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犯罪の凶悪化で銃規制をめぐる寄付合戦が勃発

津山恵子のニューヨークレポート

米国市民が保有する銃は3億丁を超す

ニューヨークで開いた集会

銃犯罪の犠牲者の肉親がニューヨークで開いた集会(撮影/筆者)

 「ザ・ガン・リポート」は、米有力紙ニューヨーク・タイムズならではの、野心的なブログだ。2012年12月、コネチカット州ニュータウンで、多数の児童を含む26人が犠牲となった小学校銃乱射事件の後に始まった。コラムニスト、ジョー・ノチェーラ氏とアシスタントが毎日、前日あった米国内の銃による殺人事件記事を抜き書きしているブログだ。

 ノチェーラ氏らは毎朝、グーグル・ニュースで検索し、ローカル新聞・テレビ・ラジオ局が報道した銃犯罪記事を抜き書きし、掲載している。同氏は、リポートが始まって1年あまりたった今年初め、これまでに分かった事実をまとめた。

 それによると、同氏らは毎日20〜30件の銃による殺害をリポートしてきた。しかし、それを年間件数に換算すると、米疾病対策センター(CDC)が発表した年間3万2千件という銃に絡む死亡件数にはるかに及ばない。センターの調査には、銃による自殺も含まれるが、報道されない事件がいかに多いかという事実だ。

 また、リポート開始後、すぐに明らかになったショックな事実は、子どもが子どもを、あるいは大人が子どもを誤って銃殺してしまう事件が多いということだ。これを知った銃所有の推進派の読者が、銃を購入する際に免許や指導が必要だと信じるに至った。リポートの面目躍如とも言える。

 ノチェーラ氏はこう締めくくる。

 「米国には銃が3億丁以上あり、すぐには変わらないが、リポートを読むと、銃がもう少し少なければ、死亡者の数はもっと少なかったはずだ。映画館で銃殺事件を引き起こした若者も、殴り合い程度ですんだはずだ」

 

全米ライフル協会に元NY市長が真っ向勝負

 銃がなければ、犯罪はもっと軽度ですんだ、という事実は、恐ろしいことに、米国ではあまり認識されていない。それほど、銃を使うと簡単に犯罪を起こせる、というのが当たり前になっている。

 カンザス州では4月13日の日曜日、コミュニティーセンターなどで銃撃事件があり、中学生を含む市民3人が死亡した。

 AFP通信によると、犯人のフレイジャー・グレン・クロス容疑者は白人男性。反ユダヤ主義に傾倒し、発砲する前、人々に対してユダヤ人かどうか聞いたという。ところが、殺害された3人は、クロス容疑者と同じ、キリスト教信者で、ユダヤ人ではなかった。「銃なかりせば」という悲劇の1つだ。

 この事件は、異なる人種や宗教に対するヘイト・クライムとして、注目された。クロス容疑者が、白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン(KKK)」の関連団体幹部でもあったからだ。

 悪いことに、事件の翌14日には、ユダヤ教の「過ぎ越しの祭」が始まった。旧約聖書の時代、ユダヤ人が差別から逃れるため、予言者モーセに導かれて、エジプトから脱出したことを思い出す、ユダヤ教では重要な祭だ。

 ニューヨークには、全米のどの都市よりも、ユダヤ人住民が多く、人口の2割近くを占める。このため、反ユダヤ主義的な凶悪事件が全米、あるいは世界のどこかで起きると、テロやヘイト・クライムを警戒し、市内でユダヤ教関連施設に、警官やパトカーが張り付き警備する。市長や市警本部が記者会見を開き、市民に警戒を呼び掛けることすらある。

 ニューヨークの前市長で億万長者のマイケル・ブルームバーグ氏は事件から2日後の15日、銃による犯罪防止で資金5千万㌦を自ら出し、今年の中間選挙に使うと発表した。銃規制に反対する強力な銃のロビー団体、全米ライフル協会(NRA)に対抗するためで、NRAが「(銃規制など)誰が気にしているのか。銃規制を推進するやつはとっちめる」として、規制に賛成している議員を落選させるのに、キャンペーン資金を投入するのと同じ手段を選んだ。

 「われわれもNRAを怖がらせなくてはならない」とブルームバーグ氏。銃の保有を権利として主張するNRAやその支持者と真っ向から対立し、銃規制をめぐって、日本円で億単位の巨額が動く「出資合戦」だ。しかし、ノチェーラ氏が言うように、3億丁の銃はすぐにはなくならない。

 

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