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経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

清水建設のGREEN FLOAT 既存都市からは生まれない技術革新を求めて

居住ゾーンは300フロア。

清水建設のプロジェクト「GREEN FLOAT」とは

 

 100年後の東京で、どのような技術革新が起こり、新しい都市になるか想像することは難しい。その中で、遠い未来の東京の姿を想像するヒントとなるプロジェクトが、清水建設を中心に行われている。そのプロジェクトの名は「GREEN FLOAT」だ。

竹内氏

「都市間競争で主導する都市は既存都市の制約から解放された都市」と語る竹内氏

 GREEN FLOATは直径3千メートルの人工浮体島で、その上に高さ1千メートルのタワーが立つ。上層部には3万人が住み、生活できるコンパクトシティを備え、タワー部分は食糧自給率100%を目指した植物工場を設置。水辺部分でも田園生活ができるような居住区やリゾートなどが置かれる。他の地域で排出されるCO2を吸収する仕組みや、化石燃料に頼らない100%再生可能エネルギーで24時間生活できる植物質な未来都市構想だ。

 この人工島は台風やハリケーン、地震や津波の影響を受けずに安全安心な街を維持できることなどから、赤道直下の太平洋沖に浮かべる想定で、清水建設は2030年に着工できるように産学官連携で技術開発を進めている。

 バブルの頃は各企業に余力があり、多くの企業にGREEN FLOATのような「未来プロジェクト」と称した技術由来の計画が存在した。しかしバブル崩壊により現実的な計画を作るだけになっていた。清水建設では08年、宮本洋一社長の提唱により、設計、施行、技術研究開発、エンジニアリング、投資開発という企業の総合力を発揮できるプロジェクトの構想が始まった。プロジェクトリーダーの清水建設環境・技術ソリューション本部の竹内真幸本部主査は、この構想には同社のDNAが生きているという。

 「当社は100年に1度は大きな挑戦をしています。例えば、築地ホテル館という幕末の開国直後に幕府が企画した日本初のホテル。これは当社が建設し、経営しました。完成時には既に発注元は消滅していましたが、やり遂げたという歴史があります。当社には大きなチャレンジをする遺伝子があるのです」

 完成イメージを見ると漫画などに登場しそうな佇まいだが、決して実現不可能な計画ではないと竹内氏は言い切る。実際の技術開発の現場では半年〜2年程度で結果を出さなければいけない。そのため、「理論的には可能」という長期テーマに挑戦できずにいた。だがGREEN FLOATは技術のブラッシュアップする場として大きな役割を果たす。

 

技術検討が続くGREEN FLOATと清水建設の提案

 

居住ゾーンは300フロア。1戸当たり平均200平方メートルで、約1万戸を想定する

居住ゾーンは300フロア。1戸当たり平均200平方メートルで、約1万戸を想定する

 構想発表から6年、現在もGREEN FLOATで使う技術検討は産学連携で続く。

 例えば秋田県立大や静岡大とは赤道直下で稲作ができる米の品種を検討する。これは砂地で育ち、暑さに耐えられる品種で、アフリカ大陸でも育つ。海水温度差発電も佐賀大と連携して研究を進める。一方で、タワーを作る構造材料として海水を原料とするマグネシウム合金の研究はまだ後れをとっているようだ。

 この構想は、30年に50兆円規模で着工できるとされる。実際に太平洋の島国で、国土水没の危機にあるキリバス共和国のアノテ・トン大統領はGREEN FLOATの実現に期待しており海外メディアも注目している。

右がタワーの外観。1つの人工浮体島を街区とし、複数集めて都市や、国家をつくることも可能(左上は鳥瞰図)

右がタワーの外観。1つの人工浮体島を街区とし、複数集めて都市や、国家をつくることも可能(左上は鳥瞰図)

 「経済学者のシュンペーターはイノベーションという言葉を説明するのに『馬車を100台つなげても汽車にはならない』と言っていますが、まさにそのとおりです。われわれも既存の都市開発を行い、古い建物を新しくしています。ただ、そこから雇用や技術改善は生まれても、新しい産業や斬新な技術イノベーションは起こりません。まだ見えない未来の社会ニーズを見極め、都市構想として提言することもわれわれの重要な役割と考えています」(竹内氏)

 30年、計画通りこのプロジェクトが着工となるかは、今はまだ分からない。しかし、ここで生まれるスマートグリッドなどの技術は、東京をはじめとする都市開発に生かされてくるかもしれない。その動向に今後も注目する価値がありそうだ。

(文=本誌/長谷川 愛 写真=西畑孝則)

 
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