(雑誌『経済界』2025年12月号より)
宮原博昭 学研ホールディングスのプロフィール

宮原博昭氏が社長に就任した2010年、学研の業績は深刻な状況にあった。この苦境から宮原氏は積極的なM&Aを通じて、サービス付き高齢者住宅をはじめとした医療福祉事業を拡大し15期連続の増収を果たした。現在では教育事業との売上比率は半々だ。しかし祖業の教育事業は今後も同社のコアであり続けると宮原氏は語る。
「教育はいつの時代でも必ず求められる大切な仕事です。学研は『誰一人取り残さない教育』を重視しています。一部の投資家から利益率の低さを指摘されても、決して富裕層向けにサービスを限定しません。いわば社会的使命としての教育事業です。この事業は社員が頑張るための生命線でもあります。教育事業を80年続けてきたからこそ、医療福祉事業も学研ブランドを生かせているのです」
宮原氏は「既存の事業の価値を最大限に高めるインオーガニックなM&Aを徹底している」と熱を込める。現在、同社のグループ企業は国内外110社。グループ連結従業員数は2万9184人で、今やその65%がM&Aによって増えた社員だ。
「オーナーが変わったM&A先の社員が一時的にやる気を失うのは当然です。ですからトップがきちんと現場の活躍を見ているという姿勢が欠かせません。私自らグループ会社を直接訪ねて手土産を渡して励ましています。新たなシナジー創出には、現場知を重視したケース・スタディの積み重ねが重要です。これは私が防衛大時代に経営学者の野中郁次郎先生から学んだことです。温故知新が未来を開くと信じています」
