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経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

再建に向け成長戦略が問われるシャープ

髙橋社長

 金融機関の全面支援を受けて、経営再建を進めているシャープ。構造改革から再成長ステージへの飛躍を目指すが、財務体質を含めて課題は少なくない。スマホ戦略で躓いたソニーと同じく、明確な成長戦略を打ち出す必要がある。

株価が低空飛行する理由

 株価は正直である。シャープの再建を市場は疑っているのだろう。

 9月30日の同社株価の終値は312円。ちょうど1年前の終値が360円だから、13%下落した計算だ。一方、関西の赤字兄弟と言われたパナソニックの株価(9月30日時点)は1300円を超え、この1年で40%程度上昇した。パナソニックは車載事業を成長ドライバーに据え、米国の電気自動車(EV)メーカーであるテスラモーターズとの合弁工場に1千億円を超える投資を行い、スペインの自動車部品大手の株式を200億〜300億円で取得する。シャープと言えば9月に迎えた1千億円の社債償還をやっと乗り越えた始末。同じ「しゃさい」でも大違いである。

 社債償還の山は越え、業績は底入れした。これまでに3千人もの希望退職を募り、欧州のテレビ生産からの撤退や太陽電池事業の大幅縮小、パイオニア株の売却決定など「特損計上は覚悟の上。売れるものはすべて手放し、再生にかける」(関係者)。2011年度比で1兆1670億円超の固定費削減を実現するなど、着実に損益分岐点も下がっており、格付け大手のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)はシャープの格付け見通しを「ネガティブ」から「安定的」に変更した。それでも株価が低空飛行を続けるのはなぜか。

髙橋社長

早期退任もささやかれる髙橋社長

 理由のひとつはいまだに1兆円(14年6月末時点)を超える有利子負債を抱え、事業ポートフォリオを変革するようなM&Aに回せる投資余力に乏しいことだ。今も昔もシャープの成長軸が液晶事業であることに変わりはない。全社売上高の3分の1を占め、営業利益の半分を同事業で確保する。牽引役はスマートフォン搭載の中小型液晶。「4〜9月期の中国スマホメーカー向けの売上高は前年同期比5倍の1千億円に達する」と髙橋興三社長が明かすなど、中国向けが伸びる。

 過去は米アップル向け一辺倒でiPhoneやiPadの販売に業績が左右されてきたが、一昨年来進めてきた多角化戦略が実を結んだ。約13社の中国スマホメーカーと取引があり、中でも「中国のアップル」と言われる最大手シャオミ(小米)向けが寄与する。シャオミと言えば創業4年で首位の韓国サムスン電子を抜き去ったという新興メーカーの象徴。シャープが液晶パネルの7割を供給していた。

 ところが、現地で流れた報道によると、中国パネル大手のBOEがシャオミのサプライチェーン入りに成功した模様で、シャープの供給比率が下がる可能性があるという。さらに、ライバルのジャパンディスプレイもサプライチェーンに入った。

 不安要素はこれだけではない。シャープは中国向けのパネル供給を拡大するため、第6世代の亀山第1工場の液晶製造設備の買い取りをアップルに打診しているが「実現は難しい」(関係筋)。同工場はアップルが製造設備に投資したiPhone向け専用工場。足元では最新機種iPhone6の立ち上がりでフル生産だが、年末商戦明けの「1〜3月は減産が予想される」(アナリスト)。

 端末メーカーの事情に振り回されるのがデバイスメーカーの弱みで、それを克服するには供給先を増やすしかない。中国向けである程度、それは成就した。しかし、アップルが設備買い取りに首を縦に振らないので、やむなく第8・5世代という巨大な亀山第2工場で中小型液晶の増産投資に踏み切るが、同工場はもともとテレビ用液晶パネルの工場で、中小型には向かない。

 9月17日、シャープは中小型液晶の比率を現状の5割から17年に8割以上に引き上げる方針を打ち出した。1枚のガラス基板から500枚以上のスマホ用パネルを製造できるという。別の見方をすると「つくれ過ぎ」てしまい、パネル業界の需給バランスを崩し、結果的に値下げ競争を招く恐れがあるのだ。

タイムリミットは来年3月

 一方、良い話題もある。飛ぶ鳥を落とす勢いのソフトバンクがシャープ製のスマホを日米で売り出すと発表した。

 また、パネル関係では、曲げられる液晶ディスプレーの実用化や米クアルコムと共同開発した超省エネ型の微小電気機械システム(MEMS)駆動ディスプレーの17年の量産開始、ボールペンで入力できる液晶パネルなど、可能性を秘めた独自技術を相次ぎ公表している。白物家電は堅調で、緑茶抽出機「ヘルシオ お茶プレッソ」は久々のヒット商品となり、月産台数を当初計画比5倍の2万台に引き上げた。中国では空気清浄機がばんばん売れる。

 ただ、白物家電は中国、韓国勢とのシェア争いが激しく、世界大手の米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスが撤退するほどだ。新型ディスプレーは採用まで時間がかかり、育つまでには数年かかるだろう。

 「リストラは順調だが、来年3月までに確固たる成長戦略を打ち出せなければトップ交代もありうる」(取引先関係筋)と言われる。後継が育たぬうちにころころ社長が交代するのはいかがなものかと思うが、社内の風土改革にかかりきりの髙橋社長に残された時間は多くない。

(文=ジャーナリスト/高田 仁)

 
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