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地域は甦るか!? 国産ジェットMRJが起こす航空イノベーション

「三菱リージョナルジェット(MRJ)」試験飛行用1号機

 羽田の国際線枠拡大やLCC(格安航空会社)の誕生など、新たな需要が生まれている日本の空で、さらに新たなプロジェクトが動き始めた。国産初のジェット機の誕生が、地域経済の活性を促す可能性がある。次なるイノベーションの未来図とは。

 

国産初のジェット機MRJが可能にする未来

 

 国産初のジェット旅客機であるMRJ(三菱リージョナルジェット)。三菱航空機が開発、製造を進めているこの旅客機は、座席数が70〜90席の小型機だが、日本の長年の夢をかなえる飛行機だ。低騒音、低燃費と性能も良く、あとは予定通りに納入されることを待つだけだ。

「三菱リージョナルジェット(MRJ)」試験飛行用1号機

三菱航空機の「三菱リージョナルジェット(MRJ)」試験飛行用1号機の胴体部分[三菱航空機提供](Photo=時事)

 このMRJを使い、地域経済の活性化につながる航空会社の誕生が検討されている。

 2014年4月、東京大学の鈴木真二教授を代表理事に、三菱商事、JTB総研などが参加する一般社団法人「次世代地域航空ネットワーク検討協議会」が発足し、間もなく日本政策投資銀行も加わる予定だという。

 発足の経緯を協議会専務理事の佐髙圭太氏に尋ねると、「経済産業省の部会において、MRJの活用について話されました。そこで米国のリージョナルエアラインが地域航空ネットワークを支えている仕組みが注目され、このシステムを日本でもうまく活用できないかということから、検討する場として協議会が誕生しました」とのこと。

 この仕組みとは、例えば米国のリージョナルエアライン最大手のスカイウエスト社は、保有機数で約800機(日本の大手エアラインでも200機強)、ネットワークは全米を網羅するが、そのほとんどが大手エアラインからの委託によるもの。

 便名もユナイテッドやデルタ、アメリカンなど大手航空会社の便名が使われており、乗務員の制服や機材の外装、内装も委託元のもので、スカイウエストが運航していることに気付かない人も多い。

 つまり、スカイウエスト社は大手のエアラインに航空機材、運航、乗員、整備等をパッケージでリースするウエットリースを行うだけなのだ。座席の販売は委託元が行い、販売リスクを負うことなく確実な収入を得ている。契約期間も航空機のリースに合わせて約10年と長期にわたることが多く、安定した経営が可能だ。その半面、たとえ需要が拡大してもその恩恵を享受することはない。

 大手のエアラインにとっても、自社で運行する場合の多額の固定費を削減できるなどメリットは大きい。

 今回の協議会では、大手エアラインからの受託だけでなく自治体や地元経済界と連携し、販売やマーケティングを地元で、実際の運航は新たな航空会社で受託する形を模索している。

 しかし、地方路線を飛ばすとしても、収益性の観点から多くの路線が縮小均衡の傾向にある。委託することで効率性は向上するとしても、根本的な解決にはならないのではないだろうか。

 

MRJのターゲットは観光インバウンド

 

 新たな需要をどこで創造するか、その答えがアジアだ。

 日本の数少ない成長産業のひとつである観光産業、特にアジアからの訪日観光客を取り込むことがカギになる。

 昨年、訪日外国人観光客は1千万人を超え、政府としては20年までに2千万人を目標に掲げている。この流れに乗って、観光インバウンドをアジア各地から直接日本の地方空港へと導こうというのだ。

 現在の羽田や成田などからの乗り継ぎよりも速く、気軽に訪れることができる。しかも、小型機ならではのコンパクトさが強みになる。国内幹線で使用されるボーイング787型機の座席数は330席ほど。LCCが主に使用するA320型機でも180席ある。ところが、MRJは70〜90席しかない。バスで考えれば2台分もない上に、低い運航コストを誇る最新鋭機だ。

 地方ごとに販売やマーケティングなどを行う航空輸送事業者が誕生し、運航業務は、スカイウエスト航空のような新たなリージョナルエアラインに委託される時代が来れば、地方独自の戦略で観光インバウンドでの経済効果はもちろん、地方空港の活用も進むはず。

 だが、それにはまだ越えなければならない課題が数多ある。

 ひとつは、まだ現状の航空法の下では機材の運航と販売などの分業が認められていないこと。また、小規模多頻度運航に対応するパイロットや整備士の人員不足という問題もある。加えて、既にJALもANAも子会社ジェイエアやANAウィングスなど、リージョナルエアラインを持っており、既存の会社との調整が必要となってくる。

 その点については、「既に両航空会社とも話し合いを始めており、最適な道を探しています。路線についても、採算が合わずに撤退した路線などを考えており既存の航空会社とバッティングすることはありません」(佐髙氏)とのことだが、調整の行方が成否のカギを握ることになろう。

 協議会は、既に国土交通省に法改正や規制緩和を働き掛けており、課題の解決を図っている。また、この新たなスキームを地方自治体も興味深く見ているようで、地理的にアジアに近い九州の関心が高いという。

 将来を見据えれば、このプロジェクトを形にすることで、爆発するアジアの航空需要に対しても、日本企業、特に協議会の中心である三菱商事の新たなビジネスになりそうだ。

 MRJが提供する小規模多頻度の新たな航空モデルは、地域経済の大きな武器となる可能性も秘めている。

(文=本誌/古賀寛明)

 
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