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法人税減税ですれ違う自民党税調、財務省、経団連の思惑

野田毅・自民党税調会長

 来年度からの実施が決まった法人税減税の具体化をめぐり政官財の考えに溝が生じている。キープレーヤーとなる自民党税制調査会と財務省、経団連の主張は大きく食い違い、年末の与党税制改正協議に向け、調整の難航は必至だ。

法人税率下げ幅などで自民党税調、財務省、経団連がバトル

 「総論賛成、各論反対」。

 首相の諮問機関、政府税制調査会で、法人税改革を議論する部会の取りまとめ役を6月まで務めた大田弘子・政策研究大学院大教授は、法人税減税を実現する難しさをこう表現する。改革の方向性は同じでも、個別事項の見直しになると、立場によって利害が異なり〝同床異夢〟となることをたとえたものだ。

野田毅・自民党税調会長

多様な意見を自民党税調はどう取りまとめるのか(写真は野田毅・自民党税調会長、Photo/時事)

 政府は、6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」に、現在、標準税率で34・62%、東京都は35・64%の法人実効税率について「来年度からの数年間で20%台への引き下げを目指す」と明記した。ただ来年度からの下げ幅は示さず、減税に際しては「恒久財源の確保」と記し、具体策は年末に向け議論し、結論を得るとした。

 ただ減税の具体化を巡りカギを握る自民党税調、財務省、経団連の考えは大きく異なる。特にずれているのは「何年で何%」下げるかということと代替財源をどう確保するかの考え方だ。

 下げ幅については、経団連は9月にまとめた法人税改革の提言で「来年度は2%幅下げ、2017年度に20%台」とした。これに対し、自民党税調の野田毅会長は「5年程度で20%台」との認識を示し、財務省は「代替財源をどれだけ捻出できるか次第」と慎重なスタンスだ。

 実効税率で東京都の基準か、標準税率を出発点にするかの意見も食い違う。経団連は「日本のビジネスセンターである東京都を基準とすべき」(佐々木則夫副会長)とし、甘利明経済再生担当相も同意見だ。これに対し自民党税調の野田毅会長、麻生太郎財務相はいずれも「標準税率が出発点」と譲らない。標準税率を基準とすれば20%台までの下げ幅は4・63%。一方で東京基準だと5・65%を最低下げる必要がある。財務省では、実効税率1%の引き下げで約4700億円の税収減になると試算する。

 このため、財政健全化に配慮し、自民党税調、財務省は「標準税率スタート」説を譲らず、経団連や甘利氏との意見の隔たりは埋まらないままだ。

 税率の下げ幅以上に集約が困難なのが代替財源の確保策だ。財務省は7割の企業が過去の赤字などを理由に、法人税を支払っていないとして、赤字を放置すると増税になる一方、黒字を増やすほど減税になる仕組みを法人税減税とのセットの改革で実現したい考え。そのためのメニューとして、2つの〝レシピ〟を用意する周到ぶりだ。

 ひとつは、決算の赤字を翌年度以降の黒字から差し引く「欠損金の繰り越し控除制度」の見直し。毎年度の上限額を減額し、赤字になった企業の利点を小さくする方向で検討する。欠損金の繰り越し控除は現行では最大9年にわたって赤字を繰り越せ、大企業では各年度の黒字額の80%までを差し引ける。繰り越せる期間は延期せず、限度額を60%に下げる案が有力だ。

 もう1つが、地方税の法人事業税の一部として導入される外形標準課税の大企業向けの課税強化だ。所得に応じて黒字企業に課税している法人事業税の「所得割」(14年度の税収で2・2兆円)を減税する一方、赤字企業も対象で、従業員の賃金を中心に課税される外形標準課税の中の「付加価値割」(同0・4兆円)を増税する案が有力。黒字企業だと税負担が減り赤字だと負担増になる。この「アメとムチ」となる新たな仕組みで、企業の収益力強化を促し、減税後も結果的に税収を減らさない狙いだ。

献金再開で影響力増す経団連を自民党税調は無視できず

 いずれの改革が財務省の思惑通り進めば2%程度の税率引き下げの原資になる見通しだ。しかし経団連は、財務省の有力レシピに対し「待った」をかける。

 欠損金の繰り越し控除の期間は据え置いたままで、控除額を減らす案には「控除額は現行水準のまま、むしろ期間の延期」を要望。外形標準課税の強化についても(1)賃金を増やした企業に対する配慮(2)十分な移行期間を設ける(3)中小企業に課税対象を広げない、という厳しい条件をクリアすれば容認できるという極めて慎重なスタンス。税の付け替えで企業の負担が法人税減税前と同じでは意味がないとの立場で、減税の財源は安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」で上ぶれた税収を充てる方策を主張している。

 結局、法人税減税のカギを握るのは毎年の税制改正に強い影響力を持つ自民党税調。「恒久減税には恒久財源が必要」という立場は財務省と同じだが、財源確保策については、思惑が一致しているわけではない。税調メンバーは、外形標準課税の強化については一定の理解を示すが、研究開発費を増やした企業などを税優遇する租税特別措置の縮小・廃止については極めて慎重で、態度は経団連に近い。

 さらに代替財源の捻出策をめぐる議論の不透明要因が、経団連の5年ぶりの政治献金の再開だ。経団連は政治献金で政権とのパイプを強化する考えで、自民党税調にとっても意向は無視できないわけだ。

 自民党税調は、来年度の税制改正には課題が山積するとして例年より1カ月以上議論を早め、10月上旬からスタートさせた。政官財で異なる意見をどう取りまとめ、具体化につなげるのか。議論の行方は波乱含みだ。

(文=ジャーナリスト/山城一也)

 
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