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経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「中小企業の事業承継問題が深刻化し本格的なM&Aの時代が到来」--分林保弘(日本M&Aセンター会長)

わけばやし・やすひろ氏

 当社が成約支援したM&Aで、大手の販売力を生かし成功した事例では、高齢者向け宅配弁当のワタミタクショクがある。もともとは長崎にあったタクショクという会社で、売り上げが80億円、経常利益が4~5億円あり、上場準備もしていた。しかし上場すると株主が何千と増え、毎年の売り上げ・利益で1割増、2割増を求められる。その経営が親族だけでできるのかという不安があった。一方、上場しなかった場合、全国レベルで事業を拡大しようとすると膨大な資金とブランド力が必要になる。また、それまでの工場増設で借入金もあった。2代目の息子が会社を継ぐと、借入金を背負わせることになる。こうした判断から、タクショクは08年にワタミに事業を譲渡したが、これが大成功した。5年たった同事業の今年度の売り上げは当時の約7倍である。

M&Aは乗っ取りというイメージは大きな誤解

 今後、為替が円安に振れると、外国企業が日本企業を買収する例が増えるだろう。当社にも海外から多くの照会が来ている。例えば、タイやシンガポールの製造業では、よりコストの安いものはカンボジア辺りに工場を移し、もう少し技術レベルの高い日本の会社を買って、その技術を生かして会社を伸ばしたいというニーズがある。

 M&Aではリストラが不安視されることがあるが、中小企業のM&Aでは心配いらない。

 大手のM&Aは合理化が中心になる。例えば、メガ銀行はかつての都銀13行が現在は数行に集約された。あるいは新日鉄と住友金属が合併した。こういうケースは、重複する支店や海外拠点を集約するなど合理化目的のリストラが起こり得る。

 一方、中小企業を買収する場合は、新しい分野・市場で営業する、売り手の中小企業をもっと伸ばしていこうという関係である。このため、原則的に合併はしないし、重複がないのでリストもなく、社員の雇用や待遇は守られる。グループ内の企業となるが、会社名は少なくとも3年から5年は変えないケースが多い。今までの社長は会長あるいは相談役としてしばらく残って引き継ぎをしっかりしてからリタイヤしていただく。だから表面的には何も変わらない。

 このように買収しても大きくは変更しないというのが大原則。少なくともわれわれが間に入った中小企業のM&Aでは守られる。その点で一般に誤解が生じているし、株式に譲渡制限がある中小企業で乗っ取りなんてあり得ない。それは1千件に1件とか珍しいから注目されるにすぎない。 (談)

 
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