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富士通の半導体再編 生産撤退から見える姿

山本正已・富士通社長

 パナソニックとの統合新会社設立が最終契約に至るなど、富士通が昨年から進めている半導体事業再編の大枠が固まってきた。設計と生産を切り離し、事実上の生産撤退とも取れるが、それぞれをファブレス、ファウンドリとして個々に成長を目指そうとしている。

富士通は設計と生産を切り離す 半導体事業再編の大枠が決定

 富士通は2013年2月に半導体事業を再編する方針を明らかにしたが、これまで進めてきた再編に一応の道筋を付けた。

 富士通の組織再編について述べる前に、半導体業界を俯瞰すると、半導体のビジネスモデルは、3つに大別できる。ひとつは自社で設計から製造までを一気通貫で行うIDMメーカー、次が自社で製造設備を持たず設計だけを行うファブレスメーカー、そしてファブレスや一部のIDMからの委託で製造のみを行うファウンドリメーカーがある。

 半導体製造工場には巨額の設備投資が必要となる上、工場の稼働率を維持することが容易ではないため、ファブレス・ファウンドリのビジネスモデルが主流になりつつある。IDMでも製造部門を切り離しファブレスになるメーカーや、一部の製品をファウンドリに委託する「ファブライト」を志向するメーカーが出てきている。また、IDMが工場の稼働率を上げるために、ファウンドリビジネスを展開する場合もある。

山本正已・富士通社長

富士通半導体はAMDになれるか。写真は山本正已・富士通社長

 富士通は、日本のIDMメーカーの中でも早期にファブライトを志向し、ファウンドリの世界最大手であるTSMCに一部製品の製造を委託していた。また、その一方で、主力の三重の300ミリメートルウェハー工場の生産能力を生かし、ファウンドリとして他社製品を受託生産してきた。昨年から進めてきた富士通の事業再編は従来のファブライトではなく、設計部門をファブレスとして、生産部門をファウンドリとして、分社・独立させるものだ。このため、事実上の生産撤退と見る向きもある。

 まず設計部門は、パナソニックの設計部門と統合し、システムLSI事業のファブレス新会社を設立する方向で交渉を進め、今年7月末で最終契約に至った。出資比率は富士通40%、パナソニック20%、日本政策投資銀行(DBJ)40%で、CEOには元京セラ社長の西口泰夫氏を迎える。14年度第4四半期の営業開始を予定している。

 生産部門については、三重の300ミリメートル工場と、会津若松の200ミリメートル工場および150ミリメートル工場をそれぞれ、三重ファウンドリ新会社と会津ファウンドリ新会社として分社化することが決定した。三重ファウンドリ新会社は、事業開始のめどは立っておらず、提携するパートナーと交渉中の段階。03年2月の構想時点ではTSMCと交渉していたが頓挫し、現在は台湾のファウンドリメーカーであるUMCと交渉しているという。

 会津ファウンドリ新会社については、米オン・セミコンダクターとが戦略的パートナーシップを締結。富士通が90%、オン・セミコンダクターが10%を出資し、オン・セミコンダクターの製品を生産する。1年以内の量産開始を予定している。

富士通の半導体事業戦略 分社化で成長したAMDがモデルに

 半導体の設計・生産をともに切り離す形になる富士通だが、ここで富士通が目指すべきものは何かを考えると、連想するのは米AMDのビジネスモデルだ。AMDは09年に製造部門を分社化し、ファブレスメーカーとなっている。

 もともとはPC用のCPU市場でインテルのセカンドソースという位置付けだったAMDだが、PC市場の低迷もあり、近年はゲーム機向けや組み込み機器向けで順調にビジネスを展開している。また、生産部門はアブダビの投資会社ATICの出資を受け、ファウンドリメーカーの米グローバルファウンドリーズとして再出発したが、10年にシンガポールのチャータード・セミコンダクターを買収。現在はTSMCに次ぐ世界2位のファウンドリメーカーとなっている。富士通が目指すべきは、分離した設計部門と生産部門が共に成長しているAMDの姿だろう。

 では、富士通がAMDになれるかを考えてみる。

 まず設計新会社については、もともと富士通はファブライトを志向していたため、一見するとファブレスビジネスを展開できそうな印象がある。しかし、ファブライトでうまく行かなかったからこそ現在の姿がある。ファブレスビジネスを今一度検討し再構築する必要があるだろう。ファブレスには、未来を見据えた卓越した商品企画力とグローバル規模のマーケティング力が求められる。さらに日本の半導体業界再編の流れの一環とはいえ、パナソニックの設計部門が加わることも懸念材料だ。日本の半導体の合弁は成功例が少ないだけに、CEOとなる西口氏の経営手腕が問われる。

 ファウンドリ新会社については、現在進めている方向性どおりにパートナーといかに連携できるかにかかっている。会津若松工場や三重工場の規模では単独でファウンドリとしてのビジネスを行うのは難しい。グローバルファウンドリーズの成功もチャータードを合併したことでワールドワイドで拠点を展開し、米IBMを中心とする技術提携がさらに深まったことが大きい。現実的には、海外の大手ファンドリーの傘下に組み込まれることが妥当と考える。まずは現在進めているUMCとの交渉次第だが、よりワールドワイドな連携を築けるかにかかっている。

 今はまだ再編の枠組みが定まった段階で、富士通半導体の正念場はこれからだろう。

(文=本誌/村田晋一郎)

 

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