経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

自分の何を変えるか。何が変わり得るか。――アドラー心理学『嫌われる勇気』から学ぶもの

富裕層専門のカリスマFP 江上治

アドラー心理学に対する誤解

 前回、精神分析者アドラーの『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)に触れたところ、読者や周囲の人たちから、「自分も読んでいる」と反応が多数あった。さすがベストセラーだ。ただ、私の周囲の読者の中に、嫌われ者になれという本は初めて読んだ、という人がいたので、それは誤読だとたしなめた。

 あの本には、そんなことは1行たりとも書いてない。自由になりたければ、他人の思惑や評価を気にするな、嫌われることを恐れるな、と言っているにすぎない。嫌われたり、承認されないことを恐れないのは、自分の生き方を貫くためのコストだというのだ。

 アドラーの考えを俗世間に引き戻したとき、カギとなるのは、他人と自分、どちらに視線を向けることが重要かだ。

 そもそも、これも前回書いたことだが、世の中には「変えられること」と「変えられないこと」がある。

 「他人」は変えられない。他人の評価や思惑も変えられない。自分を嫌っている人の心も変えることはできない。

 「他人」の評価や思惑を変えようと迎合しても、彼らは変わるとは限らない。もっと激しく嫌われるかもしれない。

 だが、「私」は変えられる。自分の意志次第で、「私」を変えていくことはできる。

 年収1億円の流儀で、このことを考えてみよう。

アドラー心理学の教え「人生のカードは常に自分が握っている」

 とてつもなく稼ぐ人たちも、初めから順風満帆だったわけではない。苦闘の時代はお約束のように経験している。

 創業10年余りで年商200億円の健康食品会社をつくり上げたK社長は、サラリーマン時代、伝説的に稼ぐ営業マンだった。

 常に売り上げトップ。

 当然ながら妬まれて、一番業績の良くない支店に飛ばされた。内部は、不満とコンプレックスとやる気のなさに満ちている、最下位支店の支店長である。外部からの評判もいいはずがない。

 ここでK社長はどう対応したか。他人(外界)と自分、どちらに視線を向けたか。

 敢然と自分(内部)に目を向けたのである。取引先から社員、女子社員、掃除のおばさんに至るまで、前任の支店長のやり方で直すべきこと、みんなが迷惑したこと、嫌いなところ、今後はこうしてほしい点、徹底的にヒアリングを行ったのだ。

 その結果、支店の業績不振がどこに由来するかが明瞭になった。マイナスの理由がはっきりすれば簡単だ。真っ先にそこを改善して、急速に業績を回復させたという。

 仕事がうまくいかない、会社の(店の)業績が思わしくない、といったマイナスの局面に立ち至ったとき、人間、悲しいことに他人(外部)に視線を向けがちだ。時には他人(外部)のせいにする。

 しかしどんな場合も、いつの時代でも、他人(外部)は変えられない。変えられるのは自分だけ、という原則がある。

 中国地方の中核都市の有名美容室でナンバーワン店長だったHさんが、事情があって妻の故郷で店を開くことになった。何とかここで、店を成功させなくてはならない。

 技術はむろん抜群なHさんは、宣伝などに寄りかかることなく、内部に目を向け、接客マナーと店舗の清潔さを徹底した。トイレは自分で掃除。それも道具は使わず、素手で隅々まで磨き上げた。今では年商20億円を超える美容室グループのオーナーである。

 アドラーは、人生のカードは他人に委ねてはならない、常に自分が握っていなくてはならないと言っている。

 ここで一番の要点となるのは、自分の「何を変えるか」「何が変わり得るか」の、見定めだ。ここを間違うと迷路に入るから要注意だ。

人生のカードを他人に委ねる生き方は成功から最も遠い。

 
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