スイングの「コツ、秘訣、ヒント、イメージ」はさまざまなものが巷にあふれている。こうした表現は受け取る際に注意が必要だ。そのまま字句どおりに再現しようとしてもできないものがあるためだ。一例を挙げ、その理由を考えてみよう。
主観と客観的事実を区別する重要性
例えばダウンスイングについて「切り返しで早くヘッドを戻さないと振り遅れる」と言う場合があります。特に「最近のラージサイズのヘッドは振り遅れやすいのでこの意識が必須」と断言されることもあります。

切り返してすぐに手首の角度をほどいてヘッドを進ませる動きがキャスティング。アウトサイド・インになりやすい
まだ手が高い位置にある段階で、手首のコッキングをほどいてヘッドを戻す動きはキャスティング(釣り竿を振り出す動き)と呼ばれ、軌道を乱すだけでなく、スイングの力をロスする典型的なエラー動作です。スイングを指導する人がこのエラーに導こうとしているはずはありません。
「私はヘッドを早く戻している」と主張する人のスイングを確認しても、実際にはキャスティングしていないものです。もともとタメができすぎてしまうタイプの人にとっては、それを矯正するために極端な正反対のイメージをもってちょうどよくなった経緯があるのだと思われます。
このように個人的な成功体験にもとづいて「スイングのコツ」と喧伝された表現が実は多く流通しています。もちろん、同じ理由で同じように振り遅れていた人にとっては、この「コツ」は福音となるでしょう。
でも、違う原因を持つ人が「振り遅れているから、切り返しでヘッドを戻し始める」というコツを試しても改善にはつながらないでしょう。個人的な経験が他人には当てはまるとは限りませんし、自分の感覚と現実に起こっていることのギャップがあるのですからなおさらです。「早く戻す」といっても「今までの自分のタイミングよりも」という補足が省略されているため、字句どおり受け取っても同じことを再現できるはずがありません。

客観的事実とゴルファー本人が感じていること(=主観)が異なることは多々あり、これらを分けて考えることが重要です。「事実として同じ動きをしているのに、主観の表現はまるで逆になる」ことやその逆もまたよくあります。
そのためこのような「コツ」を自分で受け入れるかどうか決める際には、発している人のスイングタイプやそれが出てきた経緯、そして主観なのか事実なのかを見極めることが重要なのです。
この連載は論理的な解説を主眼にしているため、事実を積み重ねた説明に終始しています。頭で正しく事実を理解し、イメージを描いていただきたいからです。
しかしさまざまな主観も、よい動きを引き出すヒントとして活用することが有効な場合もありますので、完全に否定するものでもありません。
次回からは、ダウンスイングの勘違いと真実のメカニズムについて説明していきますのでご期待ください。

CEOゴルフのポイント
□ 主観と客観的事実を分けてスイング作りにとり入れる。
□ 事実として現れているのは同じ形でも、原因が違えば矯正の仕方が異なることもある。
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