずと、戸建ての着工件数自体は減っていきます。そこで私たちは住宅以外の需要を取り込む必要があります」

07年に建築基準法が緩和され、日本で木造のビルが次々と建てられるようになった。大林組が建築を進めている自社用の研修施設は、主要構造部分の柱、梁、床、壁の全てが木造の11階建てビルだ。ここにオーシカ製の木質用・接着剤が使われ、大活躍している。

他にも、木材を多用した都内にある世界屈指の競技場の建設にも、オーシカの接着剤が使われた。

「社員に向けて『街に森を作ろう』と声を掛けています。木造ビル建設資材などの非住宅分野へ、活躍できる場を私たちも広げていきます」

同時に、石油化学由来の原料を天然由来の材料・リグニンに15%置き換え、バイオマスマークの認証を取得。カーボンニュートラルの観点からこれをさらに拡大していく。

「次の世代のために木材の可能性を広げていきたい。今後は東南アジアを中心に海外展開も進めます」 

会社概要
設立 1943年3月
資本金 4億1,785万円
売上高 251億円(2021年3月期)
本社 東京都板橋区
従業員数 160人
事業内容 接着剤、工業薬品、合板、木材加工品の製造販売・営業
http://www.oshika.co.jp/