経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

働き方改革の先駆者が導入した「取締役公募制」の意図するもの サイボウズ 青野慶久

青野慶久 サイボーズ

サイボウズ 社長 青野嘉久

(雑誌『経済界』2022年9月号より)

「100人100通りの働き方」で知られるサイボウズ。働く場所と時間を自分で選ぶことができる勤務体系は、コロナ禍でもその威力を発揮した。

多くの企業が付け焼き刃的にテレワークを導入したため生産性を落としたが、サイボウズの場合、2010年からテレワークを取り入れていたため生産性は落ちず、むしろDXの進展の追い風もあり、売り上げを伸ばし続けている。

常に新しい人事制度や会社のあり方を模索してきたサイボウズだが、さらに話題を呼んだのは、昨年から始めた取締役の社内公募制だ。

通常、社員から取締役に就任するには社歴と実績が必要だ。ところがサイボウズの場合、社歴などは一切関係なく、新入社員でも立候補できるというから驚きだ。実際、第1回目の昨年の株主総会では、公募した中から青野慶久社長以下17人の取締役が選任されたが、その中の1人は20年新卒入社1年目の社員だったという。

サイボウズが取締役公募制に踏み切ったのは、「社員は誰もが取締役の役割を担う」との考えに基づくもの。そのために徹底的に情報をオープンにし、一人一人が自立心を持って質問責任を果たし、質問された側が説明責任を果たす。それにより株主に選任された取締役のみによるガバナンスを超える組織が実現できるというのがこの制度の根底にある。

「異端」と思われてきたサイボウズの働き方が、徐々に日本の標準となりつつあるように、ガバナンスでも新しい波を起こしている。