ホームページ(HP)制作やウェブマーケティングなどを手掛けるエス・ケイ通信は設立25年を数える業界のリーディングカンパニーだ。競合ひしめく中で着実に成長を続ける同社の廣瀨社長は古き良き時代の「大家族主義」を掲げて人材育成に取り組む。(雑誌『経済界』2025年12月号より)
廣瀨勝司 エス・ケイ通信のプロフィール

検索結果で地図からHPにつなぐストーリー
エス・ケイ通信の創業はインターネット時代が幕を開けて間もない2000年。当時、通信回線会社に勤めていた廣瀨氏は、営業職を兵隊扱いして苛烈なノルマを課す会社のやり方に反感を覚え身一つで起業した。
「使えない人間は切り捨てるような方針には賛同できず、ならば自分で会社を立ち上げようと決心しました」
数年後には、通信機器販売からHP制作によるウェブマーケティング事業に大きく舵を切り、現在はサービス業、建設・リフォーム業、士業向けなど幅広い業種業態にサービスを提供している。顧客数は約6万社。検索エンジンを最適化するSEO事業やオンラインからリアル店舗へ誘客するOtoO事業を得意とする。
「当社はHPを制作しておしまいではなく、その後も顧客のリアル店舗の業績やアクセス数をレポート・分析しながら継続的に改善をサポートします。どのコンテンツが一番閲覧されているのか、前面に出すべき情報は何か、またインバウンド向けに外国語の説明も入れるかなど、顧客とヒアリングを重ねながらターゲット層へ最適なマッチングを図ります。ウェブの見せ方次第で、リアル店舗への集客率はまったく違ったものになります」
近年はSEO事業に関連してマップエンジンを最適化するMEO事業にも注力。グーグルマップやアップルマップなど、検索結果で地図を上位に表示させるための施策を推し進めている。
「例えばリアル店舗を検索したとき、グーグルをはじめ検索エンジンはまずHPではなく、地図アプリで位置を表示する仕組みに変わってきており、海外では既に当たり前になっています。まだ日本にこの波は来ていませんが、店舗検索したとき地図からHPにつなぐストーリーを構築することが重要になります」
このほか、AIがブログを更新してくれるAIブログや空撮向けのドローン映像制作、ウェブマンガで分かりやすく伝えるマンガ制作など、開発・制作・企画・提案・サポートまで幅広い関連事業を手掛ける。
「関連事業はなるべく外注に頼らず、自社でできることは内製化するのが利益率向上のための重要なポイントの一つです。また、新規事業やアプリ開発にはAIを取り入れておかないと取り残されてしまいます」
年齢・経験・学歴不問で実力評価を徹底
これらの技術力を最大限に発揮させるのは、エス・ケイ通信が長年培ってきた営業力とそれを支える柔軟な人事制度だ。
「当社の営業戦略の鍵となるのは『誰でも売れる仕組み』を作ることであり、一部のスーパー営業マンが稼ぐスタイルではありません。一方で、インセンティブにも関わってくる人事制度については、営業職のモチベーションを上げるために商材や組織とともに年に数回変更することもあります。特に重視しているのは、1件あたりの価格よりも件数です。仮に150ポイントの報酬を得るならば、1件で得るよりも、50ポイントずつ、3件で獲得することを優先しています」
そんな廣瀨氏が掲げる経営理念の一つが「大家族主義」だ。「社員やお客様は家族同然」という古き良き時代の思いを今も忘れていない。
「従業員は同じ釜の飯を食う仲間です。親は子どもを成長させるために褒めたり叱ったりすることはあっても、見捨てることは決してありません。コロナ禍では当社も危機を迎えましたが、人員整理は一切行いませんでした。昭和の精神論や根性論を唱えるつもりはありませんが良い部分は残すべきであり、同時にそれはZ世代からも受け入れられなければなりません。検索慣れしている現代の若者は、ロジックとして答えを求めてきますので『私の若い頃は…』と自分の経験を押し付けたらおしまいです。そのなかで大切にしてもらいたいのは『一蓮托生』という気持ちです。いいときも悪いときも、一緒に頑張る仲間たちでありたいと思っています」
東日本大震災やコロナ禍では営業活動に苦労したこともあったが、震災時は被害がない西日本方面へ営業をシフトしたり、コロナ禍では主流であったサービス業から比較的影響の少ない建設・リフォーム業などへターゲットを変更したりするなどして危機を乗り切った。
廣瀨氏の「大家族主義」は採用にも表れている。経験や学歴は一切不問で、高卒はもちろん中卒も採用する。従業員は473人、平均年齢は29歳。採用難のこの時代に若い人材が集まっている。
「当社は完全実力主義で、性別も年齢も学歴も関係ありません。20代後半の管理職が40代の部下を持つこともあり、若くして数千万円の年収を得ている者もいます。実力を正当に評価し、その背中を見せることで後輩もついてくるようになります」
2020年比で従業員は2倍近く、グループ売上高も約1・5倍の380億円と急成長を遂げているが、廣瀨氏の目指す姿はまだ先にある。
「順調な成長が続いていますが、最終的な目標は売上高1千億円です。これを達成するためには今のままの体制では難しく、いずれはM&Aなども必要になります。私はまだ50歳になったばかりですが、15年後の65歳までには1千億円を達成したいですね」
| 設立 | 2000年9月 |
|---|---|
| 資本金 | 3,000万円 |
| グループ売上高 | 380億円 |
| 本社 | 東京都新宿区 |
| 従業員数 | 473人 |
| 事業内容 | ホームページ制作、ウェブマーケティング、SEO、O2O、モバイルソリューション事業等 https://sk-t.com/ |
