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どうなるカジノ建設、五輪めぐり入り乱れる官民の思惑

ニュースレポート

 IR整備推進法案の審議入りは11月初旬ともいわれるが、雲行きは怪しい。安倍晋三首相が「本気」であり、各所の動きが慌ただしく現実味が帯びてきたがゆえに、与野党だけでなく、賛成派内でも意見集約は進まない。その背景には産業界や地方自治体の思惑も影響している。

「2020年までに」のタイムリミット

 IR推進法案を進めている超党派の「国際観光産業振興議員連盟(IR議連)」は10月16日、カジノを解禁する場合、日本人の利用については一定の規制を定めていくといった修正案をまとめた。これをもとに、与野党が法案修正を進めることとなる。修正案はそもそも、ギャンブル依存症への懸念が大きく、公明党が慎重論を展開していることから作られたが、その後も公明党の慎重論が覆ることはなく、状況は厳しい。

今年5月、安倍首相が訪問先のシンガポールで視察した統合型リゾート施設「マリーナ・ベイ・サンズ」

今年5月、安倍首相が訪問先のシンガポールで視察した統合型リゾート施設「マリーナ・ベイ・サンズ」

 IR推進法の成立後は、1年以内に詳細を取り決めた実施法案を作らなければならない。今強硬に進めて実施法を成立させる工程で覆されてはならないということで、与党内では穏便に意見をまとめたいという思惑がある。しかし、安倍政権が「東京オリンピックに合わせて開業」を掲げている以上、今後の工程を考えるとタイムリミットは過ぎているとみるのが自然だろう。公明党が立場を決められない今、関係者からは「今国会で成立させるのであれば、各党が立場を決めずに自由投票で成立を目指す強硬策のほか、方法がない」との意見も聞かれる。

 電通のIR・観光プロジェクト部長の岡部智氏は、「IRに関する情報に対して企業からの問い合わせを受ける機会は多く、ビジネスチャンスをうかがっている企業は少なくない」とするが、産業界の具体的な動きもまだ始まっていない。ガイドラインさえ決まれば、その枠組み内で動きたいという様子見状態が続いているのが実情だ。

 企業が参入に向けて大きな動きを見せず、支援に回らない要因の1つには、経団連の立場がいまだに定まっていないことが大きい。内々には勉強会や検討会を重ねているが、各企業、業界がおのおのの思惑があることから、足並みはそろっていない。

 東京五輪に同時開業と言われて苦しむ業界の1つに建設業界がある。オリンピック関連施設やインフラ整備、東北復興に伴い、人材も資材も不足している。その中で他国に負けない〝立派な〟統合型リゾート施設を造ることは至難の業なのだ。ある建設業界関係者は「2020年を目標に動くプロジェクトが多く、建設業界では20年近くから需要が落ちるとみている。量的な落ち込みを補う意味で、IRが後回しになることはかえって好材料」とする。

先送りせずに持続可能な産業にする

 東京都がオリンピックを優先し、舛添要一都知事も慎重論を展開している今、IR建設の機運が高まっているのが地方都市だ。東京の一極集中に反対する声は根強く、東京がオリンピックで集客し、それと合わせて地方のIR施設を利用するというパッケージ売りが理想的という意見もある。

 候補地は横浜、大阪、北海道、長崎などといわれている。長崎県は10月16日に開かれたIR議連の総会に里見晋副知事を送り、法案への期待を述べている。長崎でIR施設を造る場合、有力な候補地となるのはハウステンボスだ。その親会社であるエイチ・アイ・エスの澤田秀雄会長は以前本誌に「国益や地域の利益のためにも東京ではなく地方で行うべき」と語っている。しかし、結局は法案が成立しなければ身動きはとれない。

 オリンピック後にIR建設を進めることになれば、東京の勢いが再び戻ることはあるだろう。と言うのも、舛添都知事はカジノ解禁におけるマイナス面への対策を言及している一方で、東京をアジアのヘッドクオーターへと進化させるために、臨海副都心でのMICE・国際観光拠点形成を推進する。

 IR建設の有力候補地といわれていたお台場はその範疇にある。法案が成立し、ギャンブル依存症やマネーロンダリングの対策が解決すれば、都の態度次第で「お台場」を候補地に推したい在京の企業が事業を進める可能性はある。

 都市政策に携わってきた森記念財団理事、明治大学専門職大学院長の市川宏雄氏は「日本の国際競争力を高めるためにはMICEは必要で、これほどの大規模施設を運営する仕組みとしてMICEとIRをセットで考えることは自然な流れ」と語る。

 「IRをいつ、どこで造るのか」ということが定まらない今、推進派内でも綱引きが続く。議連はIR実施法を作るにあたる基本方針に、「IRは観光振興、地域振興に資する成長戦略のツール」であり、「大都市のみならず地方への設置も検討することが望ましい」としている。

 日本経済の活性化の切り札になり得るIR建設をめぐって国内で足の引っ張り合いしている間に、国際都市間競争で他都市が力を付けてくることもあり得る。カジノビジネスを研究する国際カジノ研究所の木曽崇所長は「オリンピックに照準を合わせて中途半端な施設を造り、持続可能な産業とならなかったら意味はない」と警鐘を鳴らす。

 一方で電通の岡部氏は「目標の期限がなければ、また先送りになる。20年を目標にして1、2年ずれ込む分は仕方がない。とにかく最後の決定力に欠けている」と苦言を呈する。何をつくりたいのか、安倍首相も、産業界も明確に態度を示す時ではないだろうか。

(文=本誌/長谷川 愛)

 

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