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経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

起業環境の好転でベンチャーにチャンス到来

グローバルベンチャーの挑戦

 「なぜ日本からは、グーグルやフェイスブックのような世界的なベンチャー企業が出てこないのか」。頻繁に掲げられるテーマである。確かにインターネットの領域は相変わらずシリコンバレーが主導権を握り、その他の分野でも日本の新興企業が世界市場をリードするような状況はまだ生まれていない。だが、ここへ来て風向きが少しずつ変わろうとしている。日本からグローバル市場に大きく羽ばたこうとする起業家や、彼らを支援する投資家たちは今何を考えているのか。現状を探る。

有望ベンチャー創出を経産省が後押し

 起業家活動の国際比較に関するグローバル・アントレプレナーシップ・モニター(GEM)の調べで、日本は先進国中最下位という結果が出ている。起業家精神に関する調査でも、先進国平均を大きく下回るという状況だ。資金の出し手であるベンチャーキャピタル(VC)投資の対GDP比で見ても、米国の約7分の1、韓国の約2分の1しかない(グラフ参照)。

起業家活動の国際比較調査(単位:%) 出所:平成24年度起業家精神に関する調査(GEM) VC投資の対GDP比較(2012年、単位:%) 資料:OECD Entrepreneurship at a Glance 2013。日本は2011年。 新たな産業分野の創出は、日本の国際競争力向上や雇用の受け皿という点でみても重要な課題だ。2013年12月から、経済産業省の主導で3回にわたって開かれたベンチャー有識者会議では、ベンチャー育成の課題として、挑戦する人材が少ない、起業について身近でない、リスクマネーの供給不足、大企業との連携不足、政策的に継続的な支援が少ない、等々の点が課題として挙げられた。

 グローバル化の遅れも、その中で取り上げられた課題の1つだ。少子高齢化とはいえ、国内市場がまだそれなりの規模を保っていることもあり、技術や斬新なビジネスモデルがあっても、世界に打って出るようなベンチャーはまだ少ない。

 そこで経産省は、ビジネスプランコンテストの上位チームをシリコンバレーに派遣しているほか、同じくシリコンバレーで、日本の起業家や支援のための人材を育成するプロジェクトにも着手しようとしている。このほかにも、政府調達枠の拡大、税制優遇の実施などによって、政策的な後押しを進めたい考えだ。

IPO至上主義が小粒なベンチャーを量産

 ただ、まだ数は少ないとはいえ、初めから世界展開を狙うベンチャーがここ最近は増えてきているのも事実だ。特にインターネット系のベンチャーはスマートフォンの登場や通信環境の整備によって、起業のハードルが大きく下がったことが大きい。

 資金調達も以前と比べると容易になり、創業間もない企業でもVCなどから10億円以上の資金を調達するケースが珍しくなくなった。日本では、一定規模の会社では銀行融資が主な資金調達手段だが、最近では、VCが創業直後のシード・アーリーステージだけでなく、セカンドステージ以降も継続して資金投入するケースが増えている。

 これまで日本では、VCやベンチャー経営者の大半が、スタートアップからいかに早く利益を出し、IPOにこぎ着けるか、ということを重視してきた。

 「日本では早期の上場を競う傾向があり、上場後のさまざまな制約がメガベンチャーが育ちにくい要因でもあった」(平石郁生・サンブリッジ グローバルベンチャーズ社長)

 一方、シリコンバレーのベンチャーは必ずしもIPOをベストな選択肢とはとらえていない。上場によってさまざまな制約をかけられるより、まずは事業基盤の構築とシェア拡大に集中し、十分に会社を大きくしてから上場させて、より大きな果実を摘み取る。市場での確固たるポジション構築のために先行投資をし、そこで膨らむ赤字をVCからの資金で回す。または、IPOは視野に入れず、良い買い手を探すほうを優先する。特に「面を取る」ことを重視するインターネット系のベンチャーで、この傾向が顕著だ。

 これまで日本では同様の発想があまりなかったが、例えばソーシャルゲームプロバイダーのgumiのように、約50億円もの資金を調達しながら上場に踏み切らないケースも出てきている。今後は、こうしたシリコンバレー型の方針をとる企業が増えてきそうだ。

失敗を恐れない投資がビッグビジネスを生む

 「ベンチャーへの投資において、動いているお金のレベルが日米では違う。米国では常に年間2兆円以上が動く。そのぶん、無駄な投資もたくさんあるが、どこかがブレークすれば良いという考え方。大きなビジネスを生み出したいなら、失敗も多く経験したほうがいい」(同)

 また、舞台はシリコンバレーだけではない。起業の環境が好転した機会をとらえ、アジア、アフリカといった新興国、発展途上国に最初から打って出るベンチャーも出現している。

 経産省新規産業室新規事業調整官の石井芳明氏は、「グローバルベンチャーへの道は大きく2つある。シリコンバレーのような最先端のイノベーションを目指すか、もしくは新しい技術でなくても市場の成長性を重視して、日本で成功したモデルに近いものを移植する、いわゆるタイムマシーン型投資。こうした新たな芽をしっかりと応援していきたい」という。

 日本から世界を席巻するベンチャーが生まれることを期待したい。

(本誌特別取材班)

 
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