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消極姿勢から一転?! トヨタが中国でEV販売の現実味

内山田竹志会長

 燃料電池車(FCV)、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)の全方位で、「エコカーの盟主」の地位を守りたいトヨタ自動車。このためには、主に日米にとどまるHV販売を中国に広げることが課題だが、今後の展開次第では、中国でEV販売を行う可能性も出てきた。

EVに力を入れる中国とトヨタの焦り

 トヨタ自動車のエコカー戦略の方向性が定まってきた。20〜30年かけてFCVを世界に根付かせる息の長い戦略を描きつつ、HVを当面の稼ぎ頭として海外展開を急いでいる。

内山田竹志会長

トヨタはEV開発に本腰を入れるのか(写真は内山田竹志会長・Photo/AFP=時事)

 さらに、ここにきて、中国でトヨタがEV販売を行うとの観測も浮上し始めた。これまで、同社が取り組みに消極的と見られてきたEVだが、都市部の短距離用途に活路があると判断し、国や都市を巻き込む形で普及を図っていく方針。ある中堅証券会社の社長は、こう話す。

 「エコカーは、各国政府の政策ひとつでどうにでもなる。『わが国はEVでいく』との方針が決まれば、いくら長距離走行ができない、とEVの課題を指摘しても揺るがない」

 背景には、中国でトヨタのHVが根付くかが依然不透明という事情がある。現在、中国ではHVへの購入補助金はない。「プリウス」を購入する場合には、中国人は、日本の販売価格に比べて3〜7割高い金額を支払わなくてはならない。現地のディーラーによると、中国の消費者は「環境に興味がなく、なかなか目を向けてくれない」のが実情だ。見栄えや格を重視する中国人にとって、プリウスは価格と見合わない「車格」の車とされており、独フォルクスワーゲン(VW)、アウディ、米ゼネラルモーターズ(GM)が人気を博す。しかも、独米勢は、今後のエコカー戦略として、中国では、EVの販売に力を入れようとしている。

 微粒子状物質PM2・5が拡大し大気汚染が深刻な中国で、政府が一気に解決できる車として、普及をもくろんでいるためで、独ダイムラーや米テスラモーターズが中国でEV販売に本格参入するのも、「中国政府の本気度をかぎ取ったため」(専門紙記者)だ。

 既に、EVの先駆者である日産自動車の中国合弁会社の東風日産は、大連市に9月から販売し始めたEV「e30」を年末までに1千台納入することが決まっており、大連市は公用車やタクシーとして活用する方針だ。

 日欧米のライバル各社とも、トヨタが根付かせたいHVを全力で阻止する構えで、「現地でトヨタ包囲網を敷いているとの噂すら出ている」(業界紙記者)。

 一方で、「エコカーの盟主」を自認するトヨタとしては、日米以外にHVの販売を広げることが、HV普及の絶対条件。補助金を是が非でも獲得して、販売コストを下げて普及に導きたい考えだ。

 2013年の上海モーターショーで、プリウスの生みの親である内山田竹志会長が出向き、「ガソリン消費量が半分になるHVを現実的な省エネ車として中国に根付かせたい」と発言したのも、中国重視の姿勢を中国政府へアピールするためだ。

 トヨタは先ごろ、15年秋にも、年間6万台規模でHVを量産する方針を固めた。海外で開発から生産までを現地で一貫して行う初の試みだ。高い燃費性能に加えて、現地生産することで関税がなくなるメリットを生かし、低価格化を実現する構えだ。中国専用車として、中国重視の姿勢もアピールする方針だが、補助金なしとなれば、やはり同じ車格の車に比べて、明らかに割高となる。補助金を政府に出させることがトヨタの悲願だ。

EV主体で進みたい中国政府の思惑

 一方で、ここにきてささやかれるのが、トヨタの中国市場におけるEV参入だ。

 実際、自動車業界では「HVに補助金が出ずに苦戦を強いられた場合の保険としてEVの販売を検討し始めたとの噂がある」(全国紙経済部記者)。

 根拠のひとつは、トヨタが10月から仏グルノーブル市で超小型電気自動車(EV)のカーシェアリングサービスを始めたことだ。これは、同市や仏電力公社などと組み、渋滞や大気汚染などの都市交通の課題解消を図る実証実験で、期間は3年間限定。グルノーブルでは、市内27カ所の充電器付き駐車場に停めてある超小型EVを有料で貸し出す仕組みで、どの駐車場に返却しても可能な乗り捨て型のサービスとなっている。

 同市で会見した内山田会長は、「明日の都市交通を築きたいとの思いで実施する。トヨタにとっても新たな成長領域になる」と話した。今後、超小型EVを中国政府や市などに売り込む可能性は十分考えられる。

 中国政府は、公用車のうち、3割をEV、PHV(プラグインハイブリッド車)、FCV、太陽光発電自動車とする計画を持つとされる。これまでも、EVの普及に取り組んできた中国政府がインフラとセットで、超小型EVを普及させれば、これまでの「EVで環境問題を解決する」としていた政策の延長線上で進められる。前述の中堅証券会社社長は、「中国政府は、失政といわれることにすごく敏感。だから、EV中心にエコカーが動くことは間違いない。トヨタが中国だけでEV販売をやるとなれば、政府も全面的にバックアップするはずだ」と分析する。

 現在、トヨタは、EVに関しては走行距離に課題があるとして、研究開発の比重をHVの改良やFCVにかけているが、EVの開発にも軸足を置く日は近いとされる。業界関係者はその日がいつか、固唾をのんで見守っている。

(文=ジャーナリスト/岡部太一)

 
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