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インドで大規模実験をスタート。デジタルマネーで世界を変える ドレミングジャパン 高崎義一

ドレミングジャパン 高崎義一

世界中から集められた革新企業が入居するロンドンの「レベル39」に日本企業として初めて入居が認められたドレミング。自動徴税によって創った財源を活用して公共事業を行い、失業者を減らすという同社が提唱し英国政府機関が支援する貧困救済事業の実証試験が、いよいよインドのテランガーナ州でスタートする。(雑誌『経済界』2023年1月号より)

ドレミングジャパン 高崎義一
ドレミングジャパン 代表取締役CEO 高崎義一(たかさき・よしかず)

人件費削減と生産性向上を実現する給与管理サービス

 人事、勤怠、給与、振込、年調といった多彩な機能がすべて入ったワンストップシステムを世界に展開するため、2015年に福岡で創業されたドレミングジャパン。今では英国、ベトナム、インド、サウジアラビアに展開する福岡初のグローバルフィンテック企業だ。

 創業者である高崎義一氏は熊本で生まれ、高校卒業後は大阪で30歳まで和食の板前として働いた。その後、兵庫でモスバーガーのFC店を経営。順調に成長していたが「阪神・淡路大震災で被災し、常連客も家が全壊になって亡くなられた方もいました。自らも窮地に陥りましたが、生かされた命で今後はたった一度の人生を悔いなく生きる、そして職人、技術者、フリーランサーが報われる社会を創るために行動する、と決めました」(高崎氏)

 1995年にキズナジャパンという新会社を設立した高崎氏の最初の行動が、JR東日本の松田昌士会長(当時)へのアプローチだ。

 「同社が計画していた交通系電子マネー『Suica』を一般店舗でも使えるようにしてほしい、と松田会長宛に手紙を書いたところ、秘書がシステム開発担当会社の社長を紹介してくれました。その社長にプレゼンをした結果、内容に感銘していただいて他の会社も合わせ計2億円以上の出資が決まりました」

 1999年に日本初のクラウド型HRサービスを開始。2002年には「ソフト化大賞」を受賞している。

給与のデジタルマネー払いを首相官邸で提案

 JRに提案した内容は、銀行が夜間金庫を閉鎖し始めてから全国の飲食、小売店で泥棒の被害が多発していることや、レジミスで売り上げが合わない場合、釣り銭の用意、売り上げの入金の手間などを考えると電子マネー社会が良い、というものだ。さらに、学生アルバイトが春、夏、冬休みに働いても休み期間中に使えない後払いより、当日に電子マネーで払ってあげたい、という提案も支持されたという。

 「首相官邸で、給与の現金払いという時代遅れの法律はやめてデジタルマネー払いを可能にしましょう、と提案しました。銀行口座が開設できない訳ありの人を見捨てない、現金犯罪の少ない社会をつくりたいという内容に、当時の麻生財務大臣が共感し全面的に応援すると言われ、その年の秋に閣議決定されました」

 高崎氏の次の行動は、発展途上国で起こっている問題の解決に向けた取り組みだ。現在、途上国では失業者の増加にともなってスラム街が急拡大している。ゴミや汚水で川や海が汚染され、排ガスによる空気汚染も深刻な状況だ。公共事業や環境改善事業が拡大すれば失業者を減らすこともできるが、財源がない。

 ドレミングが考案したのは、ケニアで生まれた銀行口座の代わりに電話番号を口座にした送金、決済システム「M‐Pesa」を活用した、現金を廃止して給与をモバイルマネーで支払い、チャージされたその給与から直接徴税が可能なシステムだ。モバイルマネーで受け取った給与で買物や決済をした瞬間、徴税すれば政府に新たな財源が生まれる。

 「都会しか銀行がないような途上国では、自主的に納税する人は少ないのが現状であり、そうした問題を解決したいと思ったのがこのサービスの原点です。給与と納税データを使った、まったく新しい金融システムをインド工科大学ハイデラバード校と研究開発し、23年からテランガーナ州で実証試験がスタートします。納税している人にご褒美になるようなサービスを提供したいですね」

デジタルマネーによる金融革命の実現を目指す

 そして高崎氏が現在、注力しているのが中小企業経営者からの管理業務の外注化だ。

 「給与振込日、取引先支払日に担当者がコロナに感染したり、濃厚接触者となって休んだりするケースで、送金操作の経験がない経営者によって多くのトラブルが発生しました。また人手不足の昨今、DX化を急ぐと同時に本業に集中できる環境を提供するため、給与システムを中小企業に提供するだけでなく、士業事務所などへの提供も進めています」

 08年にサービスがスタートした、働いた分の手取り額をいつでも本人が引き出せる「My Salary」や、仕事の難易度で時給が変わったり、手当や手取り額で決済ができたりする世界唯一の機能を次々と開発することができたのは、高崎氏自身が使う側のニーズを体験してきたからだろう。

 「こんなことできないかなぁ、と思ったら行動することが大事だと考えています」という高崎氏。キズナジャパンとドレミングは22年1月に合併。従業員は全員新会社に移籍させた。売り上げの入金時にデジタルマネーを関係会社、外注先、委託者に自動分配するレベニューシェア金融を使った金融革命の実現に向け、独自の取り組みを加速する。 

会社概要
設立   2022年1月(キズナジャパンと合併)
資本金  9,600万円
本社   福岡市中央区
事業内容 勤怠管理・給与計算システム、給与即時払い、デジタルマネーによる給与支払い・決済などのサービスを開発・提供
https://www.doreming.com/ja/