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「LINE」は持続的成長が可能か

LINEをはじめ、競争激しいメッセンジャーアプリ業界

2014年7月に東京証券取引所に上場する方針を明らかにしていたLINEが、年内の上場を見送ることとなった。同じく、予定していたニューヨーク証券取引所への上場も延期となった模様だ。時価総額は1兆円を超えるとみられていただけに、市場関係者に与えた衝撃は大きい。ただ、引き続き上場のタイミングを見極める方針だという。ここでは、上場後に同社が持続的成長を遂げるための課題を整理することとする。

LINEをはじめ、競争激しいメッセンジャーアプリ業界

 LINEの利用者は、日本で5200万人、全世界で5億人を突破したと報じられている。しかし、日本でこそLINEはメッセンジャーアプリの代表であるが、世界的にみると、Facebookに190億ドルで買収されたWhatsApp、楽天が9億ドルで買収したViber、中国テンセントが提供しているWeChat、韓国のカカオなど競合するアプリが多数存在している。2015年までにLINEは利用者10億人を目指しているが、実現可能だろうか。

JAPAN-ECONOMY-FORUM 世界最大のメッセンジャーアプリであるWhatsAppは、ブラジル、インド、メキシコ、ロシアなど新興国での成長が著しく全世界で利用者が10億人を突破し、そのうちアクティブユーザー数は14年4月に5億人を突破した。LINEは全世界で4億8千万人といわれているが、そのうちどのくらいが利用しているかは公開していない。

 メッセンジャーアプリの多くは無料でダウンロードできるため、1人で複数のアプリをダウンロードし、相手に応じて使い分けていることが多い。つまりどれだけダウンロードされていても利用されなければ意味がない。上場以降はLINEもアクティブユーザー数の開示を求められる可能性が高い。

 メッセンジャーアプリは利用してもらうことが重要である。新興国や欧米においても、コミュニケーションの中心が電話やショートメッセージ(SMS)からメッセンジャーアプリに移行しつつある。

 LINEが今後、WhatsAppやWeChatなどライバルとの差を埋めるためには、海外市場でのさらなる認知度向上に向けて多くの広告宣伝費と、利用者を惹きつける新サービスの開発費用が掛かるとみられる。

LINEの強み 差別化として有効なスタンプ

 海外のアプリと競争するにあたってLINEの最大の強みは、スタンプの提供であろう。

 LINEは14年8月20日、LINEスタンプの制作・販売プラットフォーム「LINE Creators Market」における販売実績を公開した。14年5月8日にLINE Creators Marketでスタンプの販売が始まり、8月19日までの3カ月間のLINE Creators Market全体における販売総額は1億5千万円であることを発表した。

 また6月にはLINE Creators Marketの販売対象国を従来の日本、タイ、台湾、インドネシアの4カ国から全世界に拡大し、現在では124カ国にまで拡大している。販売地域の拡大に伴い、対応言語も追加、スタンプ販売時の販売希望地域を選択することができるようになった。

メッセンジャーアプリをめぐる世界の動向 8月19日時点で登録クリエイター数は14万9千人、登録スタンプは3万以上で、購入されたスタンプは1241万セット、販売総額は12億3千万円になった。LINEにとってはこのスタンプ販売が他アプリとの大きな差別化となり、ゲームに次ぐ収入の柱の1つになるだろう。

 LINEでのスタンプ販売は、売り上げの50%がLINEの収入である。NTTドコモが提供している「iモード」でもNTTドコモの取り分(課金代行手数料)は9%であることから、いかに大きいかが分かる。

LINEを支えるゲームの一寸先は闇

 LINEの13年の売り上げ構成を見ると、基本は無料だがアイテム課金で収益を上げるゲームが約60%、スタンプが約20%とゲームが売り上げの半分以上を占めている。

 しかしゲームは利用者の移ろいが激しく、飽きられてしまったらあっというまに逃げられてしまう。その代わり一発当たれば非常に大きいのもゲームであり、瀕死寸前だったmixiを救ったのもゲームである。メッセンジャーアプリだけの利用では大きな収入は期待できない。

 これからは日本だけでなく、世界中の多くの人にゲームを利用してもらうかがLINEにとって重要となる。そして常に新しいゲームを開発し、世界に発信していかなければならない。また、LINEのゲームはネットワークに接続されていることで楽しむゲームであるため、LINEの利用者が急増している新興国では、その環境にないことが多く、ゲーム利用者の獲得、すなわち収入の確保には苦慮するだろう。

 利用者が移ろいやすいゲームは当たり外れが大きく、まさに「一寸先は闇」である。

一番の懸念は利用者の「LINE離れ」

 14年に入り「LINEが乗っ取られた」という事件が頻発している。これは個人のLINEのアカウントを悪意ある第三者に乗っ取られ、LINEでの友人や知り合いに、本人を装い、電子マネーの購入をするようにもちかけ、騙し取るという詐欺である。

 この対策として、LINEはパスワードの変更などを呼び掛けているほか、第2パスワードの設定をユーザーに義務付ける方針を発表した。

 LINEのアカウントを乗っ取られ、友人や知人に迷惑をかけた人は、もうLINEを使いたいとは思わないであろう。LINEはコミュニケーションのプラットフォームとして広く普及してきてはいるが、LINEがなくても携帯メールやソーシャルメディア、他のメッセンジャーアプリなど代替可能なコミュニケーションツールはいくらでも存在している。多くの人にとってLINEは「ないと生きていけないサービス」ではない。

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マレーシアのマクドナルドではLINEをフォローすると
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 LINEのようなメッセンジャーアプリは多くの利用者を抱えることによって、その利用者にスタンプやゲームを利用してもらうことによって収入を得ようとするビジネスモデルである。そのためLINEにとって一番恐ろしいのは、利用者のLINE離れである。

 特に日本人は移ろいやすく、いっせいに新しいサービスに飛びつく傾向がある。

 かつて日本においてSNSの代表はmixiだったが、Facebookが登場以降、利用者はいっせいにFacebookを利用するようになり、mixiを利用しなくなった。LINEもいつまでも安泰ではいられない。

 LINEもやがて新たに登場してくるサービスに抜かれて、利用者を奪われ、凋落してしまうかもしれない。LINEにとって一番恐ろしいのは、利用者の離反である。

 このようにLINEは上場で資金を調達して、さらに海外市場での利用者の拡大やゲーム開発への投資が必要になってくる。スタンプを差別化にして、世界中の人々のコミュニケーションの中心になり、さらに楽しいゲームで世界中の人々を常に引き付けておくことができるかが、LINEが上場後も持続的に発展していけるかどうかのカギになるだろう。

(文=佐藤仁・情報通信総合研究所副主任研究員)

 
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