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崖っぷちの年金財政は立て直せるのか

ニュースレポート

 日本の年金制度は、世界的に見ても劣るものであるという結果が調査機関によって発表された。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、株式による公的年金の運用比率を高めることで、年金資産の増加を図ろうとしているが、リスク管理などの面で不安が残る。

日本の年金は中国よりも下?

 日本の公的年金制度が崩壊しつつあると言われるようになって久しい。致命傷となったのは、民主党の追及で宙に浮いた年金記録が5千万件もあると発覚し、国民が年金制度に不信感を持ったことだ。何しろ、長年にわたって保険料を払ってきたにもかかわらず、その年金記録が消されてしまった人までいるのだから、その怒りや不信感は当然だ。

 では、日本の年金制度はどこがダメなのか。そのダメ具合は外国の年金制度と比べると一層際立ってくる。

 組織・人事分野専門のコンサルティング会社、マーサージャパンはこのほど「2014年度グローバル年金指数ランキング」を発表した(図を参照)。

マーサー・メルボルン・グローバル年金指数(2014) 総合指数によるランキング このランキングは世界各国の年金制度を比較したもので、日本の年金制度は25カ国中23位で、惨憺たる状況だ。

 この年金指数は「十分性」、「持続性」、「健全性」の3つのポイントで算出される。十分性はもらえる年金額は十分かどうか、持続性は人口推移や平均寿命のバランスとの関係で持続可能なものか、健全性は年金制度をうまく運用するための見直し機能や透明性が担保されているか、ということを意味する。

 ただ、このランキングの中には、中国やインドネシアのように国民皆年金ではない国も含まれている。例えば、中国の場合、加入義務のある被保険者は、都市部の被用者および自営業者である。つまり、大雑把な言い方をすれば、年金制度の対象は富裕層だけということだ。

 よって、この結果を基に日本が中国やインドネシアよりも単純に下位にあるとは言えない。しかし、仮にそうした国々を除いて、欧米先進諸国だけと比較してもなお、日本の年金制度は貧困であり、このランキングは参考資料として十分に意味がある。デンマークは、十分に積み立てられた年金とその給付水準が評価され1位になっており、高福祉高負担で知られる北欧諸国が上位にランクされる傾向となっている。

 14年度の結果を踏まえ、年金コンサルティング部門シニア・アクチュアリーの塩田強氏はこう語る。

 「今年度はNISAの導入や確定拠出年金の拠出限度額引き上げなどがあったものの、指数に与えるインパクトとしては小さかったと言えます。さまざまな項目の中で、総合評価への影響が大きい所得代替率の低さが、総合評価で下位となる要因の1つです。厚生労働省の『平成26年度財政検証』では、現状の制度を変更しない場合、少子高齢化の進展に伴う所得代替率の低下が不可避であることを示唆する結果となっており、将来的に総合評価が改善することは難しいかもしれません」

 所得代替率とは、年金給付額が現役世代の平均収入の何割であるかを示す指標だ。経済協力開発機構(OECD)は、各国の年金による所得代替率を公表しており、日本の「義務加入年金の所得代替率」は35・6%となっている。これはOECD諸国の平均54・0%と比較してかなり低い水準だ。

 民主党政権下の年金記録回復委員会で委員を務めた社会保険労務士・廣瀬幸一氏は次のように語る。

 「自民党政権は医療や介護には注力していますが、仕組みが難しく国民には良い話とならない年金問題には熱心でなく、厚労省年金局任せなので、年金改革はしないでしょう。公的年金が不十分なのですから、個人年金に入っている人を税金面で優遇するとか、控除額を大きくするとか、政策的に何らかのサポートをすれば良いと思います」

GPIF改革は成功するのか

 10月31日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資産運用の見直し計画が発表された。GPIFは120兆円を超える公的年金の積立金を運用している組織だ。発表によれば、国内株と外国株の運用比率をそれぞれ現在の12%から25%へと引き上げるとしている。年金資産の約半分が株で運用されることになる。

 株による運用がうまくいって国民の年金資産が増えれば万々歳だが、株のリスクは小さくない。急激な円高や中国経済が急減速するなどグローバル経済が大きく変調したときに急激な損失が出る可能性がある。

 廣瀬氏も「もし損失が発生した場合の責任の取り方はどうなるのか。一定の投資比率を超えないよう何らかの基準が必要では」と危惧する。

 リスク型の運用をするには、それ相応の体制が必要だ。運用ノウハウを持った金融のプロが必要である。金融機関に委託すれば済むという話ではない。そして、リスク管理の徹底と運用の柔軟性確保のためには組織改革も必要だろう。GPIFのガバナンスの問題だ。今後の課題は山積しているのである。

(文=ジャーナリスト/横山渉)

 
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