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西武HDの上場後の躍進 成長戦略のスピードを上げ、小さく産んで大きく育てる

後藤高志氏

この春最大の大型上場といえるのが、西武ホールディングスの上場だ。株価は懸案事項でもあったが、上場後は極めて順調に推移している。豊富な不動産資産や、観光立国の政策とリンクする事業を抱える潜在能力が評価された結果だが、上場を機に、高い潜在能力を生かすべく成長戦略を加速している。

株価がフェアコーポレートバリューに到達

 西武ホールディングス(西武HD)は4月23日に東京証券取引所第一部への株式上場を果たした。上場前の3月の目論見書の記載価格は2300円であり、その時点での時価総額は関東の私鉄でトップに躍り出ると試算され、この春最大の大型上場として期待は高かった。しかし、上場前後の株式市場の低迷の影響を受ける形で、この2300円が割高と判断され、最終的には1600円の売り出し価格での上場となった。当初の想定よりは下がったが、時価総額は関東の私鉄で東京急行電鉄、小田急電鉄に次ぐ規模となっている。

後藤高志

後藤高志・西武ホールディングス社長

 西武HDの株価をめぐっては、昨年も筆頭株主である米投資ファンド・サーベラスグループとの争いの争点となり、敵対的TOBにまで発展。結果的にTOBは失敗に終わったものの、サーベラスの出口戦略としては2千円前後の株価が必要とされていた。上場に当たって、サーベラスは当初、35%の保有株のうち約15%を放出する予定だったが、1600円の売り出し価格を受けて売却を見送った。サーベラス側は現在、西武HDの経営方針を支持するとしているが、上場後の株価の推移が新たな火種となる可能性があった。

 結果的にはそうした懸念を一掃する形で、上場後の株価は順調に推移している。春先の上場の事例では、公開価格が初値を下回るケースがある中で、公開初日の初値は売り出し価格どおりの1600円、終値は1770円を付けた。一度も公開価格を下回ることはなく、5月に2千円を突破、6月には目論見書の記載価格である2300円に到達した。その後いったんは下げたものの2千円台をキープし、8月には上場後の最高値2396円を付けた。

 4月23日の上場時の記者会見で、後藤高志社長は、2300円という価格について「フェアコーポレートバリュー」であるとした。そして「初値が1600円で記載価格の2300円から下がってしまったが、成長戦略をスピード感を持って達成することによって株主価値を高めていく。そうしたことを反映して株価も上がっていく。小さく生んで大きく育てるのが私の責務と考えている」と語った。

 上場後半年の動きを見る限り、ここまでは後藤社長が語ったどおりに順調に来ている。

企業価値極大化に向けて成長戦略を加速

 現在、西武HDでは「既存事業の強化」と「長期的な事業基盤の確立」をコンセプトに中期計画を実行。上場を機に施策遂行のスピードは着実に速まり、この数カ月の間でも、さまざまなプロジェクトを加速させている。

 グループの一大プロジェクトであるグランドプリンスホテル赤坂跡地の開発計画「紀尾井町プロジェクト」が着実に進展。同プロジェクトは2016年夏の竣工を予定しているが、6月の時点でキーテナントとしてヤフージャパンの入居が決定した。

 また、鉄道事業のターミナル駅のある池袋エリアと所沢エリアの再開発計画を発表した。池袋エリアでは池袋駅のリニューアル工事に着手したほか、池袋の西武鉄道旧本社ビルの建て替え計画を見直し、18年度竣工予定で建て替え敷地を拡大。池袋エリアトップクラスのオフィス賃貸面積を確保し、不動産事業を強化する。所沢エリアでは東口に20年春竣工予定でコミュニティ型商業施設を中心とした駅ビルを建設するほか、西口では所沢車両工場跡地を有効利用し、広域集客型商業施設を核にした大規模開発を検討している。さらに沿線で利便性向上の施策を展開し、沿線の価値向上を進める。

 7月には軽井沢エリアにおいてプリンスグランドリゾート軽井沢の機能を強化した。まず別荘型宿泊施設「ヴィラ」、サービス提供施設「センターハウス」で構成される「ザ・プリンス ヴィラ軽井沢」をオープン。さらに軽井沢72ゴルフ 東コースにクラブハウスを新設したほか、軽井沢・プリンスショッピングプラザの第7期増床を行った。これらにより、今後増加するアクティブシニア層やインバウンドの需要に対応するという。こうした施策を通じて、企業価値の極大化を目指している。

 10月19日には、上場時に株売却を見送ったサーベラスの売却禁止期間が終了する。現状の株価はサーベラスが当初望んでいたとされる範囲で推移しており、今後の動向に注目が集まる。西武HDとしては特定株主の動向についてコメントしない方針で、サーベラスの動向にかかわらず、引き続き企業価値、株主価値の向上に努める構えだ。

(文=本誌・村田晋一郎)

 

 
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