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日本上陸のクロームブック、米国並みの市場開拓は可能か

「C720」

米国市場で市場が拡大中のノートPC「クロームブック」が日本でもいよいよ販売を開始した。安価かつ手軽なPCとしての期待は高いが、日本市場での普及はどうか。米国とのインフラやビジネス慣習の違いも問題になってくる。

 ウェブ上での操作のため低スペックかつ安価なPC

 米グーグルの基本ソフト(OS)「クロームOS」を搭載したノートPC「クロームブック」が日本で発売された。米国では既に2011年から販売を開始しており、約3年を経て、ようやく日本での発売に至った。

 クロームブックの最大の特徴は、無線でのネット接続を前提とした端末であることだ。LANポートを装備していない機種もある。操作に当たってはウェブブラウザ「グーグルクローム」上でアプリケーションを利用するため、既存のPCのようにソフトウエアを本体にインストールすることはない。また、アプリは常にアップデートされ、最新機能が利用できる。さらにデータは基本的にはクラウド上のストレージに保存する。

 こうした特徴を備えるがゆえにPC側に高度なスペックは求められず、高性能CPUや大容量メモリを搭載する必要もない。このため、既存のノートPCと比べると軽量かつ安価で、米国での販売価格は200〜300㌦となっている。

 また、データをクラウド上に保存することからセキュリティーも高いとされている。起動プロセスも簡略化され、ウインドウズOSの半分以下に抑え、起動からメールソフトの立ち上げまで10秒程度という。米国では、こうした安全・快適という特徴が評価されて、昨年末から市場が拡大。現在は米国のビジネス用PC市場で約2割のシェアを占めているという。

日本エイサーのクロームブック「C720」

日本エイサーのクロームブック「C720」

 日本ではまず7月に台湾エイサーが11・6型のクロームブック「C720」の販売を開始した。続いて8月に台湾エイスース、9月に米ヒューレット・パッカードが、9月末までに米デルが販売を開始する。日本メーカーでは東芝が発売を予定している。

 米国ではクロームブックを民生用にも販売しているが、日本では当面は法人用で展開する方針。グーグルとしては「安いだけのPCととらえられたくないため」だという。企業および教育機関への導入を目指しており、日本エイサーでは既に教育機関での試験導入を始めており、高い評価を受けている。

 日本の法人展開には課題が山積

 ただし、日本での市場開拓には疑問の声も挙がっている。

 まず日本では米国ほどにWiFi環境は整っていない。無線のネット環境が整わなければ、使える場所も限られてくる。オフラインでできる作業もあるが、ネットありきの端末だけに、日本のネット環境は普及のマイナス要因となる。

 次に価格も気になる。日本エイサーによると、今回発売するC720の販売価格は4万円前後で、米国での販売価格と比べると若干の割高だ。C720自体は、最新のウインドウズ8をインストールしても使用に耐え得るだけのスペックとなっており、クロームブックとしては若干のオーバースペックの可能性もある。その分、販売価格が上がっているきらいがあり、このため、安いという前提が崩れる。しかもこの価格設定はグーグルの意向だという。

 4万円台となると、安価なウインドウズのノートPCもあり、差別化は難しくなる。価格帯がかぶってくると、PCメーカーとしても自社のノートPCとビジネスを食い合う可能性がある。日本エイサーとしては、ウインドウズPCとクロームブックとで広くラインアップしておくスタンスだというが、どこまで販売に注力するかは微妙だ。

 また、法人向けが中心となるが、成熟したPC市場において、法人向けこそ、既存のPCメーカーもビジネスチャンスを求めている。それだけに競争が激しい。さらに日本のビジネス慣習を考えると、マイクロソフトのオフィスドキュメントの普及シェアが圧倒的で、これが逆風となる。クロームブックもオフィスドキュメントの閲覧・編集・作成は可能としているが、操作性や汎用性はオリジナルのオフィスが優る。そうなると価格面では優位だが、マイクロソフトのタブレット「サーフェス」とも競合してくる。また、クロームブックでの編集の過程で、ドキュメントのフォーマットが狂う可能性もあり、日本の官公庁では使えない。企業も採用を見送る可能性がある。

 「キーボード入力のできるタブレット」という感覚で、一部のマニアが飛びつく可能性もあり、民生用のほうが意外と伸びるのではないかという見方もある。日本エイサーのボブ・セン社長は、民生用の展開について、「準備は整っている」と語っており、グーグル次第と言える。

 クロームブックの機能やコンセプトの利点は理解できるが、日本と米国を比較した場合、利用のためのインフラと商慣習が違い過ぎるため、日本では苦戦を強いられるだろう。ただ商慣習よりはインフラのほうが先に改善が進む可能性がある。オフィスドキュメントの問題は仕方ないにせよ、ネット環境については、通信会社が本腰を入れてくれば、クロームブックを利用しやすい環境が広がる。

 今回、クロームブックの企業からの問い合わせ窓口はソフトバンクテレコムになっており、ソフトバンクがWiFi環境の普及をセットで進めるならば、一気に広がる可能性はある。まずはネット環境の整備をどこまで進められるかだろう。

(文=本誌/村田晋一郎)

 
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