「GDP:年率7・1%減 反動減の長期化懸念 消費税率引き上げ暗雲」
内閣府が8日発表した4〜6月期の国内総生産(GDP)改定値は物価変動の影響を除いた実質で前期比1・8%減、年率換算で7・1%減となり、8月発表の速報値(前期比1・7%減、年率6・8%減)から下方修正された。市場の関心は既に7〜9月期の動向に移っているが、今春の消費増税前の駆け込み需要の反動減が長期化するとの懸念が広がっている。(毎日新聞2014年9月9日)
弱まる経済成長
9月8日に今年4〜6月期のGDPが改訂され、年率換算で7・1%のマイナス成長となった。おおむね事前予想に近い結果となったが、前回増税時( 1997年4〜6月期)の反動減が同▲(マイナス)3・5%だったことからすると、今回の反動減は大きかったと言える。
さらに、ヘッドラインの数字がこれだけ落ちていても、民間在庫品増加と外需が大幅に押し上げていることには注意が必要だ。GDPから在庫品増加をのぞいた最終需要で見れば、年率12・6%のマイナス成長となり、さらにそこから外需を除いた国内最終需要で見れば同▲16・9%となる。この落ち込み幅はリーマンショック直後の同▲6・8%を大きく上回る。駆け込み需要の反動の要因が大きいとする向きもあるが、1〜6月期で均しても前年7〜12月期から年率△(プラス)1・0%成長にとどまり、経済成長の勢いが弱まっていると評価せざるを得ない。
中でも、個人消費は実質で前期比5・1%減と7四半期ぶりのマイナスとなり、落ち込み幅は現在の統計でさかのぼれる94年以降で最大となった。背景には、基礎統計となる総務省「家計調査」のサンプルが少なく、実態以上に下落している可能性もあろう。ただそれを割り引いても、消費税率引き上げに伴う購買力の低下の影響は無視できない。やはり筆者の従前の指摘どおり、デフレ脱却道半ばの日本経済に消費税率3%の引き上げによる影響は大きかったと言えよう。
一方、今後の日本経済のけん引役として期待されている設備投資も前期比▲5・1%と減少に転じた。背景には、前期にOSのサポート終了に伴う更新投資や一部駆け込み需要も含まれていた反動がある。ただ、設備投資の先行指標である機械受注(除船電民需)が4〜6月期に大幅減となったことは気掛かりだ。 他方、外需は前期比年率△4・3%と大幅にプラス寄与したものの、うち△4・7%分は輸入が駆け込み需要の反動から大幅に減少したことによるものである。むしろ、輸出が依然として低迷していることに注意が必要である。海外生産へのシフトなどを背景とした輸出の弱さが続けば、景気の大きな懸念材料となろう。
決断に高いハードル
7〜9月期GDPの見通しについては、個人消費を中心にリバウンドが期待されよう。GDP個人消費の月次指標である消費総合指数によれば、7月以降が横ばいで推移したとしても、7〜9月期の実質個人消費は△0・9%増となり、これだけで7〜9月期の実質成長率を年率で2・3%程度押し上げる。設備投資や輸出、昨年度補正予算の顕在化が期待される公共投資の反転も予想され、プラス成長への復帰はほぼ確実だ。
しかし、そもそも駆け込みと反動を均した1〜6月期の水準に戻るだけでも7〜9月期は年率△3・8%成長に達する。一方、来年10月に控えている消費税率引き上げの判断材料の観点からすれば、前回の判断時は実質2%程度の成長が目安となっていた。このため、今回の駆け込みと反動を均した実質GDPで年率△2%成長を維持するためには、7〜9月期の成長率が前期比年率で△5・8%となることが必要と試算される。7〜9月期は今回年率で△5・5%も押し上げた民間在庫品増加が在庫切り崩しでマイナス寄与になる可能性が高いことも加味すれば、次回の消費税率引き上げを決断するためのハードルはかなり高い。
そもそも、消費者の実感ベースとなる持ち家の帰属家賃を除くCPIが7月に前年比△4・4%台で上昇する一方で、7月の名目賃金の上昇率が△2・6%と物価上昇に追い付かず、国内景気にとって大きな購買力の低下につながっている。日銀や政府の今年度経済成長率見通し(それぞれ△1・0%、△1・2%)も下方修正は必至の状況だ。こうなると、市場では日銀の追加緩和や政府の追加対策の期待が高まりやすくなる。ただし、日銀は労働市場やインフレ率の悪化が顕在化するまでは追加の金融緩和の可能性は低い。むしろ、年末の消費税判断や来春の統一地方選挙、さらには秋の自民党総裁選を控えている政府のほうで、今月にも補正予算の議論が高まる公算が高いだろう。
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan