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経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

市況回復を追い風に攻めの経営に転じる--日比野隆司(大和証券グループ本社社長)

日比野隆司氏(大和証券グループ本社社長)

 金融緩和による株式市場活況を背景に、「〝貯蓄から投資へ〟という流れが加速して、100兆円規模のマネーシフトが起こり得る」と分析する大和証券グループ本社の日比野隆司社長。相場環境の好転を受けて、同社業績は急速な回復基調にある。日比野氏は「歴史的とも言えるビジネスチャンスによってグループの躍進を図りたい」と意気込んでいる。

【ひびの たかし】 1955年生まれ。79年東京大学法学部卒業、大和証券入社。2004年大和証券グループ本社取締役、09年副社長、11年4月より現職。

【ひびの たかし】 1955年生まれ。79年東京大学法学部卒業、大和証券入社。2004年大和証券グループ本社取締役、09年副社長、11年4月より現職。

「再生」から「成長」フェーズへ

―― 現在の相場環境をどう認識していますか。

日比野 非常に良い状態ですね。昨年11月14日の衆議院解散宣言を起点に、半年間での日経平均株価の値上がり率は70%程度と猛烈に上がりました。これだけの上昇記録を達成したのは1952年以来のことです。日本銀行が4月に発表した「黒田バズーカ」と呼ばれる強烈な金融緩和策の影響で、まさにマーケットが大きく地殻変動を起こしたと言えるでしょう。

―― 株式市況の回復を受けて、投資家の動向をどのように見ていますか。

日比野 個人では「これからが本番」だと買い意欲を示したり、利益確定の売りを出したり、さまざまなようです。海外年金基金やヘッジファンドといった外国人投資家は、年末から機動的な日本株買いに動いており、ようやくアンダーウエートの解消が進みつつあると感じています。日本株はこれまであまりに過小評価をされており、日本円は過大評価を受けていました。こういった異常な状態が、非常に短期間で解消されたことを大変歓迎しています。

―― 環境の劇的な変化で御社の経営も新たなステージに入ったようですね。

日比野 そのとおりですね。この相場環境を追い風に、「攻めの経営」に転換していきます。2014年度までの中期経営計画では、1年目であった前年度は「再生=ターンアラウンド」をスローガンに、販売管理費の削減やミドル・バック部門からフロント部門に人員をシフトするなどの取り組みを行いました。

 昨年末からの株高もあり、目標としていた黒字転換を果たすことができました。また、計画よりも早く2年目のスローガンでもある「成長」フェーズに入ったと言えます。非常に幸運なことですが、中計の進捗とマーケットの流れがこれだけピタッとはまることは滅多にないことです。当社としては「貯蓄から投資へ」の流れを加速させ、これを軸にグループの成長を高めていこうと思っています。

―― 「貯蓄から投資へ」を促進させるためのリテール戦略について教えてください。

日比野 当然ながら、各支店をベースとした質の高い資産コンサルティングがすべての根幹です。5月に開催した経営戦略説明会でお話ししましたが、営業力の強化を目的に、4千人弱の営業人員と全国123の支店を今後数年間でそれぞれ5割程度増やす方針です。

 人員は育成しながら増やしていく必要がありますし、急激な採用増を行う考えは全くありません。重要なのは、人材を社内で維持していくためのリテンション(人材流出を防ぐ)戦略です。せっかく優秀な人材を採用したわけですから、できるだけ長く働いてもらいたいと考えています。

 リテンションに力を入れていけば、大量採用を行わなくても、質量ともに相当な戦力アップにつながるでしょう。当社は数年で女性管理職の倍増を目指すなど、女性の積極登用を行っています。今後も出産など女性特有の事由があっても仕事を長く続けられるような職場環境を整備し、〝女性力〟を強化していきたいと考えています。

日本版ISAで来年中に100万口座獲得を見込む

―― 「貯蓄から投資へ」を促す施策の一環としてスタートする、少額投資非課税制度(日本版ISA、愛称「NISA」)への取り組みについては。

20130702_024_02日比野 来年1月からの制度導入までまだ時間がある割には、業界全体の競争が過熱気味という印象はありますが、当然、当社でも力を入れています。まずはきっちり、既存顧客に大和でNISA口座を作っていただきたいと思います。

 4年間は金融機関を変更できませんから、幅広い品揃えを誇る総合証券に圧倒的な優位性があります。その点を評価していただけるようにアピールを行い、顧客獲得を進めていく考えです。当社の顧客基盤からすると、遅くとも来年中には、100万口座程度を獲得できるものとみています。

―― NISAに関しては、顧客基盤の厚い大手銀行に有利だというイメージがあります。

日比野 皆さんそうおっしゃいますが、銀行では株式を直接取り扱うことができません。銀行グループで見れば、銀行が顧客を証券子会社に紹介するという流れはあるでしょうが、すべての顧客を囲い込むことは恐らく難しいでしょう。

 当社としては、これまで培ってきたリスク商品の説明・提案力という強みを生かして、幅広くアピールを行っていきます。投資商品の取り扱いには一日の長があるわけですから、銀行とは対等以上に戦っていけると自負しています。

―― 傘下の大和ネクスト銀行は、預金残高を順調に積み上げているようですね。

日比野 「貯蓄から投資へ」を促すゲートウエー銀行としての存在感が高まってきました。証券口座と、ネクスト銀行の口座間で、顧客資金を自動的に手数料無料で振り替える「スウィープサービス」は、投資の待機資金を好金利で運用できるとして大変好評です。

 今年3月末時点での預金残高は、開業2年で2兆2170億円と非常にハイペースで増加しています。今後はボリュームを追求するというよりは、一層、預金が投資に向かうように働き掛けていきます。

―― 市況の改善で、リテールだけではなく、ホールセール部門の事業環境にも明るさが見えそうです。

日比野 非常にマインドが明るくなったこともあり、企業の資金調達ニーズは増えつつあります。昨年の大型IPO(新規株式公開)案件は日本航空、PO(株式の公募・売出)案件では日本たばこ産業で、当社が主幹事を務めました。今期は極端にIPO案件が増えるということにはならないでしょうが、昨年より確実に新規上場企業数は増えるでしょうね。市場が正常化に向かっているわけですから、ベンチャーキャピタル事業を手掛けるグループの大和企業投資を含め、グループ全体で需要を取り込んでいきたいと考えています。

経営戦略説明会で「〝貯蓄から投資へ〟の時代を大和がリードする」と話す日比野社長

経営戦略説明会で「〝貯蓄から投資へ〟の時代を大和がリードする」と話す日比野社長

アジアを代表する総合証券会社を目指す

―― その他、ホールセールでどのような取り組みを行っていますか。

日比野 未上場企業や公益法人、地域金融機関などを対象にした「ミドルマーケット」の開拓を一層強化していきます。これまで、個人と大企業の間に存在する数多くの顧客をカバーし切れていなかったという反省点がありました。

 昨年4月にリテールとホールセールを別々に手掛けていた証券子会社2社を統合しましたが、その後、法人部門に営業を手厚く配置した結果、ミドルマーケットの収益は顕著な伸びを示すようになりました。当社がワールドクラスのビジネスで培った知見やサービス、商品は、中小企業や地域金融機関において今後も一層評価されると信じております。

―― 以前から「アジアを代表する総合証券グループ」を掲げられていますが、その目標の進捗状況は。

日比野 目標は今も全く変わっていません。今後も日本を含むアジアでの存在感を高めていくための施策を強化していきます。リーマンショック直後の海外展開には非常に厳しさを感じていましたが、今は状況が変わりました。ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国を中心に、大きく経済が伸長しています。

 総合証券グループとして、企業の資金調達を支援するプライマリー業務と、投資家向けに証券販売を行うセカンダリー業務の双方でさまざまなプロダクツを提供していく考えです。

―― ミャンマー連邦共和国では、証券市場育成を支援していると聞きます。

日比野 グループ傘下の大和総研が、96年にミャンマー最大の国営銀行と共同で同国初の証券取引センターを設立し、インフラ整備に携わっています。15年の証券取引所の開設に向け、東京証券取引所などと共同でシステム開発を中心とした技術支援を行っています。

 十数年にわたる支援活動をとおして、「日本企業でミャンマーと言えば大和」と言ってくださる方が増えるようになりました。アジア域内の証券市場整備を大和証券グループ全体でサポートしながら、アジアの成長力を取り込んでいきたいと考えています。

(聞き手/本誌編集委員・清水克久、構成/本誌・鈴木健広)

 
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