経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

事業者同士の力を束ね、「共創の力」で日本に本当の豊かさを築く 阿比留章雄 クムクム

クムクム 社長 阿比留章雄

従来の資本主義モデルに陰りが見える今、未来を切り拓くのは地域の事業者の「共創の力」だ。クムクムはアナログとデジタルを融合し「道徳ある経済分配戦略」を実現。それはホモ・サピエンスが助け合い、生き延びた叡智に通じる。〝人を資本に置く〟「共創の力」こそ豊かな日本をひらく鍵となる。(雑誌『経済界』2025年12月号より)

阿比留章雄 クムクムのプロフィール

〝人を資本に置く〟ことで日本を動かす

地域の事業者がつながり合い、新しい力を生み出している。

巨大企業中心の従来型資本主義は、いまや限界を迎えつつある。終身雇用の言葉も形骸化し、時代は「個の時代」へと移り変わっている。求められているのは、地域の事業者が力を束ね、共に未来を切り開く新しい仕組みだ。

クムクムが推進する「BUILDER JAPAN PROJECT」が、その受け皿となる。同社は、資本主義の根幹にある競争ではなく協力と分かち合いを基盤にした「道徳ある経済分配戦略」を展開し、全国に100万超の事業者が参加する新しい資本主義モデルを目指している。

その舞台となるのが共創型ECプラットフォーム「ツクツク!!!」だ。人と人の縁というアナログ要素とインターネットというデジタルの仕組みを融合させ、事業者同士の縁のつながりの中、皆の商品やサービスを皆で集めて皆で売り、収益を皆で公平平等に分かち合うエコシステムを実現している。既に1万社超の事業者が口コミを通じて参画し、経済のみを資本としている現代資本主義の中、「人を資本に置く」という理念に共感の輪が広がっている。

この仕組みを担うのが「ビルダー」と呼ばれる存在だ。ビルダーとは、会社に雇われる社員ではなく、自らの事業を持ちながら共創ネットワークに参画する独立事業者のことを指す。一般的な販売代理店ではなく、「五方よし」の精神(売り手よし・買い手よし・世間よし・つなぎ手よし・未来よし)を共有し、互いに応援し合いながら仲間を広げ、地域や社会に貢献する存在である。

阿比留社長は「ビルダーとは雇用関係がありません。だからこそ強い参画意識を持ち、〝自分の事業を社会にどう役立てられるか〟という使命感を原動力に動いてくれるのです。その姿勢は販路や報酬のためだけではなく、社会に貢献するためのもの。だからこそ深いつながりを生み出しているのです」と語る。

ホモ・サピエンスの遺伝子〝助け合い〟を受け継ぐ

人類が生き延びてきた理由は「助け合う力」にある。体力も知能も優れていたネアンデルタール人ではなく、か弱い存在だったホモ・サピエンスが繫栄し生き残ったのは、血縁を越えて連帯し、食料や知恵を分け合う術を持っていたからだ。

クムクムは、この「助け合いの遺伝子」を BUILDER JAPAN PROJECT によって現代経済に受け継いでいる。

阿比留氏は語る。「ホモ・サピエンスが連帯によって生存の危機を乗り越えたと知ったとき、私たちの事業との共通点を確信しました。BUILDER JAPAN PROJECTもまた、協力と分かち合いを基盤に広がる仕組みだからです」

この思想を具現化したのが「3つの資本」である。

共創経済資本:みんなのモノやサービスをみんなで集め、みんなで売り、収益を分け合う。

知的情報資本:信頼関係のあるアナログなヒューマンネットには単なるインフォメーションではなく、経験や知性から生まれる情報「インテリジェンス」が集まる。

地域社会資本:都市と地方をつなぎ、人や経済を循環させ、互いに発展させる。

実際、北海道から沖縄まで、ビルダー同士が自発的にマルシェや交流会を開催し、地域の経済と文化を盛り上げている。全国各地からビルダー事業説明セミナーの依頼が相次ぐのも、ありふれたビジネスモデルではなく「協力と分かち合う仕組み」として共感を呼んでいるからだ。

「公平で平等な仕組みを整え、高度な報酬設計で具体化している。そこに私たちの強みがあります。理念を掲げるだけでなく、〝五方よし〟を体現する仕組みそのものが、次世代の経済モデルとなっているのです」

地域から広がる〝共創〟の実践

共創の力を象徴する事例が、東京都大田区の小さなラーメン店にある。

店主は自店だけでなく、地元商店街を盛り上げたいと願いながらも、ひたすらに客へラーメンを提供する日々の繰り返しに将来の展望を描けずにいた。転機となったのが「BUILDER」との出会いだった。

仕組みを取り入れたことで、これまで競合と見ていた同業者とも協力関係を築くことができ、互いを応援し合える関係が生まれた。自店だけでは越えられなかった限界を突破し、未来への道を切り拓くことにつながったのだ。そして店主は語る。

「これは絶対に日本に広がるなという確信があった。この仕組みは事業を営む人たちにとって救世主になるので単純に教えたほうがいいと思いました。だから自事業+αの事業提案をしているのです」

その後、共創の輪は拡大し、数千社規模の事業者集団へと発展。ラーメン店にとっては本業を補うどころか、新たな収益の柱となり、人生そのものの劇的な変化を遂げることになった。ここから浮かび上がるのは、誰もが模索している「本業+αの武器」を持つことの重要性である。仲間とつながり、互いの強みを補完し合うことで、個々の事業は思いがけない広がりを見せる。

「事業者が力を束ねれば、文化や経済は守られ、循環し、発展していきます」。阿比留氏の言葉が示すように、同社の取り組みはECプラットフォームを超え、日本再生、そして世界経済の新しいスタンダードを目指す挑戦である。

わが町やコミュニティを盛り上げたいと願う全国各地の経営者にとって、同プラットフォームは確かな力となる。仲間と分かち合い、与え合う営みこそが、未来を開く真の豊かさへとつながっていく。

設立2007年9月
本社東京都港区
事業内容ソリューション営業、代理店募集・管理、ウェブサービス企画・運用・保守、ウェブマーケティング事業、自社メディア運営
https://kumu2.co.jp/