お金持ちの生活費は多くない
お金の貯め方、ではなく使い方をテーマにした書籍というのは、意外に少ないことに気づく。資産運用も「お金の使い方」の一種と言えば言えるが、消費ではなくお金を増やす世界であるから、貯め方の一種と言ったほうがいい。
まして、お金持ちたちがどのようなお金の使い方をしているか、実態を伝えているものは稀である。その意味で、私が『年収1億円人生計画』(経済界刊)で示した、年収1億円超の事業家の家計簿はなかなか価値があると思うのだが、どうだろうか。
…ま、そんな自画自賛はどうでもいいのだが、富裕層のお金の使う流儀というものを、今回、考えてみたい。
前掲『人生計画』で登場していただいた方は年収が1億3500万円だった。税金を支払った後の収入は月690万円。支出で注目したのは、生活費の少なさだった。
夫婦2人プラス長男の3人の生活ながら、月の食費は7万円、通信費は1万8千円、交通費は4万2千円だった。衣服費が200万円と高かったが、奥様が衣装関係の仕事をしているという背景があった。外食費と交際費が各50万円と高額だったが、これには定期的に催す社員との懇談会が含まれている(自腹)という。
また、夫婦の親への仕送りが、合わせて月90万円あった。親孝行なのである。
お金持ちは子どもの教育にどれだけお金を使うのか
この人の日常生活のお金の使い方は、質素そのものだった。しかし、知り合いへの貸付金(出資金)は毎月50万円ほどあり、累積で3億円となっている。いずれはリターンとなる投資だ。また、不動産への投資もかなりある。
さて、息子は既に成人しているので、この場合、教育投資はわからなかったが、当時から私は、お金持ちたちは子どもたちに、どのような形で資産を残そうとするのかに関心が強かった。
特に目に見える実物資産として残すのか、目には見えない教育に投資するのか、知りたいものだと考えていた。
その意味で『新 日本のお金持ち研究』(橘木俊詔・森剛志、日本経済新聞出版社)は私の疑問に答えてくれる内容と言っていい。
この本は、だれがどのようにしてお金持ちになったのかを分析した『日本のお金持ち研究』の続編。今度は、お金持ちが何を考え、自分の生活をどう判断し、どんな消費行動や資産選択行動しているかを分析している。
まず、自分の子どもの教育に対してお金持ちが支出している金額に触れてみたい。
お金の使い方にメリハリを利かせるお金持ち流
この本には、わが子への教育投資(月々の習い事代・年間授業料)がいくらになるか、実数が出ている。
それによると、習い事代では5万~10万円未満がいちばん多い。10万~18万円までで全体の40%近くを占めている。月に10万円程度の習い事は普通というわけだ。
年間授業料はどうだろう。最も支出が多かった時を聞いた結果だというが、100万~200万円が約20%でいちばん多く、次いで300万~500万円(約17%)、200万~300万円(約15%)と続く。全体の40%以上は、年間300万円以上の授業料を払っている実態が明らかになっている。この辺りがなかなかマネのできないところで、お金持ちならではと言っていい。
もちろん、子どもの数が多ければ年間授業料も多くなるのは当然である。また、職業によっても年間授業料に高低差が出る。医師の家庭では子どもも医学部進学であることが多いと想定されるが、約6割が年間300万円以上支払っている。経営者の家庭では同額の支払いは4割未満だ。
だが、総じて教育熱心な姿が浮かび上がってくる。
[今号の流儀]
お金の掛け方、使い方にメリハリを利かせるのがお金持ち流。
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