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日本電産、売上1兆円突破に向け足場固め

日本電産会長兼社長 永守重信氏

 当面の目標である「売上高1兆円」が射程距離に入っている日本電産。構造改革による事業ポートフォリオの転換が着実に進展し、売り上げ・利益を安定して伸ばす企業体質を構築しつつある。特にポートフォリオ転換の鍵を握る車載事業では大きな成長が期待されている。

構造改革が着実に進展 継続的な成長へ移行

 日本電産が2014年度第2四半期の決算を発表した。売上高は3四半期連続で過去最高を記録したほか、営業利益は6四半期連続で対前期比増となっている。また、上期では過去最高の純利益を達成した。

 ただし、こうした四半期ベースの業績に一喜一憂する見方を永守重信・日本電産会長兼社長は一蹴する。

永守重信・日本電産会長兼社長

永守重信・日本電産会長兼社長

 日本電産は現在、「第2次高度成長」と位置付ける成長曲線を辿っている。従来はパソコン向けHDD用をはじめとする精密モータが主力製品だったが、IT業界は市場の変動性が大きいため、日本電産の業績も売り上げ・利益ともに四半期ごとのアップダウンが激しかった。12年度に実施した構造改革を機に、変動性の強い業界への依存から脱却し継続的に売り上げ・利益を伸ばすために事業ポートフォリオの転換を進めている。

 具体的には「精密小型モータ」、「車載」、「家電・商業・産業用」、「その他の製品グループ」を4本柱と位置付けている。同社は15年度に売上高1・2兆円を目標としているが、売り上げに占める比率は、精密小型モータが33%、車載と家電・商業・産業用がそれぞれ25%、その他製品グループが17%を想定。事業ポートフォリオの転換にあたっては、車載と家電・商業・産業用を重点2事業と位置付けている。

 13年度以降は継続的に売り上げ・利益が拡大しており、事業ポートフォリオの転換は着実に進んでいる。重点2事業のうち、家電・商業・産業用は14年度上期の段階で目標水準に到達し、最小限の体制ができ上がったという。一方、車載はまだ目標水準との開きがあるため、今後は車載のプレゼンス向上を重点課題と位置付ける。新たな製品や技術を導入する必要があり、M&Aも車載分野が今後の主題になるという。

 日本電産はオーガニックによる成長とM&Aによる成長の両輪で成長してきたが、これは売り上げ1兆円を達成する際にも変わらないという。ただし、売り上げの大きな会社ではなく強い会社を目指していることを永守会長は強調する。現状で売り上げを1兆円以上に乗せるために新規のM&Aも計画に織り込んでいるが、強い会社としての収益性を重視する。先に買収した会社の収益を改善した上で、次のM&Aを行う方針だ。

 「単に売り上げを伸ばすだけなら目標の1兆2千億円達成は簡単で、現在検討している案件を全部買えば売り上げは1兆5千億円くらいになるが、それはわれわれの戦略ではない。われわれが目指しているのは15%以上の営業利益を上げて強い会社にすることだ」(永守会長)

 日本電産が「兆円企業」へとステップアップし、100年後も継続する会社となるため、まずは強い会社としての体制を固める。そのためにも事業ポートフォリオ転換を完遂する構えだ。

事業環境を追い風に車載事業で大きな飛躍

 事業ポートフォリオの転換に際して、日本電産は新規分野へ進出しているが、従来のモータを置き換える領域や今までモータが使われていなかった領域への展開が中心となる。そこでIT分野で培ってきた小型・軽量・低消費電力・低振動のモータ技術を生かす。その意味でも車載事業は大きなビジネスチャンスが期待されている。

 事業環境を見ると、まず自動車の電動化や自動化が過去の時間軸よりも早い動きで起きている。電動化ではCO2排出削減などの環境規制で自動車の燃費改善が求められ、電動パワステ用モータや電動デュアルクラッチ用モータ、HEV用モータなど環境対応製品の需要増加が期待できる。電動パワステ用モータの現在の世界シェアは約20%だが、既に17〜18年発売の新車案件の成約を増やしており、18年度にはシェアが40%まで拡大する見込みだという。

 自動化については、20年をめどに日本やEUで交通事故削減の目標が掲げられており、カメラやミリ波レーダなどADAS(先進運転支援システム)関連製品の需要が急増している。ADASは現在、高級車だけでなく軽自動車にまで搭載され、普及が進んでいる。日本電産でも昨年のホンダエレシスの買収により、同分野のビジネス拡大が加速している。

 さらに自動車メーカーで共通プラットフォームを複数の車種へ展開する動きが進んでいる。また、電動化に伴い搭載部品が増加しプラットフォームが大型化している。このため、従来は1つのプラットフォームで10万〜20万台だった製品の受注規模が、プラットフォームの共通化・大型化により、500万〜2千万台まで拡大しているという。1つのプラットフォーム案件を受注できれば、過去の数倍のボリュームで売り上げを伸ばせるという。

 事業環境と日本電産のリソースを考慮すると車載分野は大きなビジネスチャンスが広がっており、今後の成長が期待できる。現時点での懸念材料は、売り上げを押し上げる新規のM&Aが永守会長の想定通りにまとまるかだろう。M&Aは株式市場やファンドの動向にも左右されるだけに、永守会長も慎重に見極めているようで、一筋縄ではいかない部分が残っている。

(文=本誌/村田晋一郎)

 
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