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24時間で小さな家を最新3Dプリントで製造する-ICON

初めて建てた家

国際的な都市からより人里離れた農村部まで、現在世界中で手頃な価格の住宅が不足しており、推定12億人に影響を与えている。小さめの家やマイクロアパートなどはいくつかの潜在的な解決策であり、少なくない企業が住宅建設のための3D印刷技術を設計している。しかし今、大きな屋根、アーチ型のマスターベッドルームなど、ユニークなカスタマイズ建設を行い、手頃な価格で販売する、革命的な偉業を目指す米国企業が注目されている。 記事作成=hackjpn

圧倒的に短期間で建設できる耐久性の強い家

オースティンに拠点を置く建設技術会社ICONは、より多くの家族に質の高い住宅をもたらすことができる独自の3D印刷技術と材料を開発している。2018年オースティンで開催された大規模なイベントであるSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)で、初めて3Dプリントされた家を披露した。

3Dプリントされた家は、バルカンIと呼ばれるデバイスによって壁層を層ごとに印刷しながら約48時間で製造したという。現在、同社は一戸当たり45万ドルから販売しており、2~4ベッドルームの1階建てを印刷している。一戸当たり5~7日間の印刷時間を要し、1,000~2,000平方フィートの家を製造する。

3D印刷プロセスで使用されるのは「Lavacrete」と呼ばれる独自のセメント材料で、従来の建築材料よりも耐久性があるそうだ。この印刷材料は世界中で簡単に入手できる基本材料で構成されているという。

共同創業者でCEOのJason Ballard(ジェイソン・バラード)氏によれば、同社がコンクリートを素材に選んだのは、「地球上で最も弾力性のある素材の一つ」だからだという。

初めて完成させた家
同社が初めて完成させた家
https://www.iconbuild.com

家がない人にも持続可能な家を提供

この家は火災と洪水の両方に耐え、より安全で弾力性があることが証明されている。これまでに米国とメキシコで24軒の家を印刷しており、うち7軒はホームレスを収容するために3Dプリントされた。

17年に創立されたICONの共同創設者であるJason Ballard氏、Evan Loomis氏、Alex Le Roux氏は、非営利のNew Storyの共同創設者であるBrett Hagler氏と出会い、共に3D印刷と新しい建築技術を採用して建設業界を変革した。彼らには、手頃な価格で耐久性があり、持続可能な家を困っている人々に提供するという共通の使命があるのだという。

印刷部分(屋根は3D印刷されていない)のコストは約10,000ドルで、一般的な同様のサイズと品質の家と比べ、平均コストをはるかに下回っているという。約2年間で開発したバルカンI 3Dプリンタは、重さ約2,000ポンドである。

同社CEOは、発展途上国専用の3D印刷技術の設計に焦点を当て、日射や乾燥した天候、材料の入手可能性を考慮しながら、バルカンIはモバイルを用いて現場で継続的に印刷することを目指したと述べる。

また「曲線やその他の不均一な形状のように、3D印刷におけるいくつかの可能性を誇示したかった」と述べている。例えば、同社の製造する家は多くの場合長方形であり、美しい外観を与えるために湾曲したコーナーを設けている。3Dプリントされた外壁の上には、十分な日光を浴びるための窓枠があり、屋根のある小屋も設けている。

この家を作りながら事実上の廃棄物ゼロを達成している。 耐久性の高さだけでなく、メンテナンスの必要性が少なく、エネルギー効率が高い家には、ウォーターシステム、ソーラーパネル、エネルギー効率の高い家電製品などの持続可能な機能を組み込むことも可能だ。

建設の最終時、提携しているAlchemy Buildersと協力して、屋根、窓、ドア、電気配線、配管設備など、家の仕上げを行う。

開発中のバルカンⅡは、バルカンIの2倍の大きさと速さで、約2,000平方フィートまで家を印刷することができる可能性を示している。今年発表予定のバルカンⅡ3Dプリンタは、個人が24時間で自分の家を印刷できるようにするという目標を掲げている。

設計自由度の高い3Dプリンタ住宅で約2,300億円の評価額

ICONは、Tiger Global Managementがリードするラウンドで1億8,500万ドル(約213億円)の調達を受け、総額4億5,100万ドル(約519億円)を株式で調達したことになる。

これまで、Norwest Venture Partners、8VC、Bjarke Ingels Group、BONDなどの投資家が含まれている。同社の評価額は20億ドル(約2,300億円)に近づいている。

20年、ICONは非営利団体のパートナーであるNew Storyと共に、メキシコで3Dプリントによる住宅を納入した。また、テキサス州オースティンでは、非営利団体Mobile Loaves & Fishesと共同で、長期にわたりホームレスとなっている人々の住宅を完成させた。

その3Dプリント技術により、従来の建築方法よりも早く、廃棄物も少なく、設計の自由度が高い「弾力性とエネルギー効率の高い住宅」を実現できると宣伝している。米国では多くの都市で深刻な住宅不足に陥っている。手頃な価格の住宅、特にオースティンのように住宅価格の中央値が過去1年間で46%も上昇したような市場では、その必要性がこれまで以上に顕著になっている。

地球上だけでなく、NASAと協力して最終的には月と火星に3D印刷された建物を置くという目標を持っており、宇宙における建設システムの研究開発にも現在取り組んでいる。

ICON3D
出所:hackjpn datavase.io