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経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

伝統文化かポップカルチャーか--和歌山県田辺市・埼玉県久喜市(旧鷲宮町)

商工会もアニメで祭りを盛り上げる

「陽の昇る聖地」と「陽が沈む聖地」

神秘的な雰囲気が欧米人を中心に人気となっている熊野古道

神秘的な雰囲気が欧米人を中心に人気となっている熊野古道

 2004年に「紀伊山地の霊場と参詣道」としてユネスコの世界文化遺産に登録された熊野古道。人と自然が長い年月をかけてつくり上げた精神文化の聖地は、今、日本人だけでなく世界の人も魅了している。

 古来より極楽浄土は真南にあるとされ、京の都から真南に位置する紀伊山地は、巨木や滝などの神秘的な自然環境もあり、古事記や日本書紀の時代から聖地として大事にされてきた。

 外国人観光客にとっても、その神秘的な環境と深い日本文化に触れることのできる巡礼の旅は人気が高く、欧米人を中心に訪れる人が増えている。

 和歌山県の南部にある田辺市は、熊野地方の中心地であり、熊野本宮大社が鎮座する。関西国際空港からのアクセスも良く、南紀白浜空港を使えば、羽田からも1時間で到着できる。その田辺市の観光振興課の職員であり、田辺市熊野ツーリズムビューローの事務局長も務める竹本昌人氏は、現状をこう語る「3年前(11年度)には、私どもを通じての申し込みは、300人弱であったものが、今年は4月から8月までの4カ月で既に2390人と約8倍。これは、昨年1年間と同じ数字です。出身国も多岐にわたり直近の4カ月でも43カ国の人が訪れています。主に欧米人が多く、豪、米、仏が多い」という。

 さらに、熊野古道が広く知られるきっかけとなったのが、キリスト教の巡礼道、サンティアゴ・デ・コンポステーラと共同プロモーションを行うことになったことだ。

 フランス南部からピレネー山脈を越え、スペイン北西部の大西洋に面したガリシア州の街まで歩く巡礼道は、キリスト教の12人の使徒のひとり聖ヤコブの眠る大聖堂のあるサンティアゴ・デ・コンポステーラの街を目指す。世界中から巡礼のためにこの地を訪れる人も多く、その途中にはロマネスク建築の教会や美術など貴重な文化遺産も多くあり熊野古道と同じ10世紀を起源とする。ともに世界遺産であるこの2つの巡礼道が協力し合ったことで熊野古道が知られるようになったのだ。「昨年の日西国交400周年での共同プロモーションで、さらにスペイン人訪問者が増え単年では3番目に多くなっています」(竹本氏)。

 今後、スペイン人のみならず世界中の人が訪れることで、さらなる多言語への対応が必要になるはず。サンティアゴ・デ・コンポステーラでは絵文字で誰にでも分かるようにするなど工夫を凝らす。日本でも「熊野古道の看板は整備できつつあるが、バス停や道路標識(日英表記)がまだまだ」(竹本氏)という。

 後継者不足や高齢化が進む山間の町が、訪日観光客と共に文化を継承する。この熊野のケースは、四国のお遍路などにもいい刺激を与えそうだ。

海を渡ったアニメが、地域を潤す

 ところ変わって、東京の秋葉原。街角に立ってみると、既に日本語以外の言語も外国人の姿も当たり前になった。

 かつての観光客のお目当ては電器製品であったが、最近ではフィギュアやアニメなど、日本のサブカルチャー目当ての観光客のほうが多い。

商工会もアニメで祭りを盛り上げる

商工会もアニメで祭りを盛り上げる

 では、秋葉原が「聖地」なのか、というとそうでもない。アジアだけでなく、世界中の子どもたちが日本のアニメで育つ時代、秋葉原はその「プラットホーム」でしかない。皆、それぞれの好みに合わせて、舞台となった「聖地」へとむかう。

 例えば、埼玉県の久喜市(旧鷲宮町)は『らき☆すた』(KADOKAWA)の舞台となった街。地元の久喜市商工会鷲宮支所に尋ねてみると、07年のアニメ放送開始以来、舞台を訪れる観光客が増え、モデルとされた鷲宮神社は、初詣の参拝客が放送前は9万人だったところ、開始後、一挙に30万人まで増え、近年は47万人前後で推移する。台湾、韓国、タイなどでも原作漫画が出版され、既に「中国、台湾、韓国人の観光客も多く見掛けるようになった」そうだ。今後もアジアを中心にした外国人の数は増えていくだろう。商工会としても、外国人観光客が増えていくようであれば、案内板やパンフレットなどの設置も念頭に置いている。

 アニメや漫画など、日本の新たな文化が海を越えて、はや数十年、子どもの頃に熱中したものであればあるほど、その舞台を訪れる時には、遠い異国の初めての場所だろうが、懐かしい場所なのかもしれない。

(文=本誌/古賀寛明)

 
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