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グローバル市場で苦戦する日本のブランディングと問われる経営者の姿勢―岡崎茂生(フロンテッジ執行役員 ソリューション本部副本部長)

岡崎茂生氏(フロンテッジ執行役員 ソリューション本部副本部長)

 電通のブランドコンサルタントとして7年半、中国・北京で海外企業のブランディングを担当してきた岡崎茂生氏。グローバル市場において日本企業が存在感を示すことができない要因を肌で感じてきている。ブランディングに対する経営者の姿勢について、国内外の違いを分析してもらった。

 

ブランドとは企業の意思であり経営資源である

 

 私は他のブランドの専門家と違い、北京を拠点に広告とブランド戦略、コンサルティングをしてきました。

 その中で、日本企業のブランドへの取り組みは真剣さに欠けていると感じます。

 ブランドは経営資源です。経営は事業戦略とブランド戦略の2本柱が重要です。事業戦略は、適切な事業モデルを作り、収益を上げることが目的で、収益につなげるブランドという企業の価値シンボルを育てなければいけません。

 ところが、日本企業はブランドを経営資源として認識していないように映ります。

岡崎茂生

岡崎茂生(おかざき・しげお)
1981年東京大学教育学部卒業、82年に電通入社。89年、ピッツバーグ大学経営大学院でMBA取得。2006〜13年北京駐在、北京電通ブランド・クリエーション・センター本部長を経て、フロンテッジに出向、現職。中国企業をはじめタイ、アメリカ、韓国、日本企業などを対象に幅広くブランド戦略コンサルティングを行う。山東大学ブランド&コミュニケーション研究所客員教授、青山学院大学大学院青山ビジネススクール非常勤講師。

 米MITが今年発表した世界のスマート企業50社ランキングというものがあります。トップは遺伝子解析などのテクノロジー企業のイルミナでした。2位がテスラモーターズ。以下、グーグル、サムスンと続きますが、日本企業は1つもありません。

 一方で中国企業は3社も入っています。優良な日本企業があるにもかかわらず、世界で存在感を示せていないのです。

 ランキングで上位に入ることは目的ではありませんが、グローバルな市場に出て行かないということは機会損失していることなのです。

 

日本がブランディングに失敗している4つの理由

 

 現在の日本企業がグローバル市場において存在感を見せられない理由は4つあると考えられます。

 まず1番目は、企業がブランドを経営資源と認識して真剣に投資していません。

 一方で中国企業は真剣にブランド育成に取り組んでいます。長らく中国の多くの製造業はOEM事業者でした。OEMではいい製品を作っても収益性に限界があることを、彼らは知っています。オリジナルブランドを持ち、しかもグローバルに展開していくことが、事業発展の要だと理解しているのです。

 2番目に、市場でどのように商品を売っていくかというマーケティングに対して投資が不足しています。

 製品ごとの事業本部制になっていることが影響しているのでしょう。それぞれの製品分野で完結し、稼いだ利益の中からマーケティングに投資し、その一部をブランド投資にしています。しかし、そうすると肝心要の企業ブランドへの投資が欠けてしまうのです。

 日本の企業は事実として歴史や実績、技術力があります。それでも勝てない理由は、強みを発信できていないからです。

 広告やPRの手法もあります。今はソーシャルメディアも有効な手立てです。しかし、日本はそこへの投資が弱いままです。

 3番目はブランドの定義につながります。

 ブランドとは、「わが道を行く」のわが道です。例えばホンダは自動車メーカーでありながら、ASIMOやHonda Jetを作るように車以外の技術に力を入れています。やはり本田宗一郎のDNAがあり、他社とは路線が違います。ブランドには企業に込められた強い意思が必要になるのです。

 しかし、わが道を作り上げる工程が、大企業には難しいのです。サラリーマン社長を据え、取締役会の多数決が生かされれば、意思決定が最大公約数になります。ブランドは意思ですから、リーダーの強い意志がなければブランドは機能しません。

 4番目は発信力の欠如です。

 日本国内の市場だけを主戦場とするなら問題ありませんが、外に出た途端に発信力を失います。

 最大の原因は言葉とプレゼンテーション力です。ソフトバンクの孫正義さん、ファーストリテイリングの柳井正さんは強烈に個性の強いリーダーであり、海外でも発信力があります。しかも、投資家や消費者が興味を持ちそうなことを言います。

 ほらとビジョンは紙一重です。ほらでもビジョンを示せば、社員がついていきますし、周りも反応します。リーダーがビジョンを発信しなければ、日本企業の存在感は伝わりません。

 トップに発信力がないなら、若手を活用すべきです。日本企業には、有能で生意気な若手が少なからず存在します。自分の意見を率直に言うタイプは嫌われがちですが、グローバルを土俵にする際にはちょうどいい。リーダーと若者の両輪で発信力を高めるべきだと思います。

 

無印はなぜ中国市場でのブランディングに成功したか

 

 中国市場は特殊な市場ではなく、日本よりグローバル化が進んでいます。中国で走る車は、ヨーロッパの高級車から、韓国車、日本車、国産車に至るまで、すべての車が走っています。

 逆に日本は独特の言語や商習慣などの非関税障壁が高く、多くの海外企業が入って来ません。中国で起こることは、グローバルで起こること、中国市場で勝てないならグローバルでも勝てないということになります。

 中国で存在感のある日本ブランドは自動車メーカー以外ではキヤノン、資生堂、ユニクロなどがあります。最近では良品計画も人気があります。

 中国のホワイトカラーが経済力をつけ、ヨーロッパの高級ブランドを買えるようになったにもかかわらず「無印良品」を選びます。なぜ彼らが無印良品を選ぶかというと、商品の背後にある哲学に共感しているからでしょう。シンプルで環境に配慮する「わが道」を突き進み、必ずしも安くない商品を「良品計画だから」と買っています。ブランディングの成功例の1つと言えます。

 

日本ブランドの強化のためには政経連動が不可欠

 

岡崎茂生 国内市場でも徐々にグローバル化は進むでしょう。そうすると、グローバル市場での戦い方が必要になります。その際に気を付けるべき点は2つあります。

 1つ目は、現代のビジネスはお金を稼ぐだけではなく、社会の役に立っているかが重要視されます。

 例えばコカ・コーラは地球上にあったほうがいいのか、との問い掛けがあったとします。もしも、普通の清涼飲料を売っている会社だと消費者に誤解されたとすると、コカ・コーラでさえ存在基盤が危うくなります。

 そこで、コカ・コーラは人々の幸せに貢献する企業だと発信をしているのです。つまり、企業や製品が世の中に存在したほうがいい理由を出さないと、企業規模にかかわらず存在を許してもらえない時代なのです。存在意義こそブランドです。世の中に存在すべき理由を表現する必要があるのです。

 加えて現代はなんでもアウトソースできます。ジェット機を作ろうと思えば、金と人を集め、事業計画を作れば、工場を持たずに商品を作れます。

 だからこそ、企業のブランド、存在意義が最も大事なのです。しかし、どの企業の理念もビジョンも似ています。自分の価値観や哲学、信念を、明確にすることが経営の要であると経営者は理解するべきでしょう。

 もう1つ指摘したいのが、国家の支援が不足している点です。

 日本ではジェトロなどもサポートしていますが、中国は国家が積極的にグローバルに発信しています。中国中央電視台という国営放送局は外国語チャンネルを持ち中国の情報を海外に発信しています。中国の新聞社、新華社も英字新聞を刊行し、中国がグローバルに発信したい記事を掲載して海外で発行しています。

 これは国家戦略で、政経連動で行っています。この点で日本は後れをとっています。企業と政府が一体になって、日本の技術力などを世界に発信していくべきです。(談)

(文=本誌・長谷川 愛 写真=葛西 龍)

 

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