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経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

発電単価から既存原発の経済性を考える

Energy Focus

原発の発電コストは特に安価ではない

 鹿児島県薩摩川内市に立地する川内原発の再稼働に世間の注目が集まっている。

 原子力規制委員会は、九州電力からの再稼働申請に対して、既に適合性審査を行い、合格との判定を下している。よって、川内原発再稼働に向けた残るハードルは、地元の同意のみとなる。現時点(今年10月20日現在)ではまだ地元の同意は得られていないが、仮に同意が得られ、川内原発が再稼働すれば、原子力規制委員会が策定した新基準下で初の原発稼働となる。

 今回の川内原発もそうだが、原発の再稼働をめぐる議論の焦点は、とかく「安全性」に集中してきた。もちろん、原発の安全性は、周辺住民や国民にとっての最大の関心事であり、この点を徹底的に議論することは大切だ。だがもう1つ、原発の再稼働を議論する上で重要な点がある。それは「経済性」だ。

 原発の経済性、とりわけ原発の発電に伴うコストに関しては、立命館大学の大島堅一教授による研究(※)をはじめ、さまざまな研究が積み重ねられてきた。結果、原発の発電単価が他の電源と比較して「圧倒的に安い」とは言えなくなっている。

 だが、今年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画においては、「原発の運転費用は安価」と明記され、原発の経済性に関する論争はいまだ決着を見ていない。また、原発コストに関する議論は、もっぱら2011年12月に公表されたコスト等検証委員会の報告書をベースに行われている。そのため、直近3年間の技術進歩や、計算方法の改善などが議論に反映されていないといった問題もある。

 そもそも原発は、立地条件や型式、および技術的条件によって採用すべき安全対策が異なる。そのため、原発のコストも個々に違いが出る。

 原発のコストは、発電に要する直接費・間接費を集計したものだが、経済性を測る上で分かりやすい指標は、「どれだけの費用を掛けて、どれだけの電気を作り出せるか」──すなわち、原発の「発電単価」である。

 この発電単価は、新規に建設される原発と、一定期間稼働が停止した後、再稼働させる既存原発とでは(たとえ立地条件が同じでも)異なってくる。実際、電力会社は、多くの原発の再稼働申請を出しているが、既に廃炉が決まった原発もある。これは、電力会社が、原発ごとの発電単価を割り出した結果と見なせるだろう。

 その意味で、既存原発の経済性は電力会社が判断することで、彼らの判断に委ねるべきと言えなくもないが、そうした考え方には、少なくとも2つの問題点がある。1つは、電力会社が原発のコストを正しく算定できているかどうかだ。また、もう1つは、電力会社の経営上の判断とエネルギー政策上の判断が異なる可能性があることだ。

 営利企業である電力会社は、自社の収益向上を前提に個々の原発の再稼働を決めるが、エネルギー政策においては、すべての国民を利する経済性があるか否かで、原発の再稼働を判断しなければならない。よって両者の判断に差異や矛盾が生じることは十分にあり得る。

再稼働の遅延で発電単価がさらに上昇

 原発個々の発電単価については電力会社が計算結果を公表しない限り、正確なところは分からない。だが、公開データからの推計は可能であり、実際、最近2つの興味深い推計結果が公表されている。

 1つは、慶応義塾大学経済学部の金子勝教授によるもので、コスト等検証委員会が作成した発電コスト計算シートを用いて各原発の発電単価を割り出している。詳しくは、『原発は火力より高い』(岩波ブックレット、2013年)を参照されたい。

 もう1つは、前出の大島教授によるもの。こちらは、既存原発の再稼働時期が14年、15年、および16年になった場合の発電単価をそれぞれ試算している(詳しくは、「会計的手法を用いた再稼働後の原発の発電単価の試算」/『経済学論叢』第65巻第3号、283〜305ページを参照)。

川内2号機再稼働後の発電単価 発電単価の計算は、想定や採用パラメータによって変化するが、川内原発(川内第二原発)に関する両氏の推計結果は、本稿の表に示すとおりである。原発では、電力会社ではなく社会が負担している費用(社会的費用)が大きく、社会的費用を含めた発電単価で見る限り、川内原発の再稼働は、原発を新規に建設する場合に比べても経済的とは言えないようだ。しかも、再稼働が遅れれば遅れるほど、発電単価は上昇していく。だからこそ、電力会社は原発の再稼働を急いでいるのである。

 

※原発の発電コストに関する、大島堅一教授の主な研究業績としては、第12回大佛次郎論壇賞を受賞した『原発のコスト』(岩波新書、2011年)などが挙げられる。

注1:カッコ内は社会的費用

注2:社会的費用については、コスト等検証委員会と金子勝、大島堅一両氏の推計とは少し異なる

 

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