経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「ライフスタイルの変革を促し 成熟都市の未来モデルを示す」--猪瀬直樹(東京都知事)

猪瀬直樹氏

―― 2回目のオリンピックで変わる点は。

猪瀬 2回目、3回目という時代になると、成熟した都市での開催になります。成熟した都市での開催は、1回目の時のようにはなりません。インフラも整備され、ホテルも十分にあり、ある程度治安が良いという、成熟した都市での開催になります。

 都市モデルで考えると、先進国の都市における成熟とは、産業革命が終わって議会が成立し、そして中産階級が出てくる状況です。そういう成熟に達しない途上国が先進国のモデルを追いかけていく。だからこそ途上国では大気汚染などの公害が発生したり、交通渋滞が起きたりします。一方、先進国の都市は公害など途上国の問題はだいたい克服してきています。そして少子高齢化など、成熟社会での新たな課題を抱えています。

 成熟した社会の中で、新しいモデルというものは何なのか。途上国の都市は、先進国の都市を追いかけてくる。北京は大気汚染が深刻ですが、東京は既に克服しています。東京で解決したことを取り入れていけば、北京も良くなってくるでしょう。では途上国の課題を全部やり尽くしている都市は、次の課題は何かという新しい課題を見つけたモデルを作っていく、課題を克服するモデルを作らなければいけません。そういう意味では、東京の場合で言うと、誰でもスポーツをやれるような環境をつくりながら、少子高齢化をどうやって克服していくか。いろいろな課題があります。

 今度の東京オリンピックはSNSのようなものがどんどん発達していく中で、どういう未来像を描けるかが重要になります。それをこれから7年かけて示していかなければいけないと思います。それをうまく逆手に取れば中継技術にしても、今は4Kや8Kのテレビが言われていますが、全く違ったものが出てくる可能性はあります。だからこそ今回の東京オリンピックは「Discover Tomorrow」を掲げています。未来の何かを見つけるという課題があります。

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オリンピックを機にライフスタイル革命を起こす

―― 3回目だった前回のロンドンでは、コンパクトな五輪を謳いながら結果的には予想以上にコストが掛かったという批判がありました。予算超過は東京でも心配されています。

猪瀬 なぜロンドンで予想以上にお金が掛かったのか、もう一度検証したほうが良いと思います。ロンドンの場合は、ダウンタウンと比較的寂れた地域とで開催しました。寂れた場所にも会場を持っていき、そこを再開発したことで、その開発のコストが少し余分に掛かったのだと思います。

 一方、東京での開催はエリア的に比較的公平に分配されています。例えば、湾岸エリアに恒久施設を10個造ります。有明テニスの森の改修に加え、水泳、バスケットボール会場などは、しっかりした施設ができますので、大会後もこれらを拠点に競技が盛んになっていくと思います。

 それから、船の科学館の近辺に豪華客船の埠頭を造ろうとしています。豪華客船で来る海外からのお客さんは、横浜の大さん橋に着きますが、横浜は遠い。今、豪華客船は大井水産物埠頭に着きますが、そこはあくまで貨物埠頭です。昔は晴海に来ていましたが、今の豪華客船は大型化して10階建てのホテルのような感じなので、レインボーブリッジの下を通れません。また、今の豪華客船はお金持ちだけでなく、普通の人も乗っていますから、豪華客船のお客さんが来た時に対応できる態勢を考えていく必要があります。豪華客船の埠頭の近辺にスポーツ施設と合わせ、カジノや劇場などの娯楽施設や国際展示場なども設けることも見えてくると思います。

―― これから7年間かけて取り組む課題は。

猪瀬 僕はオリンピック招致の前から「心のデフレ」という言い方をしていますが、オリンピックが決まって、みんな明るくなったでしょう。希望ができたじゃないですか。消費税の増税が決まりましたが、オリンピックが決まっていなかったら、大変なことになっていたと思います。消費マインドがどこまで高まるかが大事です。オリンピックという明るい話題の中で、時間市場の開拓などもやっていくと、消費は増えていくと思います。

 オリンピックの経済効果を言う場合、単純な積み上げ方式による算定では3兆円になります。しかしそれだけでなく、今は気持ちが晴れてきている状態ですから、いかに消費を増やしていくかを考えると、経済効果はもっと違う形で出てくると思います。

 まだ消費は上向いていませんが、人々のライフスタイルが変わってくると、お金の使い方も変わります。そういうことも含めて今後の見通しがオリンピックで少し見えたのかなと思います。人々がライフスタイルを変えるためには、先ほど言った、時間市場の開拓をやったら良いと思うし、まず渋谷と六本木間に深夜バスを走らせます。また、お台場にカジノを造る構想もあります。

 オリンピックまでにどういうものを作り上げていくかで、オリンピックも決まると思います。そのためにはライフスタイル革命が起きなければ駄目です。

 
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