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ローソンが差別化を仕掛ける経営戦略のカギ「ローソンファーム」の実力

ローソンファーム

中国産鶏肉の杜撰な管理体制が露見するなど食の安心・安全が改めて問われる中、コンビニエンスストア(CVS)大手ローソンが展開する生鮮強化型コンビニと農業への取り組みに注目が集まっている。20140826_newsreport5_1

ローソンの経営戦略① “野菜”で差別化を推進する

 ローソンの農業への取り組みの核を成すのが「ローソンファーム」だ。

 2010年6月、第1号となる「ローソンファーム千葉」の開設以来、今や全国19か所と規模を拡大している。ローソンは従来型コンビニエンスストアからの脱却をめざし、2012年から他社に先駆けて全店舗で野菜の販売を開始した。このうち、20種類以上の野菜を取り揃える生鮮強化型店舗は同社グループ約8000店舗にまでなっている。

 取扱量が急速に増加したのには要因がある。

 「簡単に言えば、安心・安全な野菜に対する市場のニーズが高いということです。そもそも『ローソンファーム』は志を同じとする農家が主体となり弊社も出資した農業生産法人です。そういう背景から、ここで生産される野菜はパートナーである農家さんの“顔”が見えるものでもあり、同時に弊社ブランドの安心も寄与しているのです。安心・安全な野菜を値頃感のある価格で販売していることが最大の強みでもあるのです」(ローソン広報)

 同社が農業事業への参入を決断したのは、第1号ファームを立ち上げる僅か1年前の2009年の事。激しい競争を繰り広げていたコンビニ業界では、現在にも増して、他チェーンとの差別化の必要性にも迫られていた時期でもある。

20140826_newsreport5_2 そこで同社が差別化の象徴的商材の1つとして注力したのが野菜。働く女性の増加や高齢化を背景に、スーパーよりも近い青果売場の必要性が高まりと、既に街のインフラとして機能していたコンビニ立地という2つ要素が見事に合致したのである。

 背中を押した理由は他にもある。ローソンでは2005年から生鮮コンビニ業態の「ローソンストア100」を積極展開していた。さらに2008年には生鮮コンビニの草分けとも言える「九九プラス」を傘下に収めるなど生鮮品の取り扱いには他チェーンに比べ1日の長があった。

 言うまでもなく生鮮品は鮮度管理が命。コンビニの中心商材である加工食品に比べ慎重な取り扱いが求められる。それゆえ生鮮品への潜在ニーズの高さは自覚しながらも、他チェーンの多くは積極展開に二の足を踏んでいた。

 「コンビニエンスストアの飽和感が漂う中、弊社は生鮮強化型店舗を一気に拡大することで、それまでコンビニが弱かった主婦やシニア層をも獲得することが可能となると判断しました」(同)

 一方で、2009年12月に農地法が改正され、農地の利用権が原則自由となり、農業に常時従事していなくとも農地を借りることが可能になったことも同社が参入を決断した背景にある。

 同社が農業に参入するにあたって前提としたのは、言うまでもなく、安心・安全が担保された野菜でなければならないということだ。そこで、生産法として採用したのが「中嶋農法」である。

20140826_newsreport5_3 中嶋農法とは土壌診断に基づいた健全な土づくりの技術と作物の健全な生育を維持するための生育コントロール技術。土壌のミネラルバランスや作物の生育状態に対して適切な栄養を供給するという栽培方法だ。ローソンは、この「中嶋農法」の特許を持つエーザイ生科研を昨年、買収したことからも、その本気度を窺い知ることができる。

 ただ、「中嶋農法」を実践するためには、化学肥料を使い続けたことで痩せてしまった土壌を改良する必要があった。土は生き物、土壌改良には通常約3年の月日を要する。これは農業を積極展開したいローソンには大きな足かせだ。

 そこで同社は一計を講じる。「ローソンファーム」に参加したい農家に対し、「ミネラル栽培友の会」を組織、「中嶋農法」認証予備軍として今後の規模拡大に備えている。

ローソンの経営戦略② 農家とwin-winの関係を構築

 農業の事業化に向け着々と布石を打つ同社ではあるが、その一方で課題も顕在化する。第1のハードルはパートナーとなる農家を見つけることだった。

 多くの農家は、家業として代々農地を継承してきたというプライドも高く、その生産法には強いこだわりを持っている。さらには、組んだのはいいが、大企業は本業の業績如何で“撤退”してしまうのではないかという疑念を捨てきれない農家も少なくなかった。

 説得材料としたのが農家とともに農業生産法人を設立し、自らも出資するということ。出資比率は母体となる農場を持つ農家が75%、流通関連会社が10%、ローソンが15%という風に、マジョリティを敢えて取らないことも農家を安心させる結果となった。

 農家側からすれば、流通業のローソンは実際の店舗を持ち作物を売り切る力があり、消費者の反応もダイレクトに伝わって来る。また、大企業と組めれば、投資等、資金繰りのめども立ちやすいというメリットもある。そういう意味では、将来的にローソンと組みたいと考える農家も増えることは自然な流れである。

 だが、手を挙げた農家なら誰でも受け入れるという訳ではない。

 「農業は永続性が重要です。そこで弊社では農家さんと『ローソンファーム』を設立する際にはいくつかの基準を設けていますが、特に重視しているのは、農業技術の開発・習得に積極的であることです。“日本の農業を支えていくんだ”という意欲ある、若い農家さんと一緒に取り組んでいきたいと考えています」(同)

 ローソンの農業に対する真摯な姿勢は、今やパートナー農家はもとより他の農家からも高い評価を受けるに至っている。

 一方、消費者側の視点からしても“生産者農家の顔が見える安心・安全な野菜”として選択購買できるのも嬉しい。

 さらに言えば、「ローソンファーム」の取り組みは、国内農業の耕作放棄地が増加し続ける等、日本が直面している農業が抱える諸問題の解決の足掛かりとして、社会的意義も十分だ。

 商品の川上から川下まで一貫して自社で賄う、サプライチェーンマネジメントの構築を標榜するローソンの取り組みのなかで、この「ローソンファーム」の存在は際立っている。

(文=本誌/大和賢治)

 
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