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政権与党のNo.2に聞く「自民党幹事長の本音」--石破茂氏(自民党幹事長)×徳川家広氏(政治経済評論家)

石破茂氏

自民党が政権に返り咲く直前の総裁選で、第1回投票と地方票で安倍晋三氏を圧倒した石破茂氏。安倍内閣発足後は幹事長に就任し政権をがっちり支えてきた。政権与党のNo.2である石破幹事長に徳川宗家19代の政治評論家、徳川家広氏が鋭く迫る。(写真=葛西 龍)

 

0424_20140513_Kou_05   石破茂自民党幹事長については、政界有数の国防通ということで、憲法改正についても集団的自衛権見直しについても歯切れが良いのだろうと想像していた。実際はそれとはかなり異なって、21世紀の日本の政治家と思えないほどに慎重に言葉を選び、話しながらも熟考する人物である。そして考えながらの発言の合間に、時たま暖かいユーモア感覚が顔を覗かせた。

石破茂氏(自民党幹事長)×徳川家広氏(政治経済評論家)ーー父は内務官僚、鳥取県人としての誇り

徳川 鳥取県のお生まれですか?

石破 いえ、東京です。生まれたのは東京、昭和32年2月ですが、父親が33年の4月に鳥取県知事になりましたので、東京の記憶は全くない。幼稚園、小学校、中学校までは鳥取です。

徳川 著書の『国防』によりますと、お父さまから吉村昭さんの小説を「読みなさい」と渡されたということです。よく本を読む少年だったのでしょうか。

石破 よく読みました。母親が、自身国語教師だったということもあるのでしょうが、結構教育熱心な人でしたので。小学校の頃は毎晩1時間くらい、偉人伝の朗読をさせられました。中学に入った時に、中1の夏だから6月くらいかな。吉村昭の『零式戦闘機』というハードカバーの本を、「これを読め」と言って、何の説明もなしにくれました。まあ、プラモデルが大好きな子どもでもあったので、きっと興味を持つだろうと思ったんでしょう。実に面白かったですね。で、その次には同じ吉村昭さんの『戦艦武蔵』を買って来て「これを読め」と。これも面白かった。

徳川 お父さまは『零式戦闘機』でもって、何を伝えようとしたのでしょうか。

石破 父は戦争中のことは何も語らなかったですから、何を伝えようとしたのかは、分かりません。『零式戦闘機』も『戦艦武蔵』も、主人公はもの言わぬ飛行機であり、もの言わぬ船、なんですね。特に零式戦闘機の場合、これがなければ、あの戦争にはならなかったのではないか。明治維新後まだ60年とかその頃に、世界最高水準の戦闘機が、登場し、最初は向かうところ敵なしだったのが、とにかくギリギリまで軽量化をして、防弾性能がほとんどゼロになったわけです。非常に軽快俊敏に飛ぶんだけれど、グラマンが2機でこっちが1機、というような時には、必ず落とされる。で、最後はバタバタ落ちて行ったわけですよね。日本というのは何なんだろう、日本人とは何なんだろうと、私はその2冊を読んでしみじみと思うところがあって、だから父としては「お前はお前で、自分でこれを読んで考えてみろ」ということだったんでしょうね。

徳川 ゼロ戦ですと、今話題の『永遠の0』は読みましたか。

石破 読みません。映画も見ておりません。

徳川 お父さまの石破二朗さんは鳥取県知事を務め、田中角栄さんの親友でいらっしゃった。

石破 父は内務官僚でしたが、戦時中は陸軍の司政官として、スマトラの統治をやっていたんですね。戦後は戦災復興院とか特別調達庁に行って、最初に警察予備隊が発足するときに深くかかわりました。これは田中角栄先生が親父の葬式の弔辞で言ってくださったことですが、父が建設省を辞める時、東京都知事の話があった。でも父は「請われれば鳥取の県知事はやるが、東京都知事はやらない」と言ったそうです。理由を聞いたら、「私は鳥取県人なんだ。鳥取で生まれて、鳥取で育って、鳥取で死ぬのだ。小さくても貧しくても、鳥取は私の故郷なんだ」と。

石破茂氏(自民党幹事長)×徳川家広氏(政治経済評論家)ーー日中関係、中国との軍事衝突を避けることはできる

徳川 日中関係については、どう見ていますか?

石破 どうやって、この状況を打開できるか。どちらも国内政治を抱えていて、この状況を憂いている人たちはたくさんいる。どうしたらいいのかということを必死で考えている人たちが少なからずいる。しかしその努力が国内政治的には非常に評価されない。日中ともに、です。そこで打つ手がないまま、ただただ時間だけが過ぎているという状況だと思っています。中国には何度も行っておりますが、行くたびにしみじみと思うのは、中国を統治するのは、日本を統治することの百倍難しい。広大な国土、世界最大の人口、そして政治は共産党一党独裁で経済は資本主義という世にもまれなるシステム。どこまでサステイナブルなのか、誰にも分からない。貧富の差の拡大と権力、資本主義は癒着します。それを除去するために先進資本主義諸国は努力してきて、中産階級を増やし、安定的な経済成長を成し遂げたけれど、中国には今のところその過程がなく、中産階級は期待されるほど増えていない。その前に経済がピークアウトすると将来には非常に不安が生じるわけです。だから、そうならないために日本もできることがあるはずだという話をしていかなくてはならないですよね。

石破 茂(いしば・しげる) 1957年生まれ、鳥取県出身。慶応義塾大学卒業後三井銀行に入行。86年衆議院議員に全国最年少で初当選。現在9期目。防衛庁長官、防衛大臣、農水大臣を歴任。2012年自民党幹事長に就任。著書に『国防』『日本人のための集団的自衛権入門』など多数。

石破 茂(いしば・しげる)
1957年生まれ、鳥取県出身。慶応義塾大学卒業後三井銀行に入行。86年衆議院議員に全国最年少で初当選。現在9期目。防衛庁長官、防衛大臣、農水大臣を歴任。2012年自民党幹事長に就任。著書に『国防』『日本人のための集団的自衛権入門』など多数。

徳川  中国脅威論についてはどう考えていますか。

石破 安全保障屋としては、台頭する中国の軍事力に対して、日米同盟、米韓同盟、台湾関係法による台湾の防衛力などを、どう強化してバランスさせるか、ということを考えるわけです。軍事バランスを維持することが、軍事衝突を避けることにつながるのであり、その努力を怠ってはなりません。

石破茂氏(自民党幹事長)×徳川家広氏(政治経済評論家)ーー総選挙の戦い方、いかにして選挙に勝つかを叩きこまれた

徳川 幹事長としては総選挙を1回、参院選を1回、指揮していますが。

石破 私は政調会とか総務会関係の経験はありますが、幹事長関係は初めてなんです。政治家になる前、最初に入ったのが、田中派の派閥事務所ですよ。昭和58年3月、田中先生は衆参ダブルを中曽根総理にさせようとしていて、田中派事務所も3〜6月まで同日選挙の準備をやっていました。でも中曽根さんは、参議院選挙だけを実施します。その後、京都の2区で8月、補欠選挙があって、私はひと夏舞鶴に泊まり込んで、今度は選挙を現場でやりました。もちろん、下働きの下働きですけれど、田中派から送り込まれた職員は私1人で。それから12月にはロッキード選挙があるわけですよ。自民党が惨敗する中で、田中派だけが議席を伸ばしたんです。そうやって、選挙とはどういうものか、いかにして勝つかを凝縮して、叩き込まれたところはあります。歩いた家の数だけ、握った手の数だけしか票は出ないし、どんなに中央が力を入れても、候補者が駄目なら落選する、候補者が良くても中央が駄目なら落選するし。勝負はこの次の選挙だと思っています。その時の幹事長が誰かは知らないが、大量当選、大量落選の連鎖を断ち切らないと日本が駄目になる。自分が幹事長でいる間に、当時の田中派が持っていた選挙のシステムを、自民党全体に定着させないと。

徳川 最近のアメリカの政治学者の研究によると、中選挙区制の最大の特徴は、政党が過半数をとるためには、各選挙区で2人以上の候補者を立てなくてはならず、同じ政党の候補者同士で政策論争をするわけにはいかなくなり、サービス合戦をすることになる、ということです。

石破 政策論争ができないなんていうことはなかったと思います。平成2年ですから今から24年も前のことになりますが、私にとっては2回目の総選挙ですね。初めての総選挙では、私は記録的最下位で当選していましたので、2回目は絶対落ちると言われていたのですが、私はその時、「消費税絶対賛成」を掲げて選挙を戦ったんです。他の自民党候補者は、「私は自民党だけれども消費税には反対だ」とか、消費税には触れないという態度でした。でも私は、圧倒的な票を頂いて当選しました。中選挙区制にすれば政策論争ができないというのは、やらなかっただけの話ではないかと思います。

 

石破茂氏(自民党幹事長)×徳川家広氏(政治経済評論家)ーー憲法改正について、日本の価値を米国に認めさせる努力を

徳川 幹事長は改憲派ですか。

石破 そうです。ただ手を触れてはならないものと、国民投票で問うていいものがあると思います。それに、わが国の憲法には、独立国家に必要な軍の規定と非常事態の規定がない。それは独立国家としては当然、整備されてしかるべきものでしょう。これは私の信念に近いものです。

徳川 最新の著作である『日本人のための集団的自衛権』を読んでいますと、嫌な例ばかりが出てきます。

石破 集団的自衛権の話をすると、必ず「世界の裏まで行ってアメリカと一緒に戦争をするんだ」って話になります。しかし集団的自衛権は国連憲章に定められた、すべての国が持っている自衛のための権利であって、そもそも「戦争をする権利」ではありません。そしてまた行使にも、ある程度の限定とハードルを設けるべきだという話です。

0424_20140513_Kou_04徳川 日米関係ですが、アメリカには本当に日本を守る気があるのでしょうか。

石破 アメリカは日本に守る価値があると思えば守ります。そうならなかったからといって「ひどい」とか「見捨てたな」とか言っても、それは言うほうが悪い。日本に守る価値があると思わせる努力をしなければ。

徳川 アメリカにとって日本の価値が減じているのでは。

石破 ある部分は減り、ある部分は増えている、ということでしょう。陸海空自衛隊は、それぞれ特化した分野で相当に高い能力を持っている。そういう意味での利用価値はあるし、後方基地としても、これだけ治安が良く、高度な工業力を持ち、友好的であるという価値は、昔も今も変わらないでしょう。

 

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