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試合時間が延伸するプロ野球に必要な「観客満足」の精神

スポーツインサイドアウト

試合時間の長さがプロ野球人気低迷の原因に

 野球は時間制限のないスポーツである。それが他のスポーツにはない大きな魅力であることは間違いないのだが、度を過ぎると逆に不人気の理由になってくる。

 ニフティが2012年に行った「プロ野球の人気が低迷しているといわれていますが、低迷の理由は何だと感じますか?」というアンケートによると、「他のスポーツの浸透」に次いで多かったのが「試合時間の長さ」で全体の3割を占めた。

 そこで調べてみると、今季(9月7日現在)の両リーグの平均試合時間は、1試合当たり(9回まで)3時間17分。過去20年でワースト2位だ。

 NPBが「9イニング平均3時間以内」を目標に定めたのは09年のレギュラーシーズンが始まる前のことだ。その前年には〈野球の力で温暖化ストップ!〉と随分、野心的なキャッチフレーズを掲げていた。

 NPBの意気込みは、次の文面からも、はっきりと読み取ることができた。

 〈(1)試合時間短縮を実現するために、各球団に試合時間短縮担当責任者を置く。(2)審判員は、監督・選手および球団関係者で試合進行に非協力的な者をリーグにレポートする。リーグは球団(担当責任者)に連絡して、改善を求める〉(グリーン・ベースボール・プロジェクトより)。これは要望というより通達だ。

 これにより、07年に3時間14分だった試合時間は東日本大震災で電力不足が懸念された11年、3時間6分にまで短縮された。徐々にではあるが改善の方向に向かっていた。

薄れゆくプロ野球関係者の試合時間に対する危機意識

 ところが、である。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とばかりに、震災翌年の12年から、再び試合時間は延伸の方向にある。

 監督・コーチ、選手、さらには審判から危機意識が薄れつつあるのではないか。

 いったい、どこに試合時間延伸の理由はあるのか。

 それについて歯に衣着せぬ評論が人気の野球評論家・権藤博が日本経済新聞(9月4日付)で、次のようなコラムを書いていた。

 〈高校時代にはテンポよく投げていた投手が、プロに入るとぐずぐずして、なかなか投げなくなる。これは首脳陣が悪い。間合いをとれとか、追い込んだら丁寧にいけとか、カウント0-2から1球外せとか、時間のかかることばかり教える。

 私に言わせれば、打たれた時に備えて、コーチが「私はちゃんと教えているのですが」という言い訳を用意しているだけのことだ。

 打者にとって0-2から勝負されたらどれだけ怖いか。考える間もなく投げ込まれたらどれだけ嫌か。無心だった高校時代にできていたことが、悪いことを教わって汚れていくとできなくなっていくのだ〉

 審判にも責任の一端はあるようだ。あるキャッチャーが、こんなことを言っていた。

 「日本の審判は2ナッシングからなかなかストライクをとってくれない。ピッチャーは1球、遊び球を投げるという先入観があるからでしょうか。一度、真ん中付近のボールに対し〝これでもボールですか?〟と聞いたことがあるんです。後でバッターに聞こえないように、こう答えました。〝2ナッシングだったからな〟と……。あと新人投手に対しても最初のうちはストライクゾーンがやや辛いような気がします。ナメられたくない、という意識が強いのかもしれませんね」

プロ野球では短時間でも充実した試合は可能

 プロ野球の試合時間は、昔から長かったわけではない。例えば長嶋茂雄が村山実からサヨナラホームランを放った1959年6月25日、東京・後楽園球場での天覧試合、巨人-阪神戦の試合時間は2時間10分である。

天覧試合

試合時間が短くても内容が豊富だった天覧試合(Photo:朝日新聞社/時事通信フォト)

 このゲームは長嶋のサヨナラホームランの他にもONのアベックホームランあり、阪神・藤本勝巳の勝ち越し2ランあり、牛若丸の異名をとった吉田義男のファインプレーあり、ピンチの芽を摘んだ藤田元司と広岡達朗のアイコンタクトによる牽制刺殺あり、と内容は盛りだくさんだった。

 スコアもシーソーゲームの末の5対4だから野球を堪能するには申し分ない。主審を務めた島秀之助は「まるで作られたドラマのような試合であった」と述べている。

 繰り返すが、これで2時間10分。今より1時間以上も短いのだ。

 「お客さまは神様です」と言ったのは国民的歌手の三波春夫だが、プロ野球も興行である以上、観客のニーズを無視することはできない。

 先に紹介したアンケートは、いわば「顧客満足度調査」であり、3割の人々が試合時間の長さに不満を持っていることが明らかになった以上、改善に向かって努力するのは当然のことだろう。

 野球は〝間〟のゲームである。それを〝間延び〟と混同してはならない。

 

(にのみや・せいじゅん)1960年愛媛県生まれ。スポーツ紙、流通紙記者を経て、スポーツジャーナリストとして独立。『勝者の思考法』『スポーツ名勝負物語』『天才たちのプロ野球』『プロ野球の職人たち』『プロ野球「衝撃の昭和史」』など著書多数。HP「スポーツコミュニケーションズ」が連日更新中。最新刊は『広島カープ最強のベストナイン』。

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